自転車は、日常生活において、通学や通勤、サイクリング等で利用される便利で身近な乗り物で、幼児から高齢者まで幅広く利用されています。しかし、最近では自転車利用者のマナー違反等による事故が後を絶たす、事故で高額な賠償請求事例も発生するなどの事例が増えています。自転車は正しく利用しなければ、事故を起こす危険な乗り物になってしまう可能性があります。このため、道路交通法で定められている規則に従って、各自治体で自転車に関する条例が定められています。
自転車は車両
自転車は、道路交通法上は「軽車両」となっており、違反をすると罰則が科せられる場合があります。自転車とは「ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車」であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいいます。
普通自転車とは一般に使用されている自転車で、車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両(リヤカー)を牽引していないものをいいます。
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普通自転車の基準(道路交通法施行規則第9条の2)
- 車体の大きさ
長さ:190cm以内、幅:60cm以内
- 車体の構造
- 側車をつけていないこと。(補助輪は除く)
- 運転席以外の乗車装置を備えていないこと。(幼児用乗車装置を除く)
- ブレーキが、走行中容易に操作できる位置にあること。
- 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
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自転車は車両ですので、自転車自体の安全を確保するため、自動車と同じように点検整備を行う必要があります。タイヤの空気圧やブレーキの効き等の日常的な自己点検や、自転車販売店等で定期的に点検整備を受けるようにしましょう。
自転車の点検・整備について定めた条例の例
「大阪府自転車条例第10条第1項、第2項」(自転車の点検及び整備)
自転車利用者(未成年者の場合は保護者)及び自転車貸付業者その他自転車を事業の用に供する者は、利用し、又は事業の用に供する自転車について、適宜、安全適正利用のために必要な点検及び整備を行うよう努めなければならない。
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ブレーキが効く自転車に乗りましょう
道路交通法第63条の9第1項では、「自転車の運転者は、基準に適合する制動装置を備えていない交通の危険を生じさせるおそれのある自転車を運転してはならない」とされています。また、警察官は、基準に適合する制動装濫がないと認められる自転車を停止させて検査することができ、応急措置や運転の中止を命じることができます(道路交通法第63条の10)。いずれも違反について5万円以下の罰金が科せられます。
命を守るヘルメットを着用しよう
子どもは、成人に比べて、体に対して頭が大きく、転倒時に頭部を打つことが多くなります。また、高齢者については、自転車事故により頭部を損傷することで、亡くなられる場合が多くなっています。このため、道路交通法では13歳未満の子ども、大阪府自転車条例では65歳以上の高齢者に対し、ヘルメット着用を求めています。
道路交通法第63条の11
子どもの保護者は、子どもが自転車を運転するときや、幼児を幼児用座席に乗せるときは、子どもに乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければなりません。 |
自転車の交通ルール
自転車は、歩道と車道の区別がある道路では、車道を通行するのが原則です。著しく歩行者の通行を妨げる場合を除き道路の左側部分に設けられた路側帯を通行することができます(道路交通法第17条)。また、路側帯を通行するときは歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければなりません(道路交通法第17条の2第2項)。
自転車ナビマーク自転車道がある場合は、工事などの場合を除き、自転車道を通行しなければなりません(道路交通法第63条の3)。
普通自転車が歩道を通行することができる場合は、次の通りです。
道路交通法第63条の4、道路交通法施行令第26条、交通の方法に関する教則
- 歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等があるとき。
- 13歳未満の子供や70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が普通自転車を運転しているとき。
- 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場合や、著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などの接触事故の危険がある場合など、普通自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき。
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また、歩道を通行する際には、次のような規則があります。
