Vol.13
UC-win/FRAME(3D)
Ver.6(平成24年道示対応版) |
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太 |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー、有償セミナーを体験レポート |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。
【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp |
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●はじめに
建設ITジャーナリストの家入龍太です。道路橋を設計する際の「バイブル」とも言える道路橋示方書は、これまで何度も改訂されています。改訂内容は、その時代の背景が色濃く反映されています。
例えば、国土交通省が今年2月16日に発表した道路橋示方書の改訂内容には、東日本大震災の教訓を生かして設計地震動に関する大きな変更が行われたほか、限られた予算で社会インフラを維持していくために、維持管理を考慮した設計や情報の保存など、最近の社会情勢の変化や技術的な知見が盛り込まれています。
今回の改訂では、「I. 共通編」から「V. 耐震設計編」まで、道路橋示方書全体で多くの変更が行われました。
例えば「II. 鋼橋編」では疲労設計の追加や、軸力と曲げモーメントを受ける部材の座屈応力度を照査する式の変更がありました。また、「III.
コンクリート橋編」では鉄筋の許容応力度の扱いや使用鉄筋や曲げ半径の変更など、細部にわたる変更、「IV.下部構造編」では深礎基礎の設計が追加されるという大きな変更があったのです。
示方書の改訂が発表されると、フォーラムエイトの技術陣はいち早く改訂内容を分析する作業を始め、立体骨組構造の3次元解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」をはじめとする橋梁設計関連のソフトウェア30本以上を対象に、影響を受ける部分を洗い出しました。
UC-win/FRAME(3D)で影響を受けたのは、鋼橋編では軸方向力を受ける箱形断面の許容用力度や軸方向圧縮力と曲げを受ける部材の照査や疲労照査などです。耐震設計編では「レベル2タイプT地震動」や液状化判定、鉄筋コンクリート橋脚の耐震性能照査などがありました。
これらの細かな変更内容を、トラス橋やアーチ橋、ラーメン橋やラーメン橋脚などの設計に対応できるよう、プログラムに反映させていく作業を地道に進めていきました。
その結果、改訂内容を反映したVer.6をわずか3カ月後の5月18日にリリースすることに成功したのです。
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▲UC-win/FRAME(3D)による橋梁の動的解析例 |
●製品概要・特長
UC-win/FRAME(3D)は、任意形立体骨組構造を対象とした、3次元解析プログラムです。材料の線形・非線形特性を考慮して静的・動的荷重による解析が行えるほか、構造物が大きく変形した時の幾何学的非線形性も扱うことができます。
断面力を計算するだけでなく、道路橋示方書による応力度・耐力照査や土木学会コンクリート標準示方書による限界状態設計計算までを一括で行えるため、高度な構造解析と日本の設計基準に従った効率的な部材設計機能を両立しているのが特徴です。
その高い性能を証明したのは、世界最大級の実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を用いた実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を用いた橋梁耐震実験です。2009年と2010年に、この実験結果をコンピューターによる解析でどこまで精度よく予測できるかを競う「実験事前解析コンテスト」が行われました。
フォーラムエイトのUC-win/FRAME(3D)解析支援チームメンバーと東京都市大学吉川研究室の合同チームは、実験に使われた橋脚の非線形特性を、膨大な数の「ファイバー要素」という非線形解析要素を組み合わせて表現し、動的解析を行いました。その時刻歴応答解析結果は実験と非常によく合っており、見事に2年連続優勝を果たしました。
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▲Eディフェンスを使った「実験事前解析コンテスト」で作成した3Dモデル |
▲実験結果と解析結果の比較 |
今回の道路橋示方書の改訂に合わせて、UC-win/FRAME(3D)Ver.6では、鉄筋の材料データベースをSD345、SD390、SD490の3種類に変更したほか、コンクリートヒステリシスに限界圧縮ひずみε
ccl、鉄筋ヒステリシスに許容引張ひずみε st をそれぞれ追加しました。
また、耐震性能2、3における限界状態曲げモーメントの算出や、M−φ特性の自動生成、曲率による照査にも対応しています。残留変位の照査機能にも対応しました。
このほか基本荷重図の標準出力への対応や、弾性床上の梁の計算結果に反力図と結果数値の出力機能の追加、大規模モデルのレスポンス改善などの改良も行いました。
