|
|
●はじめに
「3次元鋼管矢板基礎の設計計算」は、鋼管矢板井筒基礎の設計を支援するプログラムで、材料非線形性を考慮した立体骨組解析を行う強力な計算機能を持った製品です。レベル1地震動,レベル2地震動の基礎の安定計算から、部材計算、施工時の検討まで、詳細設計レベルの検討を行うことが可能です。また、通常の鋼管矢板井筒基礎の他、連結鋼管矢板基礎をサポートしています。以下に本製品の概要と機能・特長についてご紹介します。
●プログラムの特長
本製品の特長を以下に示します。
|
・ |
材料非線形性を考慮した立体骨組解析により鋼管矢板基礎の挙動の解析を行う。 |
|
・ |
通常の鋼管矢板井筒基礎の他、連結鋼管矢板工法の検討を行うことが可能。 |
|
・ |
継手の剛度,耐力を適切に定義することにより、従来のP-P型継手だけでなく、H-H型継手の検討を行うことができる。 |
|
・ |
弊社製品「基礎の設計計算」と同等の簡易な入力を行うことにより、立体骨組解析結果を得ることができる。また、「基礎の設計計算」の入力画面,出力書式の多くを踏襲しているため、「基礎の設計計算」をご使用のユーザ様であれば、違和感なく設計可能。 |
▲メイン画面 |
|
▲立体骨組解析の結果表示画面 |
●サポート範囲
施工方式は仮締切り兼用方式のみサポートしています。形状は、円形,小判形,矩形をサポートしており、隔壁および中打ち単独杭を設置することが可能です。
▲平面形状(左から円形,小判形,矩形。矩形は連結鋼管矢板工法の例)
本製品のサポート範囲の概要を下表に示します。
▼表1 サポート範囲
|
構造形式 |
井筒型鋼管矢板基礎 |
施工方法 |
仮締切り兼用方式(連結鋼管矢板工法をサポート) |
平面形状 |
円形,小判形,矩形(隔壁、中打ち単独杭を考慮可能) |
鋼管矢板の施工方式 |
打込み工法、中掘り工法(最終打撃方式,セメントミルク噴出攪拌方式,コンクリート打設方式,プレボーリング方式) |
頂版と鋼管矢板との結合 |
プレートブラケット方式,差し筋方式,鉄筋スタッド方式,頭部埋込み(隔壁,中打ち単独杭) |
継手形式 |
P-P継手,H-H継手 |
|
●計算機能
本製品は、常時,暴風時およびレベル1地震時の安定計算(許容変位,許容支持力の照査),鋼管矢板の応力度照査、レベル2地震時の基礎の耐力照査および応答塑性率の照査を行うことが可能で、いずれも立体骨組解析により求めた結果を用いて照査します。また、立体骨組解析により求めた反力を用いて、頂版の設計,頂版と鋼管矢板との接合部の設計等の部材計算を行います。その他、施工時の仮締切り計算、固有周期算定用の地盤バネ定数等の算出が可能で、いずれも成果品として使用可能な詳細な計算書の出力を行います。次に、本製品の計算機能一覧を示します。 |
|
レベル2地震時結果確認画面
|
▼表2 サポート計算機能
|
計算機能 |
詳 細
|
常時,暴風時および
レベル1地震時の検討 |
許容変位,許容支持力の照査 鋼管矢板の応力度の照査 合成応力度の照査
負の周面摩擦力に対する検討 |
レベル2地震時の検討 |
基礎の耐力照査 基礎の応答塑性率の照査,変位の照査 流動化に対する照査 |
施工時の検討 |
仮締切り壁および支保工の計算 根入れ長、ボイリング、盤ぶくれの検討 |
部材計算 |
頂版の計算 頂版と鋼管矢板との結合部の計算 杭頭と頂版の結合部の計算 |
その他 |
固有周期算定用の地盤バネ定数の計算 液状化の判定 |
|
●立体骨組解析とは
鋼管矢板井筒基礎は、鋼管矢板を継手で結合して井筒を構築するため、継手にはせん断ずれ変形が生じ、この継手のせん断ずれの挙動を適切に評価した解析が求められます。
道路橋示方書等では、立体骨組解析によるのが望ましいとしながらも、一般的にはせん断ずれを考慮した仮想井筒ばりによる解析法にて設計してもよいとあり、「基礎の設計計算」においてもこの解析法を適用しています。ただし、仮想井筒ばりによる解析法では、井筒全体を1本のはりとしてモデル化しており、また、井筒全体の断面変形の影響を考慮することができません。よって、複雑な条件や特殊な形状の解析においては、個々の鋼管矢板とそれを連結する継手をモデル化して厳密な計算を行う立体骨組解析を適用することにより、高い精度で井筒基礎の挙動を解析することが可能となります。
|
|
▲立体骨組のモデル |
なお、本製品では、弊社製品「UC-win/Frame(3D)」の後継で現在開発中である「Engineer's Studio」の計算部を搭載して立体骨組解析を行います。したがって、計算精度はこれらの製品と同等であり、また高い信頼性を有しています。
●連結鋼管矢板工法とは
