フォーラムエイト デザインフェスティバル 2018-3Days+Eve |
日時:2018年11月13日(Eve)、14〜16日(3Days) 会場:品川インターシティ ホール
(Up&Coming 2019年1月号) |
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自動運転の実現に向け、加速する技術開発や制度整備
デザインフェスティバルのDay1(2018年11月14日)は、初めに当社代表取締役社長の伊藤裕二が開会あいさつ。これを受けて、経済産業省製造産業局自動車課ITS・自動走行推進室長の垣見直彦氏による特別講演「経済産業省における自動走行の取り組み」で「第19回
UC-win/Road協議会(VRコンファランス)」<自動運転カンファランス>はスタートしました。同氏はまず自動運転車の実現によりもたらされる「移動革命」や「豊かな暮らし」への期待を述べた後、そのために必要となる技術開発、制度整備、担い手事業者発掘および社会受容性向上に向けた取り組みを整理。そのうち法制度整備に関連して去る4月に策定された「自動運転に係る制度整備大綱」に触れ、1)安全性の一体的な確保、2)自動運転車の安全確保の考え方、3)交通ルールの在り方、4)責任関係、という各ポイントの検討状況を説明。また自身が4月からタスクフォースのサブリーダーを務める内閣府主導のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」における施策および実証実験の考え方を概説。そのうち東京臨海部実証実験の実施予定エリアや個々の実施内容にも言及。 |
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フォーラムエイト代表取締役社長
伊藤 裕二 |
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加えて、経産省自ら取り組む関連プロジェクトとして、1)上信越自動車道や新東名高速道路でのCACC(協調型車間距離維持支援)システムやLKA(車線維持支援)システムを活用した後続車有人「トラック隊列走行」、2)茨城県や福井県における無人移動自動走行による移動サービス(ラストマイル自動走行、端末交通システム)に関する実証実験について紹介しました。
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経済産業省 製造産業局自動車課
電池・次世代技術・ITS推進室長
垣見 直彦 氏 |
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続く特別講演は、総務省総合通信基盤局電波部移動通信課新世代移動通信システム推進室長の中里学氏による「自動運転の実現に向けた動向と総務省の取り組み」。
冒頭、「未来投資戦略2018」における「次世代モビリティ・システムの構築」、さらに「官民ITS構想・ロードマップ2018」、「自動運転に係る制度整備大綱」およびSIP第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」における情報通信インフラ整備それぞれの位置づけを整理。併せて、自動運転に関連し欧米で進む官民挙げての大型プロジェクト、国内外での自動運転の技術開発や市場化を巡る動向を概説しました。その上で、移動通信システムの進化の流れを振り返った後、2020年代の新しい技術として移動通信の大幅な高速・大容量化により超低遅延で自動運転に必須のほぼリアルタイムな制御が期待される第5世代移動通信システム(5G)へと話を展開。総務省では東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに5Gを商用化し、具体的な活用例のデモを世界に発信することを意図。2019年3月までに5G用周波数を事業者に割り当てる計画のほか、研究開発と並行して実証試験を実施しており、それら実証プロジェクトの概要や一部成果、継続中の取り組みにも言及。また、自動運転も含めた5G利活用のアイディアを広く求めるとともに、同省自身も2020年を一つのターゲットに様々な技術の開発や通信環境の整備に力を入れていく考えを説きます。
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総務省総合通信基盤局 電波部
移動通信課 新世代移動通信システム推進室長
中里 学 氏 |
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午前の部の最後は、「自動運転サービスの実現に向けた取り組み」と題し、国土交通省道路局道路交通管理課高度道路交通システム(ITS)推進室長の阿部勝也氏が特別講演。