フォーラムエイトが行った作業は、示方書の内容をよりミクロに検討し、細かな場合分けや照査式の使い分けなどをプログラムの中に反映していくことでした。こうした地道な作業があってこそ、設計者は細かく煩雑な処理をプログラムに任せることができ、その分、マクロで大局的な視点から設計作業に集中することができます。
現行版(H14) |
改定版(H24) |
摘要 |
3章 許容応力度 |
3章 許容応力度 |
3.2.1 構造用鋼材の許容応力度
3.2.3 溶接部及び接合用鋼材の許容応力度
3.2.4 鋼管及び棒鋼の許容応力度 |
4章 部材の設計 |
4章 部材の設計 |
4.3 軸方向力と曲げモーメントを受ける部材 |
5章 耐久性の検討 |
5章 耐久性の検討 |
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6章 疲労設計 |
鋼道路橋の疲労設計指針(H14.3) 第3章相当 |
6章 連結 |
7章 連結 |
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7章 対傾構,横構 |
8章 対傾構及び横構 |
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8章 床版 |
9章 床版 |
9.2.7 鉄筋の許容応力度 |
9章 床組 |
10章 床組 |
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10章 鋼げた |
11章 鋼桁 |
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11章 コンクリート床版を有するけた構造 |
12章 コンクリート床版を有する桁構造 |
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12章 トラス |
13章 トラス |
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13章 アーチ |
14章 アーチ |
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14章 鋼管構造 |
15章 鋼管構造 |
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15章 ラーメン構造 |
16章 ラーメン構造 |
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16章 ケーブル構造 |
17章 ケーブル構造 |
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17章 施工 |
18章 施工 |
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▲道路橋示方書「耐震設計編」の改訂内容 |
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▲新旧道路橋示方書の設計地震動の違い |
▲新旧道路橋示方書にM-φ曲線と許容応力度の違い |
UC-win/FRAME(3D) Ver 6.0 |
Lite |
Standard |
Advanced |
UC-win/Section |
道示改定関連 |
鉄筋材質 |
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○ |
○ |
○ |
コンクリートヒステリシスに限界圧縮ひずみ追加 |
─ |
○ |
○ |
─ |
鉄筋ヒステリシスに許容引張ひずみ追加 |
─ |
○ |
○ |
─ |
限界モーメント算出 |
─ |
─ |
○ |
○ |
M-φ生成機能 |
─ |
─ |
○ |
○ |
許容曲率 |
─ |
─ |
○ |
○ |
残留変位算出 |
─ |
─ |
○ |
─ |
機能拡張(要望対応) |
任意形状断面のDXF/DWG 形式
インポート/エクスポート |
○ |
○ |
○ |
○ |
基本荷重図の標準出力 |
○ |
○ |
○ |
─ |
分布ばね反力図と数値表 |
○ |
○ |
○ |
─ |
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▲UC-win/FRAME(3D)の製品種別ごとの影響個所 |
●体験内容
フォーラムエイトは改訂内容をユーザーに解説するため、3月15日から「新道路橋示方書セミナー『道路橋示方書の改訂内容と製品の対応』」を北海道から沖縄まで全国各地で、5月までに9回開催しました。
筆者は4月20日に東京本社で開催されたセミナーに参加しました。会場はぎっしり満席でした。参加した熱心なユーザーは、フォーラムエイトの技術陣の解説に熱心にメモを取りながら耳を傾けていました。この日はテレビ会議室システムにより、大阪、名古屋、福岡、仙台の各会場にも同時中継されました。
この日のカリキュラムは、道路橋示方書の改訂のポイントや背景を解説した後、鋼橋編、コンクリート橋編、下部構造編、耐震設計編それぞれの改訂内容とフォーラムエイトの対応についての具体的な説明が行われました。道路橋関係の設計プログラムだけでも「平成24年道示対応版」が20本もあります。
その内容はUC-win/FRAME(3D)のような動的非線形解析関連が2本断面計算などの構造解析/断面関連が2本、UC-BRIDGEのような橋梁上部工関連が4本、橋脚の設計のような橋梁下部工関連が8本、そして杭基礎の設計など基礎工関連が4本です。
