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      | 杭基礎の設計  建築と土木の違いは? |  
      | ■土木と建築の境目
 土木と建築は、一般の人にはほとんど区別されていないと思います。実際には、土木と建築を合わせて「建設」と呼んでいる場合もありますが、これらの事業に携わっている技術者たちは、両者を違うものと考えています。違いを簡単に述べると、地面の下が土木で、地面の上が建築の領域と言われています。
 土木の仕事は、山・森林・川・海等の自然を相手にして人間が使いやすく改造する作業です。土木工事としては、橋や高架道路・ダム・トンネル・道路・宅地造成等が該当します。一方、建築の仕事は、土木が構築した人工の環境に、人々が安全で快適に利用出来る空間を作ることです。建築工事としては、ビルやマンション・戸建て住宅等が該当します。
 杭基礎については、地面より下にありますが、土木基準で設計する基礎杭(主に橋や高架道路)と建築基準で設計する基礎杭(主にビルやマンション)があります。ここでは、杭基礎設計に関する土木と建築の違いについて紹介します。
 
 ■地震作用に対する修復限界状態 1)
 
 ▼表-1 土木と建築分野のとらえ方 1)
 
 
        
          
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                  | 土木分野の とらえ方
 | 土木分野においては、地震発生後に土木構造物(社会基盤)の持つ機能を短期間に回復でき、継続的な使用ができる状態に着目する。 |  
                  | 例えば、コンクリート標準示方書では「地震後に機能が短期間で回復でき、補強を必要としない」と規定されている。 |  
                  | 建築分野の とらえ方
 | 建築分野においては、地震後に補修した場合に、財産としての価値を失わない経費内で補修ができる状態に着目する。 |  
                  | 地震後に、「崩壊は免れたが取り壊して新たに建て替えなければならない建築物」が、非常に多く発生する状況を回避する意味がある。 |  
                  | 機能損傷の修復という点では、非構造部材および仕上げ材を考える必要がある。 |  |  我が国では、構造物設計における技術基準を、土木・建築構造物あるいは鋼構造・コンクリート構造・基礎構造という、構造物ごとに特化した技術基準類が策定されております。各構造物の最適設計を行うという面では非常に優れておりますが、各技基準間や国際技術標準との整合性の問題を指摘する声が多くなっております。そこで、国土交通省では、平成14年3月に「土木・建築に係る設計の基本」を策定しております。その中で、地震作用に対する土木および建築の分野において、上記の捉え方が示されております。
 
 
 ■杭基礎の検討項目 2,3)
 以下に、道路橋示方書・同解説と建築基礎構造設計指針との違いについて解説します。
 
 ○建築基礎構造設計指針
 ・杭の鉛直支持力、引抜き抵抗力、水平抵抗力
 ・地盤変位を考慮した耐震設計
 ・杭基礎の即時沈下、圧密沈下
 ・基礎の変形角・傾斜角
 ・杭体(圧縮、曲げ、せん断)耐力、杭頭接合部耐力
 
 ○道路橋示方書・同解説
 ・杭頭反力≦許容支持力、水平変位≦許容変位、杭体応力度≦許容応力度(常時、L1地震時)
 ・基礎降伏判定、杭体せん断力≦せん断耐力、フーチング断面力≦せん断耐力(L2地震時)
 
 上記の検討項目について各基準で照査を行うが、建築基礎構造設計指針では終局限界状態・損傷限界状態・使用限界状態における性能評価を行っているのに対して、道路橋示方書では許容応力度法と地震時保有水平耐力法により性能評価を行っています。
 
 
 ■極限先端支持力の算定手法
 極限先端支持力は、杭先端の極限支持力と周面摩擦力度の合計で表されています。これについては、建築と土木による違いはありませんが、杭先端の極限支持力度における評価法が異なっております。以下に、各基準における杭先端の極限支持力度の算定法を示します。
 
 ▼表2 杭先端の極限支持力度の算定法
 (a)建築基礎構造設計指針
 
 
        
          ここで、建築基礎構造設計指針のN値は、打込み杭において、杭先端から下に1d、上に4d間の平均N値(d:杭径)。
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                  |  | 極限先端支持力度 |  
                  | 砂質土 | 粘性土 |  
                  | 打込み杭 | qp = 300N | qp = 6・Cu |  
                  | qp = 0.7・qc |  
                  | 上限値qp = 18,000kN/m2 |  
                  | 場所打ちコンクリート杭 | qp = 100N | qp = 6・Cu |  
                  | 上限値qp = 7,500kN/m2 |  
                  | 埋込み杭 | qp = 200N | qp = 6・Cu |  
                  | 上限値qp = 12,000kN/m2 |  |  場所打ち杭・埋込み杭において、杭先端から下に1d、上に1d間の平均N値。
 
 (b)道路橋示方書
 
 
        
          
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                  | 施工法 | 地盤種類 | 杭先端の極限支持力度(kN/m2) |  
                  | 打込み杭工法 (打撃工法、バイブロハンマ工法)
 | 砂れき、砂層 および粘性土層
 | 300(L/D≧5) 60・(L/D)・N
 (L/D<5)
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                  | 中掘り杭工法 | 砂層 | 150N(≦7,500) |  
                  | 砂れき層 | 200N(≦10,000) |  
                  | プレボーリング杭工法 | 砂層 | 150N(≦7,500) |  
                  | 砂れき層 | 200N(≦10,000) |  
                  | 鋼管ソイルセメント杭工法 | 砂層 | 150N(≦7,500) |  
                  | 砂れき層 | 200N(≦10,000) |  
                  | 場所打ち杭工法 | 砂れき層および砂層(N≧30) | 3000 |  
                  | 良質な砂れき層(N≧50) | 5000 |  
                  | 硬質粘性土層 | 3qu qu:一軸圧縮強度(kN/m2)
 |  |  上記に示すように、杭先端の評価法が違うため、建築と土木では同じ地盤を対象としても計算値が違うということになります。
 
 
 ■当社製品の適用
 当社の製品においては、基礎の設計計算Ver.7・杭基礎の設計Ver.7で土木基準における計算が可能です。また、建築杭基礎オプションで建築基準が計算可能です。
 
 
 
        
          
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            | ▲図1 杭基礎の設計 |  | ▲図2 建築杭基礎オプション |  
 ■参考文献
 ・土木・建築の設計の基本、国土交通省 平成14年3月
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      | (Up&Coming '09 早春の号掲載)
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