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●はじめに
UC-win/FRAME(3D) Ver 4.00.00の主な有償改訂項目は次の3点です。
- 節点質量の表形式入力
- 初期断面力
- 幾何剛性を考慮した固有値解析
●節点質量の表形式入力
節点に質量を直接与えることができるようになりました(図1)。1つの節点に対して、並進方向3成分(全体座標系のX、Y、Z)と回転慣性質量3成分(全体座標系のX軸回り、Y軸回り、Z軸回り)の合計6成分を与えます。横に6列、縦に全節点が並んだ表形式で与えますので、コピー・貼り付けが容易です。
部材から節点質量を算出させることも可能です。「部材から計算」というボタンを押すと自動算出されます。この計算方法はLumped
Mass(集中質量)です。具体的には、部材の質量の半分を片側の節点に配分します。節点に接続されている全ての部材質量の半分を集計して、その節点の質量とします。この集中質量法は精度が良くないことが知られていますが、考え方がシンプルであること、内部的には質量マトリクスが対角成分だけになって行列計算が容易になることから、よく用いられています。 |
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▲図1 節点質量の入力画面 |
従来までは1節点だけの剛体要素を作成して質量を与える方法により節点集中質量(質点)を設定していました。そのため剛体要素を作成する手間がかかること、多数の質点を定義する必要があるときは剛体要素の編集画面を何度も呼び出さなければならなかったことが不便でした。今回の節点質量の表形式入力によって、これらの面倒な作業がなくなります。質点のために剛体要素を用意する必要もなくなりました。
節点質量を表形式で与えた場合、プログラムが自動算出する死荷重や水平震度荷重にも反映させることができます。モデル設定画面で「集中質量」を選択すれば、死荷重や水平震度荷重が節点への集中荷重として載荷されます(図2、図3)。モデル設定画面で「整合質量」を選択すると、部材への分布荷重で載荷されます(図2、図4)。
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▲図2 質量マトリクスの
作成方法オプションと
固有解析オプション |
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▲図3 集中質量法による死荷重
(節点への集中荷重) |
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▲図4 整合質量法による死荷重
(部材への分布荷重) |
ちなみに「整合質量」は本プログラムが初版から採用している質量マトリクスの構成法です。「整合質量」は要素内の加速度分布を変位関数の2回微分によって求め、それによる慣性力分布を求める方法で、Consistent
Massと呼ばれています。この日本語に相当する訳語は、整合質量、分布質量、調和質量のように様々ですが、どれも同じ質量マトリクスの構成法を指します。整合質量法は、少ない節点数で多自由度の振動特性を適切に表すことができ、集中質量よりも精度の高い解を得やすいという利点があります。ただし、本プログラムの整合質量マトリクスは計算部の中で自動的に算出されていますので、具体的な数値を確認する方法ができません。このため、振動特性を表現できる程度に十分な節点数を持たせ、集中質量法による節点質量の算出をさせておけば、各節点質量をレポートに出力させることが可能です。
集中質量法、整合質量法のどちらを用いてもモデル全体の質量は同じになります。
●初期断面力
部材に初期断面力を設定できるようになりました(図5)。部材だけでなく、ばね要素にも与えることができます。初期断面力とは荷重が載荷される前の初期応力状態を表現するための力です。部材であれば、部材の材端での曲げモーメント、せん断力、軸力を与えます。ばね要素であれば、ばね要素の要素座標系におけるxl方向、yl方向、zl方向、それぞれの軸回りの回転力(モーメント)を与えます。以下、説明を簡単にするために部材に着目し、ばね要素を省略いたします。
解析を始める前の部材に生じている断面力状態を与えるので、初期断面力による支点反力は生じません。支点反力は荷重が載荷されたときに初めて生じます。例えば、モデルの死荷重状態を初期断面力に指定すると、最初の1ステップ目の計算結果には死荷重反力が含まれていません。 |
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▲図5 初期断面力の入力画面 |
同様に、初期断面力を与えた状態では節点に変位は生じません。これは初期断面力を生じさせるような荷重が載荷された解析結果のうち、節点変位を無視して断面力だけを取り出して初期状態とするからです。しかし、部材変位は生じます。これは初期断面力が部材内に存在していると仮定しているのでそれによる部材内変位は発生していると考えるためです。節点変位は生じず、部材変位が生じることから、i端とj端では部材変位はゼロになります。
初期断面力の設定画面には、ある荷重ケースを選択してフレーム計算を行うボタンがあります。そのボタンを押すと、その荷重ケースに対して弾性解析を行い、i端とj端位置での断面力を初期断面力として採用します。このように、材端位置での断面力を採用するので、部材内部の断面力分布状態は無視されます。したがって、分布荷重や不等分布荷重などの部材荷重を載荷した荷重ケースの断面力分布状態と、それを初期断面力として採用したときの状態とは完全に一致しません。この誤差を小さくするためには、節点荷重を載荷した荷重ケースを選ぶか、若しくは、節点を多くとったモデル(部材の分割を細かくしたモデル)を作成してください。他のプログラムにより得られた断面力を初期断面力として入力するときも同様なことが言えます。
●幾何剛性を考慮した固有値解析
固有値解析は剛性マトリクス[K]と質量マトリクス[M]より、
|[K]−ω2[M]|=0
を解いて固有振動数ωを求めます。従来までは、剛性マトリクスには線形弾性の剛性マトリクス[K0]を用いていました([K]= [K0])。今回より幾何剛性マトリクス[KG]も考慮することができます。幾何剛性を考慮した場合は上式中の[K]は、[K]=
[K0]+[KG]となります。モデル設定画面の「固有値解析オプション」で指定します。[KG]を作成するために初期断面力の設定が必要です。
製品添付のサンプルモデル「s06__MetalArch.f3d」(鋼アーチ橋)を用いた例では、幾何剛性を考慮しない場合の固有振動数0.683Hz、幾何剛性を考慮した場合は0.664Hzとなり、幾何剛性を考慮したほうが固有振動数は約3%程度小さくなりました(図6)。固有周期で言い換えると、約3%程度大きくなることを意味します。ただし本検討では、添設板やボルト等の重量を考慮するためにサンプルモデルの鋼重を40%程度大きくしています。固有モードは1次モード(橋軸逆対称1次)に着目した結果です。「鋼橋の耐震・制震設計ガイドライン」(宇佐美勉編著・日本鋼構造協会編、2006年9月、技報堂)のアーチ橋の計算例では、4〜5%程度の差が生じるとされています。
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▲図6 幾何剛性を考慮した固有値解析結果
(橋軸逆対称1次のモード図) |
●その他
ファイバー要素断面のメッシュ分割方法に、縦横分割オプションを追加しました。例えば、横に1分割、縦に20分割といったメッシュ割を与えることができます(図7)。面内解析のように一軸方向だけの計算ではメッシュ分割されたセル数が少なくなるので計算時間の短縮が期待できます。
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▲図7 ファイバー要素断面の縦横メッシュ分割 |
●最後に
今回の改訂内容はいずれも、これまでに多数のお客さまからご要望をいただいておりました。解析機能に関する重要な機能追加を行いましたので、今までUC-win/FRAME(3D)の適用を見送っていた構造物の解析が可能になります。ぜひご利用ください。
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■UC-win/FRAME(3D) Ver 4 リリース予定日:2010年1月 |
(Up&Coming '10 新年号掲載) |
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