「鋼橋編」での大きな変更は、6章に「疲労設計」が新設されたことです。これは平成14年3月の「鋼道路橋の疲労設計指針」の第3章に相当します。また、軸方向力と曲げモーメントを同時に受ける部材では、圧縮力を受ける時の応力照査式が変更されました。
「コンクリート橋編」では、鉄筋の種類としてSR235、SD295A、SD295Bが削除され、SD390とSD490が追加されました。これに伴い、鉄筋のフックの曲げ半径も新しく記載されました。このほか、終局荷重作用時の降伏点強度に上限値が設定されたほか、合成桁橋では桁と床版の接合における照査式が変更になりました。
「下部構造編」での大きな変更は、15章に「深礎基礎の設計」が新設されたことです。コンクリート橋編と同様に鉄筋の種類に変更があったほか、現場溶接の許容応力度が工場溶接と同じ値に変更されました。このほか、断面力や地盤反力、変位の計算は弾性解析から弾塑性解析へと変更され、より複雑な解析が必要となりました。
「耐震設計編」は東日本大震災の教訓を受けて特に大きな変更がありました。まず、設計地震動の「レベル2地震動」において、タイプIの地震動の標準加速度応答スペクトル「SI0」の値が大きく変更されたことです。地域別補正係数も従来の3種類から5種類へと細分化され、さらに地震動のレベルやタイプごとに3種類の地域別補正係数が設定されました。
これらの地震動の変更は、構造物の固有周期にもよりますが、短周期の構造物を中心に地震力を従来よりも大きく設定しています。
鉄筋コンクリート橋脚の地震時保有水平耐力や許容率に関する条文も大幅に変更されました。このほか、鉄筋コンクリート橋脚のせん断耐力、死荷重による偏心モーメントが作用する鉄筋コンクリート橋脚の許容水平耐力や許容塑性率、支承の照査に用いる設計地震力など、幅広い変更が行われました。
会場で行われたデモンストレーションでは、道路橋示方書の改訂に合わせて、UC-win/FRAME(3D)の各機能がどのように変わったのかを、様々な入出力画面を開きながら、細かく解説していきました。そして、新旧の道路橋示方書を使って設計した結果の比較も行い、条件ごとに応答塑性率や応答せん断力、せん断耐力などがどのように変わるのかも説明しました。
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▲4月20日に開催された「新道路橋示方書セミナー『道路橋示方書の改訂内容と製品の対応』」 |
●イエイリコメントと提案
このセミナーが行われた時、道路橋示方書の「解説編」はまだ発表されていない時期でした。にもかかわらず、フォーラムエイトの技術陣は、改訂内容を詳細に分析し、製品への影響や対応版を開発するとともに、改訂の背景までを読み取っていました。
セミナーでは一部、「推測」と前置きして解説していた部分もありましたが、過去の設計指針などに基づく解説は説得力があり、いち早く示方書改訂に対応したいユーザーにとって、とても有益な内容でした。
今回の道路橋示方書改訂に対応したUC-win/FRAME(3D)Ver.6が発売されたことで、ユーザーである設計者は改訂部分の細かい点はプログラムに任せ、自分自身は設計の応力照査結果などを大局的に考え、よりよい設計へと改良していくことができます。
フォーラムエイトは、E-ディフェンスでの事前解析コンテストで2年連続優勝を果たし、年間100件を超える受託解析の経験を通して、様々な工種や条件における解析実務についても経験を積み重ねています。
プログラムを開発して提供だけでなく、自らがヘビーユーザーとして使いこなすことで、一般ユーザーからの幅広いニーズに対応するとともに、アドバイスを行っていく力はフォーラムエイトの「コア・コンピタンス」(事業の中核となる力)でしょう。
●製品の今後の展望
最近、国土交通省では建築分野におけるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及と効果を土木分野でも生かそうと「土木のBIM」こと「CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)」の導入気運が急速に高まっています。
CIMが普及すると橋梁や道路などの設計は3次元CADで行うことが基本となり、作成した3次元モデルデータを解析やシミュレーション、法的チェックなどに活用し、二重入力することなく、様々な業務で使えるようになります。
その時、UC-win/FRAME(3D)は設計の初期段階で橋梁などの3次元モデルをそのまま読み込むことで、入力データ作成の手間は大幅に減らせることになります。そして解析結果は設計に反映され、より効率的で効果の高い構造物の実現につながります。
CIM時代が普及するとともに、設計ワークフローの中でUC-win/FRAME(3D)はさらに使いやすくなり、使用頻度も高まるでしょう。そのためには、「CIMモデル」と材料特性などの属性情報を含めたデータ交換性能が重要になってくることは言うまでもありません。
●次回は、「Parking Solution」セミナーをレポート予定です。 |
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(Up&Coming '12 夏の号掲載) |
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