本製品は連結鋼管矢板工法をサポートしています。連結鋼管矢板は、鋼管とH鋼を連結し一体とした構造の部材で、高耐力,高遮水性ならびに高施工精度を有する近年注目される新工法です。主に、次の特長を有しています。
(1) |
2本の鋼管とH鋼が連結されているため、2本同時打設が可能。施工時間が大幅に短縮できる。 |
(2) |
材料自体の剛性が大きく、また打設中における溶接継目に沿った回転が拘束されるため、施工時の鉛直精度が向上する。 |
(3) |
H鋼継手部に止水処理が必要なく、止水処理剤の注入量を半分に削減できる。また、遮水性が高い。 |
(4) |
継手箇所が半減するため、曲げ剛性が向上し、高い水平抵抗力を期待できる。 |
本製品では、この連結鋼管矢板を適切にモデル化した解析が可能です。また従来の鋼管矢板工法との比較検討を行うこともできます。なお、本製品では、異なる規格サイズのH鋼を嵌合するH−H継手の計算にも対応しています。この継手を用いることで、より高い遮水性,施工性,継手の剛性の向上を期待できます。 |
|
▲H−H継手 |
|
▲連結鋼管矢板の断面 |
●計算モデルの概略
立体骨組解析は、右図のように、地盤バネで支持した鋼管矢板(連結鋼管矢板)を、継手バネで結合した立体骨組構造としてモデル化し、静的荷重を載荷して解析します。継手バネは、継手のせん断抵抗特性を表す鉛直方向バネ定数の他、接線方向,法線方向の3成分の抵抗バネとして定義しており、いずれも耐力を考慮したバイリニアモデルとします。これにより、各鋼管矢板相互のずれにより発生する3方向の継手反力を適切に評価することが可能となります。
地盤抵抗は、水平2方向,鉛直1方向の合計3成分として定義しており、次に示す6種類の要素を考慮します。なお、水平バネのひずみ依存性は考慮しないため、レベル1地震動の検討においても、地盤抵抗の非線形性を考慮しています。 |
▲計算モデルの概念図(連結鋼管矢板) |
▼表3 安定計算に適用する地盤抵抗要素
|
|
常時,暴風時及びレベル1
地震時に対する照査
|
レベル2地震時に対する照査
|
地
盤
抵
抗
要
素 |
基礎前面の水平方向地盤抵抗 |
バイリニア型 |
バイリニア型 |
基礎前面の鉛直方向せん断地盤抵抗 |
バイリニア型 |
バイリニア型 |
基礎側面の水平方向せん断地盤抵抗 |
バイリニア型 |
バイリニア型 |
基礎側面の鉛直方向せん断地盤抵抗 |
バイリニア型 |
バイリニア型 |
基礎底面の鉛直方向地盤抵抗 |
線形 |
バイリニア型 |
基礎底面の水平方向せん断地盤抵抗 |
線形 |
線形 |
|
断面は、錆代まで考慮した1(mm)単位の厳密な形状を用いて定義し、設定された材質等から適切な剛性を与えます。また、連結鋼管矢板のとき、1セットを1つの断面としてモデル化します。なお、頂版は剛体と考えるため、剛部材および剛性の高い要素として定義します。
レベル2地震時では、鋼管矢板部材の材料非線形性を考慮することが可能で、この場合、ファイバー要素を用いて計算します。ファイバー要素では、図のように鋼管矢板部材をメッシュ分割し、分割したセルごとにヒステリシス(=材料の応力−ひずみ関係)を与え厳密に計算します。これにより、断面特性の精度が大きく向上します。また、軸力変動を考慮した計算を行います。
▲地盤バネの定義 |
|
▲断面のメッシュ分割 |
|
▲解析結果(ひずみ分布) |
●ソルバー解析部について
本製品では、前述の通り、弊社製品「Engineer's Studio」(開発中)の解析部(ソルバー)を搭載して立体骨組解析を行っています。本解析部は、本体プログラムとは独立して起動され、"COM
API"と呼ばれるプログラムにより計算モデルや解析結果の受け渡しを行う構造(下図参照)となっていることから、高い汎用性を有しており、様々な製品に搭載可能です。弊社では今後、本ソルバーを活用し、立体骨組解析を行う製品を開発する予定となっており、現時点では、「柔構造樋門の設計」において、函体縦方向レベル2地震動静的照査(オプション機能)の開発を予定しています。
●今後の予定
今後、本製品では、計算モデルを「Engineer's Studio」の設計データファイルとして出力する機能を搭載する予定となっています。これにより、計算モデルの詳細を3次元骨組み汎用解析ソフトにより確認する、または設計者の方がお考えのモデルに修正し計算することが可能となります。また、より精度の高い解析を行うことができるよう解析処理の改善,改良を加えていきたいと考えています。
■3次元鋼管矢板基礎の設計計算(連結鋼管矢板対応) リリース予定日:2008年11月 |
(Up&Coming '08 晩秋の号掲載) |
|
|
>> 製品総合カタログ
>> プレミアム会員サービス
>> ファイナンシャルサポート
|