船を造る前に設計図を審査し、中国の基準に基づいて安全性が確保されているかどうかを審査するのが中国船級社の業務だ。その認定証がないと船会社は、船舶保険もかけられない。こうした重要な審査について、新造船、運営船からの依頼は、毎年増え続けている。例えば、60周年を迎えた2016年には、年間1億トン以上の船に対して実施した。
中国では経済成長とともに、旅客船によるクルーズブームが到来している。「船の安全性、特に客船の安全、乗客の安全をどのように保証するかに対する関心も高まっている。世界の新造船のうちアジア(日本、韓国、中国)は9割を占めており、客船の割合が増えています。大型クルーズ船の計画も持ち上がって、発展のスピードも驚異的な速さです。」と、中国船級社の上級技術者、シュウ・ジエミン(Zhou Jie Min)氏は語る。
設計から検査まで、船の安全設計に「maritimeEXODUS」を活用
より安全なクルーズ船や客船を造るため、中国船級社はこのほど、船舶用の避難シミュレーションソフト「maritimeEXODUS」を導入し、運用を始めた。
「中国の大型クルーズ船の自主設計は、まだ始まったばかりです。その検査を担当するわれわれは、maritimeEXODUSを使用して事前分析を行い、設計、製造、検査を通じて法律基準に従った安全な船を造るために、このソフトを導入しました。これによって、顧客満足度がよりいっそう向上している思います。」とシュウ氏は説明する。
火災などの非常時における避難についての安全性は、既存の法律・規定に従い、船の図面に基づいてチェックする。例えば、各フロアの乗客の移動スピード、フロアや階段の幅、通路などの設計を検証している。船のデッキなどに通じる各出口に、人数を割り振り、30分以内で出口付近に集まれるかどうかをまず、確かめるのだ。そして、その後の30分間で救命ボートに乗り移れるかを確かめる。
飛行機の場合は「90秒ルール」というものがあり、乗客全員が90秒以内に機外に脱出する必要があるのに比べて、ゆっくりした印象だ。 「昼と夜とでは、船の中にいる人の位置が違います。また、火災や衝突、浸水など緊急事態の種類によっても、避難状況が違ってきます。乗客がパニックになったときのことも想定し、複数の避難パターンを考えておきます。特に大型クルーザーは乗客の数が多く、時間の制限があるなかで、秩序ある避難のあり方を研究しています。人はどのように逃げ出すのか、どのような設計をすればより多くの人々を救出できるのかを常に考えながら、検証活動を行っているのです。図面で確認するよりも、ソフトを使ってモデルを作成し、予測される状況をシミュレーションすることで、より直感的な分析が可能になると考えています。」と、上級技術者のチェン・グォキン(Chen
Guo Qing)氏は説明する。
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