道路交通法第63条の4、交通の方法に関する教則
- 歩道の車道寄りの部分又は道路標識等により通行すべき部分が指定されている部分を徐行して通行すること。
- 歩行者の通行の妨げとなる場合は、一時停止して歩行者の通行を妨げないようにすること。
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▲図1 自転車が車道を通行する場合の規則(出典:大阪府自転車条例 ルールブック) |
自転車の違反行為
前述以外にも、自転車には主に次のような違反行為が定められています。
2人乗り運転(道路交通法第57条)
- 自転車には、運転者以外の者を乗車させてはいけません。
(※ただし、16歳以上の運転者が幼児用座席に6歳未満の幼児を乗車させることはできます。)
- 2万円以下の罰金または科料
携帯電話使用運転(道路交通法第71条)
- 自転車を運転しながら携帯電話を手で持って通話したり、メールをしてはいけません。
- 5万円以下の罰金
傘差し運転(道路交通法第71条)
- 傘を差す、物を持つなどの行為で視野を妨げたり、安定を失うような方法で自転車を運転してはいけません。
- 5万円以下の罰金
イヤホーン等使用運転(道路交通法第71条)
- イヤホーン等を使用して音楽を聴くなど、運転上必要な周りの音や声が聞こえない状態で自転車を運転してはいけません。
- 5万円以下の罰金
夜間の無灯火運転(道路交通法第52条、道路交通法施行令第18条)
- 夜間は、前照灯を点灯しなければなりません。
- 5万円以下の罰金
並進通行(道路交通法第19条(道路交通法第63条の5))
- 他の自転車と並んで通行することはできません。(※「並進可」の標識がある道路では、2台までに限り並んで通行できます。)
- 2万円以下の罰金
酒気帯び運転(道路交通法第65条)
- 酒気を帯びて自転車を運転してはいけません。
- 5万円以下の懲役または100万円以下の罰金(酒酔いの場合)
自転車保険への加入
自転車事故への備えと、被害者の救済を図るため、自転車利用者(未成年者の場合は保護者)の自転車保険への加入を条例で義務付ける動きが広がりつつあります。大阪府や兵庫県など、自転車保険が義務づけられている地域もあります。
自転車保険とは、個人賠償責任保険のように、自転車事故によって生じた他人の生命又は身体の損害を補償することができる保険又は共済をいいます。このため、自分自身の生命又は身体を補偉する傷害保険は該当しません。
自転車事故の被害により、数千万円の賠償金を支払わなくてはならない場合があります。この賠償責任は、未成年者であっても免れられません。
賠償額 |
事故の概要 |
9,521万円 |
男子小学生が夜間、自転車で帰宅途中に歩行中の女性と正面衝突。
女性は頭蓋骨骨折等で意識が戻らず、監督責任を問われた母親に賠償命令。
(神戸地方裁判所平成25年7月4日判決) |
9,266万円 |
男子高校生が自転車で車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員と衝突。
男性会社員は言語機能の喪失等の障害が残った。
(東京地方裁判所平成20年6月5日判決) |
3,970万円 |
男子中学生の自転車が無灯火で歩道を走行し、男性会社員と衝突。
男性会社員は転倒した際、頭を強打し死亡。
(大阪地方裁判所平成19年7月10日判決) |
自転車保険には様々な種類があり、本人が気付かないうちに、既に加入している場合があります。まずは、自転車保険に加入しているか確認しましょう。
自転車保険には、人にかける保険として、自動車保険や火災保険等に付帯するもの、加入者本人ではなく家族が契約しているもの、共済やPTAの保険のように団体で加入するもの等があります。また、TSマーク付帯保険は、自転車の車体に保険をかけるため、その自転車で事故を起こした場合誰が運転していても保険の対象となります。事業者向けには、TSマーク付帯保険のほか、業務の遂行によって生じた対人事故の損害を賠償する施設賠償保険があります。
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自転車保険の種類 |
保険の概要 |
個人賠信貢任保険 |
自転車向け保険 |
自転車事故に備えた保険 |
自動車保険の特約 |
自動車保険の特約で付帯した保険 |
火災保険の特約 |
火災保険の特約で付帯した保険 |
傷害保険の特約 |
傷害保険の特約で付帯した保険 |
共済 |
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全労済、市民共済など |
団体保険 |
会社等の団体保険 |
団体の構成員向けの保険 |
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PTAの保険 |
PTAや学校が窓口となり加入する保険 |
TSマーク付帯保険 |
自転車の車体に付帯した保険 |
クレジットカードの付帯保険 |
カード会員向けに付帯した保険 |
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▲表2 自転車保険の種類 |
出典・参考
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