道路局が中山間地域における自動運転の実現に注力する背景として、高齢化の進行や公共交通の衰退などモビリティ上の課題を解説。併せて、全国に約1400カ所設置されている「道の駅(roadside
station)」の多くで周辺に医療や行政、金融、買い物などの機能が集約されている実態に言及。SIPの予算支援を受け、国交省が2017年度から中山間地域の「道の駅」を拠点に路車連携による自動運転サービスの社会実験を始めた経緯を振り返ります。実験では1)自動運転に資する道路構造など道路管理者側の対応、2)気象条件や通信条件など地域環境、3)コスト、4)社会の受容性、5)地域への経済効果、を検証。その一端として、社会受容性に関するアンケートを通じた実験前後の自動運転に対する住民の意識変化や要望、実験中に自動運転から手動へ切り替えられた事象(課題)について説明。引き続き、今年度は2020年までの社会実装を目指し、ビジネスモデルとして成り立つかの検証に力点を置いていると言い、進行中の「南アルプスむら長谷」(長野県伊那市)を拠点とした実証実験の自動運転サービスによるビジネスモデルや運行体制を概説。そのほか、1)高速道路の合流部での情報提供による自動運転の支援、2)自動運転での活用も視野に入れた3次元点群データによる電子道路情報データの整備などの取り組みを紹介しました。
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国土交通省 道路局 道路交通管理課
高度道路交通システム(ITS) 推進室長
安部 勝也 氏 |
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午後からは古屋圭司衆議院議員(「自動車文化を考える議員連盟」会長ほか)が来賓あいさつ。地元岐阜県を例に人手不足の現状や中央新幹線への期待に触れつつ、来るべき5Gの活用をベースに本格化する自動運転がもたらす地方での可能性を構想。当該分野の取り組みが成長戦略の要になっていくとの見方を説きました。
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自動車文化を考える議員連盟 会長
衆議院議員 古屋 圭司 氏 |
午後最初の特別講演は、国土交通省自動車局自動運転戦略室長 兼 技術政策課自動運転戦略官の平澤崇裕氏による「自動運転の実現に向けた取り組みについて」。
自動運転の意義や定義、自動車メーカー各社の自動運転技術動向を概説。併せて、自家用車でレベル3の自動運転を2020年(レベル4は2025年)目途に高速道路で実現するといった自動運転システムの市場化・サービス実現のシナリオを描く「官民ITS構想・ロードマップ」最新版について解説。その上で、「自動運転に係る制度整備大綱」の主要な取り組み事項のうち国交省が「車両の安全確保の考え方」と「責任関係」に関わることもあり、1)省内への自動運転戦略本部の設置、2)自動運転に係る国際的な車両安全基準の策定作業への主導的な関与、3)国際基準が策定されるまでの指針ともなる「自動運転車の安全技術ガイドライン」作成、4)自動運転技術に対応する自動車整備・検査の検討、5)交通政策審議会「自動運転等先進技術に係る制度整備小委員会」の設置、6)自動運転における損害賠償責任に関する検討、7)自動運転車の自動車運送事業への導入に係る検討、8)「安全運転サポート車(サポカーS)」の普及啓発とその一環としての自動ブレーキの性能評価・公表制度の創設、9)レベル2の自動運転システムに関するユーザーへの注意喚起、10)実証実験(ラストマイル自動運転やトラックの隊列走行)、など多岐に渡る取り組みついて紹介しました。
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国土交通省 自動車局 自動運転戦略室長
兼 技術政策課 自動運転戦略官
平澤 祟裕 氏 |
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同カンファランスの最後は、「自動運転の実現に向けた警察の取り組みについて」と題して警察庁交通局交通企画課自動運転企画室長の杉俊弘氏が特別講演。
