フォーラムエイト デザインフェスティバル 2018-3Days+Eve |
日時:2018年11月13日(Eve)、14〜16日(3Days) 会場:品川インターシティ ホール
(Up&Coming 2019年1月号) |
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求められる巨大災害への備え、強靭化対策と避難シミュレーション
デザインフェスティバルDay3(2018年11月16日)は、当社代表取締役社長・伊藤裕二が開会あいさつ。
続いて「巨大災害はどれくらいの被害をもたらし、何でどれくらい軽減できるのか?」と題し、京都大学大学院工学研究科・レジリエンス実践ユニット長の藤井聡教授が特別講演。南海トラフ地震が発生したら実際にどのようなことが起こるのか世の中でほとんど認識されていない、という危機感から自身が働きかけて前年度1年間にわたり取り組み、2018年5月に土木学会が公表した「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書」をベースに解説。まずポルトガルの国力衰退の一因ともなったリスボン大地震(1755年)、パキスタンからバングラデシュを分離させるほどの大混乱を国家にもたらしたボーラサイクロン(1970年)、倒幕の隠れた要因ともなった幕末・安政の複合災害(1854〜1856年の東海・南海地震、江戸地震および江戸暴風雨)など、巨大災害が国の歴史を変えた例を列挙。ただでさえデフレやマイナス成長が続き経済力にかつての勢いがない中、数十年前に建設され劣化したままの橋梁などのインフラも多く、これに巨大災害が生じれば日本がアジアの最貧国ともなりかねないとの観点を提示。そこで同氏らは、南海トラフ地震や首都直下地震、大都市河川の大洪水などが起きた場合も致命的な事態を回避し、回復可能な範囲にとどめ得る対策について検討。その一環としてまず、阪神・淡路大震災(1995年)など過去の大災害発災後のGRP(域内総生産)の推移などを基に長期間(地震:20年、水災害:14カ月)に及ぶ経済低迷効果をシミュレーション。併せて、土木学会が別途構築した推計手法を用い、想定される各巨大災害による経済被害や資産被害などを推計。例えば、南海トラフ地震が発生した場合の20年間にわたる経済的な被害が最悪1410兆円に上るとし、内閣府が公表してきた被害推計(建物被害として170兆円)より一桁大きな数字が示された、と言及。それに対し、徹底的な強靭化策(土木対策や建築対策など)を早期に行っておけば上述の被害推計より3〜4割減災することは可能。すなわち、強靭化のための投資はそれ以上の財政的な恩恵をもたらす、との考え方を説きました。
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京都大学大学院工学系研究科
レジリエンス実践ユニット長
藤井 聡 氏 |
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これを受け、「FORUM8の災害対策・耐震ソリューションの最新情報と今後の展開」と題し、当社担当者がプレゼンテーション。
初めに、カテゴリごとに分けたフォーラムエイトの震災対策ソリューションとUC-win/Roadを核としたVRによる可視化、および国土強靭化設計支援ソリューションについて概説。次いで、1)洪水氾濫浸水災害に関連し氾濫解析とUC-win/Roadとの連携、2)津波災害に関連し津波解析へのスパコンクラウドの利用、それにより実現するより大規模かつ複雑な解析や多様な解析支援サービス、3)津波ソリューションの多様な解析対応やUC-win/Road津波プラグインとの連携、4)津波関連の避難解析におけるUC-win/Road for EXODUSやBuilding EXODUSを用いた避難シミュレーション、5)土石流シミュレーションとUC-win/Roadとの連携、6)Engineer’s Studio®を用いた災害対策向け解析、およびEngineer's Studio®の断面計算機能を取り出したEngineer’s Studio® Section、7)H29道路橋示方書の改訂ポイントとフォーラムエイトの新道示への対応状況 ― などについてデモを交えて紹介しました。 |
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FORUM8の災害対策・耐震ソリューションの
最新情報と今後の展開 |
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Day3午後の部前半は、グリニッジ大学火災安全工学グループ(FSEG)ディレクターのエドウィン・R・ガレア教授による特別講演「シミュレーションを通じた工学的な安全、安心および効率性」。安全・安心のモデリングに関わるFSEGの研究活動の概要に触れた後、混雑した場所の安全・安心を確保することの重要さ、さらに自身らが長年取り組んできた構造物の中で何が起こっているかをシミュレートするエージェントベースの避難シミュレーション「EXODUS」や火災シミュレーション「SMARTFIRE」へと話を展開。
今回は特に、エージェントベースの避難シミュレーションにおける3つの新しい適用エリアに言及します。1つは、世界中の大都市に多数見られる高層ビルの建設現場からの避難。それらは危険な環境にありながら完成後のビルと異なり、避難規定や火災工学的なソリューションがないため、同氏らは科学的根拠に基づく建設現場における人間行動を把握するべく建設中のビル内での様々な状況に応じた移動速度の違いなどを分析。ユニークな特性も反映するモデリング機能を拡張しています。2つ目は、ゲーム技術やシミュレーション技術と結合したAR(拡張現実)やVR、MR(複合現実)による訓練環境の構築。近年、ソフトターゲットへのフォーカスが目立つ武装テロリストによる襲撃にどう防御・対応すべきかが問われる中、同氏らはMR訓練向けにシリアスなゲームシナリオを自動的に生成する「AUGGMED」プロジェクトに着手。UNITY3Dゲーム環境に、銃撃や爆発などの機能を強化したEXODUSやSMARTFIREによる先進のシミュレーションが連携し、音声コマンドや手振りも反映。訓練を受ける側がマウスやキーボードを使いディスプレー上で体験するレベル1、HMDやハンドコントローラーを使い没入感を得られるVR環境のレベル2、AR環境で体感できるレベル3と、AUGGMED訓練環境として3機能レベルが開発されています。3つ目の適用エリアは都市規模の避難シミュレーション。EU
