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●概要
現行版のUC-win/Roadでは、標準機能として一台のPCで同時に4チャンネルまでの表示が可能です。現在、表示可能なチャンネル数を増やすことを主な目的としてUC-win/Roadクラスターシステムを開発しています。複数台のPCを同期させ、多くのモニタに映像出力可能なシステムです。チャンネル数が増加すると、投影面積が増加し没入感が向上することが一般的に知られています。360度ドーム型のスクリーンを利用したシミュレータや会議室、指令室のシミュレーションなどに使用可能なシステムと考えています。
●特長
- 設定および操作を容易に行えます。
- 柔軟な構造になっており、ソフトウエアにおいてクラスター使用するPCの台数や構成に特に制限はありません。
- クラスター構成で使用可能なUC-win/Roadの機能に制限はありません。
- クラスターシステムでの使用の方が一台のPCによる使用よりパフォーマンスを改善します。
- 全ての要素を同期させるため、様々なシミュレーションに使用可能な汎用的なシステムです。
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▲布、火、煙、交通車両、雪の同期 |
●クラスターシステムの実装
複数のPCをLANで接続し、一台のPCでシミュレーションに必要な計算を行います。計算結果を各表示専用のマシンに送信し、各表示マシンで描画処理を行います。このシステムでは、シミュレーション計算を行うマシンをサーバ、表示マシンをスレーブマシンと言います。計算、及び描画処理を以下のフローで行います。
- シミュレーションの計算を表示するフレーム毎に一回行います。
- 一回の計算後、フレームの表示に必要なデータをスレーブマシンへ送信します。
- スレーブマシン側で描画処理を行うと共に次のフレームに必要なデータをサーバ側で計算します。
- (3)でサーバ側の計算が描画より早く終了した場合、描画処理を行っている最中1フレーム分のデータを受信しておくことが可能です。
この最適化によりデータ送受信時間の影響を大幅に防ぐことが可能です。
また、各スレーブマシンに同じデータを送信するためマルチキャストIPを使用し、サーバマシンとネットワークの負担を最小限にします。
- 描画が終了した後サーバ側で次の計算とデータ送信を行います。
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▲フレーム毎のフロー |
クラスター構成の基本的な動作としては1台のサーバマシンにてシミュレーションの計算を行い、スレーブマシンで描画処理だけを行います。処理の分担が可能なので、パフォーマンスが向上したシステムになります。従来のUC-win/Roadでは交通流以外全ての処理を一つのスレッドで行っていたため、本機能を実現するために計算と描画を独立に実行可能にする必要がありました。従って、クラスター構成とUC-win/Road標準版においてもマルチCPUとマルチコアCPUを以前より最適に使用した結果、特に3D樹木、旗、火と煙、MD3キャラクタのアニメーションに関してパフォーマンスが向上しました。
サーバが各スレーブマシンに送信するデータは、移動する要素に関する位置情報と属性です。各スレーブマシン側でデータを受信し3D空間を更新した後描画処理を行いますが、3D樹木、布、雨と雪のように複雑な形状を持つ要素に対しては情報量が多大になりネットワーク上で十分高速に送信することが不可能です。その為、これらのオブジェクトについては、サーバから計算に必要な最低限のパラメータだけを送信し、各スレーブマシンで計算を行うようにしました。
●機能の説明
UC-win/Road標準版を基本にクラスターシステムへ必要な機能を追加しましたので、UC-win/Road標準版の全の機能を搭載しています。各スレーブマシンでの操作を最低限にするため、初期設定以外全ての操作をサーバマシン上で行うことが可能です。シミュレーションの際はサーバマシンで操作、スレーブマシン上で3D空間の可視化を行います。
下記の設定と機能の使用だけでクラスターシステムを操作可能です。
スレーブ側の初期設定 |
スレーブマシン名、サーバのネットワークアドレス |
サーバ側 |
スレーブマシンの表示領域 |
スレーブマシンの切断 |
スレーブマシンの再起動、シャットダウン、データ読み込み |
サーバモード・標準モード切替またサーバモード自動開始 |
シミュレーション開始・終了 |
●パフォーマンスベンチマーク結果
本システムの有効性の確認のためパフォーマンスの試験を行った結果、通常のシステムよりパフォーマンスが向上し、クラスターに入るPC台数の影響が少ないということが分かりました。一方4チャンネル構成でクラスターと標準版との比較を行い、平均140%の改善が得られました。また、15台のスレーブマシンと標準版1チャンネルの比較を行い、約2割の改善になりました。
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▲クラスタ構成、処理分担図 |
●今後の展開
クラスターシステムの基本的な機能は、複数のPC上に同一のバーチャル環境を同期表示させることです。この機能により没入感がより向上しますが、没入感の改善以外の目的にも展開可能です。例えば、クラスターをレンダリングファームとして同一VR環境の映像を多人数に放送するシステム、また、同一VR環境で多人数の運転シミュレーションを行い人と人の相互作用を考慮したシステムなどへ適用可能と考えています。 |
(Up&Coming '10 新春号掲載) |
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