日本の交通事故死者数に占める高い高齢者の比率、第10次を数える交通安全基本計画の基本理念と自動運転との親和性に触れた後、2020年までに高速道路でのレベル3の実現を目指すとする中、「自動運転に係る制度整備大綱」において警察庁は「交通ルールの在り方」に最も大きく関わると位置づけ。次いで、自動運転が交通事故の削減や渋滞の緩和などに不可欠な技術であり、その進展を支援するとの自身らの観点を提示。それらを反映した、1)公道実証実験の環境整備として「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」や「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」の策定、2)道路交通法の見直しを含め、運転者の義務の在り方やデータの保存の在り方、他の交通関与者と自動運転車両との関係を中心とした交通ルールの在り方の検討、3)ジュネーブ条約の規定と自動運転との整合性確保などに関する国際的な議論への参画、4)信号情報提供技術や車両・歩行者等検知情報提供技術など自動運転システムの実用化に向けた同庁としての研究開発について紹介しました。
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警察庁 交通局交通企画課
自動運転企画室長
杉 俊弘 氏 |
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これら特別講演を受けた午後の部前半の締めくくりは、「Virtual Reality Design Studio UC-win/Roadプレゼンテーション」。初めに当社担当者が「VRシミュレーション環境事例、今後の展望
〜自動運転・ADASパッケージ、ゲームエンジンの活用〜」と題して発表。今年発足した「北海道VR推進協議会」の概要、UC-win/Roadドライブ・シミュレータ(DS)を活用した特徴的な各種ユーザー事例、UC-win/Roadの最新版(Ver.13、2018年2月リリース)および続くVer.13.1(2018年11月リリース)の主な新機能、2019年リリース予定の自動運転・ADASパッケージの機能概要、ゲームエンジンを活用した「鉄道運転士VR」、統合型オールインワン3DCGソフト「Shade3Dシリーズ」、ビッグデータに対応する「VR-Cloud®
Next」などを紹介しました。
最後に「UC-win/Roadの最新情報、組込およびVR-Cloud® Nextの新たな展開」と題して当社開発担当者がプレゼンテーション。リリース直前の「UC-win/Road
Ver.13.1」の各種新機能、UAVプラグイン・オプション Ver.3、UC-win/Roadの開発中の機能などについて解説。さらにVR-Cloud®
Nextの開発理念と機能、システム構成、活用例、今後の開発ロードマップなどもデモを交えて説明しました。
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VRシミュレーション環境事例、今後の展望 |
UC-win/Roadの最新情報、組込および
VR-Cloud® NEXTの新たな展開 |
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大胆な発想や独自の世界観を表現、VRの可能性に挑む作品群
Day1午後の部後半は「第17回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の表彰式が開催されました。
これに先立って、10月9日までに応募のあった多数の作品の中から10月16日の予選選考会で10作品をノミネート。11月2〜11日のVR-Cloud®を利用した一般投票の結果を加味し、11月13日に審査委員長の関文夫・日本大学理工学部土木工学科教授、審査員の傘木宏夫・NPO地域づくり工房代表および稲垣竜興・一般財団法人最先端表現技術利用推進協会理事から成る本審査会(フォーラムエイト東京本社)で各賞が決定されています。
グランプリに輝いたのは、北海道旅客鉄道株式会社の「北海道新幹線札幌駅計画VRシミュレーション」。北海道新幹線札幌駅(2030年度開業予定)の開業後のイメージを、群集シミュレーションによる駅構内の乗客の通行予測状況とともにVRで表現。従来の鉄道系シミュレーションは鉄道会社側の目線が目立ったのに対し、今回は乗客の目線にウェート。しかも、10年先に開業予定のプロジェクトの合意形成を図るために作られ、それが実際に事業の円滑化にも寄与したという戦略的な面からも評価(関氏)されました。
準グランプリ(優秀賞)は今回、2作品が受賞。その一つは、株式会社ソ.ラ..コンサルティングの「『志免鉱業所竪坑櫓』『周辺施設(昭和39年当時)3次元VR』」。志免鉱業所跡「竪坑櫓」(国の重要文化財)に対し、3DVRと3D点群計測データを駆使し、地下空間を含む現在と往時の施設や周辺環境を再現。作品の美しさや地下空間の分かりやすい表現に加え、地域の宝を育てていこうという意気込みが滲み出ている(傘木氏)と評されました。