FP7プロジェクト「IDIRA」を通じEXODUSが大規模都市災害などへの適用を広げる中、「urbanEXODUS」や「webEXODUS」による洪水や野火での避難シミュレーション、歩行者と車両のインタラクションモデル、SUMOとEXODUSの連携による車両エージェントのインタラクションモデルなどへと展開した流れに言及しました。
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グリニッジ大学 火災安全
エンジニアリンググループ(FSEG) 教授
エドウィン・R・ガレア 氏 |
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これを受けて当社担当者が「IM&VR BIM/CIMへの取り組みとi-Construction、積算、会計対応について」と題し、プレゼンテーション。
まずフォーラムエイトが提供するIM&VR(Information Modeling and Virtual Reality)ソリューションのUC-win/Roadを中心とした各製品の連携、VRプラットフォームの利用促進に向けた取り組み、ドライビングシミュレータのラインアップを概説。次いで、BIM/CIM活用のロードマップ、同活用状況、CIM導入ガイドライン(案)や3次元モデル表記標準(案)、土木工事数量算出要領(案)
、BIM/CIMリクワイヤメントとそれらへの製品対応についてデモを交えて説明。またBIM/CIMで作成されたデータの利用も含む近年の各種VR適用事例を紹介。その上で、UC-win/Road
Ver.13.1の主な新機能やUAVプラグイン、Shade3Dなどに言及。最後に今後の展開として最新基準やフォーマットへの対応、VR-Cloud®
NEXTの拡張、UC-1設計計算クラウドと現場型アプリ開発、ビッグデータの解析と維持管理、IoTデータやロボット活用の提案に向けた考え方を解説しました。 |
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IM&VR BIM/CIMへの取組とi-Construction、
積算、会計対応についてと今後の展開 |
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合理的で独自の技術提案が集積、更なる裾野の広がりに期待
午後の部後半は「第5回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワード(NaRDA)」の各賞発表と表彰式が行われました。
これに先駆け、構造解析(土木・建築)や地盤工学、水工学、防災の各分野を対象とするエントリー作品(10月9日までに応募のあった多数作品の中から10月17日の予選選考会で9作品をノミネート)に対し、11月13日に審査委員長の吉川弘道・東京都市大学名誉教授、審査員の守田優・芝浦工業大学副学長・工学部土木工学科都市環境工学研究室教授および若井明彦・群馬大学理工学部教授の3氏により最終審査会(フォーラムエイト東京本社)を実施。各賞が決定されています。
グランプリは、五洋建設株式会社技術研究所の「劣化度判定結果を活用した残存耐力評価手法の実桟橋への適用−幾何実験および一般定期点検診断結果を用いた新しい耐力評価手法の提案−」。塩害に関し厳しい環境に置かれる桟橋に対して、各劣化度に応じた試験体の載荷実験を行うことで各劣化度と部材の残存耐力の関係性を明らかにし、その結果を汎用の構造解析ソフトに導入する簡易な残存耐力評価手法を提案。「簡易的な手法」と言いつつ決して簡易ではなく、実験を通じて部材の特性を解析し判定した、合理的で汎用性の高い手法との評価(吉川氏)を得ました。
準グランプリ(優秀賞)は、ナレッジフュージョン株式会社の「材料の損傷に基づく下水道施設の耐震性能評価−地下構造物の合理的なせん断耐力評価手法の提案−」。要素寸法や材料の力学モデルに依存しない損傷指標を用い、下水道施設における地下構造物の合理的なせん断耐力評価手法を提案。新しい評価手法の提案に加え、従来手法と比べて合理的であるということを示すために実験を含めて緻密な検証を行っており、作品自体の緻密度や完成度の高さが評価(守田氏)されました。
そのほか、「審査員特別賞 Full 3D Design賞」(株式会社片平新日本技研)、「審査員特別賞 Amenity Design賞」(鹿児島大学)、「審査員特別賞 Performance-based Design賞」(日本サミコン株式会社)の各賞が各審査員により発表・授与されました。最後に吉川審査委員長がNaRDAの意義を踏まえ、来年に向け更なる参加の広がりへの期待を述べて総括。すべてのセッションは終了しました。
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受賞者の皆様 |
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最終審査の様子:左から吉川氏、
守田氏、若井氏 |
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フォーラムエイト東京本社セミナー
ルームにてノミネート作品審査会を
実施(2018年10月17日) |
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