もう一つは、株式会社三井造船昭島研究所の「操船シミュレータVRデータ」。操船訓練や研究での利用を目的に作成された操船シミュレータ用VRで、関門海峡など幅が狭く航行船舶の多い複数海域をモデル化。台風21号に伴う関西国際空港連絡橋事故(2018年9月)の記憶も新しい中、その社会的意義も評価(稲垣氏)されています。
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審査員(左から)稲垣 竜興 氏、
関 文夫 氏(審査委員長)、傘木 宏夫 氏 |
受賞者の皆様 |
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それぞれの専門を反映した最新刊書籍、そこに込められた三者三様の思い
今回デザインフェスティバルの開催に合わせ、フォーラムエイトはフォーラムエイトパブリッシング出版の3書籍を刊行しました。そこでDay1の最後に、各著者による講演を設定しています。
まず、「VRで学ぶ情報工学」の著者で、「第17回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の審査員も務めた稲垣竜興氏は、今回で自身4作目となる「VRで学ぶ」シリーズの上梓に向けた基本的なスタンスに言及。現在はSociety 5.0に移行する境目との位置づけから、インフラ整備分野も「超スマート社会」の実現に資するべく、i-Constructionをはじめ情報通信技術(ICT)と具体的にどう連携していくかが重要になると指摘。その際の針路として「建設現場を最先端の工場へ」「建設現場へ最先端のサプライチェーンマネジメントを導入」「建設現場の規制の打破、継続的な改善」を挙げ、「イノベーション」がそれらの具体化にあたってキーワードになるとの考え方を提示。また、防災・減災に対するICT活用という観点から「災害情報ハブ」、建設ICTに関連して「CPS(サイバーフィジカルシステム) for i-Construction」といったアプローチへの注目を述べます。 |
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(一社) 道路・舗装技術研究協会 理事長
稲垣 竜興 氏 |
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続いて「超スマート社会のためのシステム開発」の著者で、フォーラムエイト技術顧問の三瀬敏朗氏は超スマート社会が求められた背景として、「モノの時代」から「コトの時代」へというパラダイムシフト、地球温暖化や少子高齢化といった社会問題、その一方で高度化するICT環境を列挙。また、生活関連システムは様々なリスク(非正常系)に囲まれており、安全・安心・快適を得るにはイレギュラーな状況を幅広く把握する必要がある上、IoTに象徴される何でも繋がる時代にはその対象はさらに広範化。そのような中であれもこれも、全体を通して理解しなければいけないとなるとシステム分析の段階で行き詰まってしまいがち。そのソリューションとして同氏は、最初に全容を効率よく俯瞰して分析した上で、ICTを生活設備に組み込むことで生活を革新する手法を提案。それを通じて安心・安全な超スマート社会を実現する、との構想を描きます。 |
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フォーラムエイト技術顧問 三瀬 敏朗 氏 |
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出版書籍講演の最後は、「有限要素法よもやま話(I数理エッセイ編・II雑談エッセイ編)」の著者で、フォーラムエイトFEMアドバイザーの原田義明氏。1970年代初めから有限要素法(FEM)に関わってきた氏は、日本における当該分野の草分け的存在と言え、自ら創業したFEM専門会社を経営していた当時、18年ほど前から月に1度のペースでFEMの良し悪しなどにについて語るエッセイを書き溜めてきたと振り返ります。それが68話を数えた2009年、それまでの成果を自費出版。その後、健康上の問題で経営トップを退き、さらにM&Aにより創業した会社が閉鎖され、エッセイを掲載していた社のWebサイトが閉じられたのを機に、「FEMINGWAY」という自身のサイトに舞台を移してエッセイの連載を2018年初め(122話)まで継続。それらをベースとする全130話を、専門的な内容を集めた第1巻とそれ以外の話で構成する第2巻に分け、半世紀近くFEMに携わってきたからこそ描ける世界を後進に伝えるべく書籍化するに至ったと言います。 |
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FEMアドバイザー 原田 義明 氏 |
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