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Vol. 4 |
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げて、わかりやすく紹介していきます。今回は、今年に入って改正された特定商取引法と、最近注目を集めている扶養義務および介護保険について解説します。 |
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近年、いわゆる「押し買い」に関するトラブルが近年増加していることを背景に、特定商取引に関する法律(特定商取引法)が一部改正され、平成25年2月21日から施行されています。以下では、今回の改正で新しく設けられた規制についてご紹介します。
■1.「押し買い」とは
訪問業者が自宅などを訪問して貴金属等を強引に買い取っていく手法です。改正前の特定商取引法では、消費者が物品の買主となる場合については規制がありましたが、消費者が物品の売主となる、いわゆる「押し買い」のケースに対応する規定が存在しなかったため、トラブルが急増していました。
■2.特定商取引法の改正
(1)今回改正された特定商取引法では、同法の規制対象となる取引類型に、「訪問購入」(購入業者が営業所等以外の場所において、売買契約の申込みを受け、又は売買契約を締結して行う物品の購入)が新たに加えられました。
(2)「訪問購入」についての規制は、自動車や家具、書籍など政令で除外される一部の物品を除き、原則として、全ての物品についての取引が対象となります。
(3)「訪問購入」について、新たに設けられた規制の主な内容は以下のとおりです。
- 勧誘目的の明示(同法第58条の5)
購入業者は、勧誘に先立ち、事業者名や勧誘目的であることなどを明らかにしなければなりません。
- 不招請勧誘の禁止(同法第58条の6第1項)
購入業者は、訪問購入により物品を売買することについての勧誘を要請していない消費者に対して勧誘等をすることはできません。よって、いわゆる飛び込み勧誘は禁止されます。なお、消費者が物品の価格の査定を求めただけでは、「勧誘の要請」にはあたらず、購入業者が消費者から査定の依頼を受けても、査定を超えた勧誘はできないものとされています。
- 勧誘意思の確認義務(同法第58条の6第2項)
購入業者は、売主たる消費者からの要請を受けて訪問する場合であっても、消費者に勧誘を受ける意思があるかどうかを確認しなければ、売買契約の勧誘ができません。
- 再勧誘の禁止(同法第58条の6第3項)
売買契約を締結しないとの意思表示を行った消費者に対して、購入業者が再勧誘をすることは禁止されます。
- 書面交付義務(同法第58条の7、同第58条の8)
購入業者は、売買契約の締結にあたり、物品の種類、購入価格、物品の引渡方法、クーリング・オフに関する事項等について記載した書面を交付しなければなりません。
- クーリング・オフ(同法第58条の14)
売主たる消費者は、5. の書面を受領した日から8日以内であれば、書面により契約の申込みの撤回や契約の解除ができます。
- 物品の引渡しの拒絶(同法第58条の15)
売主たる消費者は、クーリング・オフが認められる8日間は、購入業者に対して物品の引渡しを拒むことができます。
- クーリング・オフ期間内の第三者への物品の引渡しについての通知(同法第58条の11)
売主たる消費者が、クーリング・オフが認められる8日間の期間内に、購入業者が、買い取った物品を第三者に引き渡したときは、購入業者は、売主に対し、その旨を通知しなければなりません。
上記のほかに、購入業者が、不実告知やクーリング・オフを妨害することなども禁止されています。
なお、特定商取引法に定められた各規制に違反した業者は、行政処分(業務停止命令)や刑事罰の対象となります。 |
急速な高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者の増加と介護の重度化・長期化が問題となっています。そこで、家族の扶養義務と介護保険についてご紹介致します。
■1.民法上の扶養義務
民法上、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務があると定められています(民法877条1項)。また、夫婦も、互いに扶養する義務があります(同居協力扶助義務(同法752条)及び婚姻費用分担義務(同法760条))。
そして、扶養義務の内容は、扶養義務を負う者と要扶養者との関係によって、次の通り2種類に分かれます。
まず、夫婦が相互に対して負う扶養義務及び親が未成熟の子に対して負う扶養義務は、相手に自分と同程度の生活を維持させるべき義務(生活保持義務)と解釈されています。最後に残された一片の肉まで分け与えるべき義務とも言われています。
これに対し、その他の扶養義務者が負う扶養義務は、自分に余力がある限りで(自分の地位と生活とを犠牲にすることがない程度に)相手を援助すれば足りるという義務(生活扶助義務)と解釈されています。己れの腹を満たして後に余れるものを分かつべき義務とも言われています。
このように程度の差があるものの、高齢者が介護を要する状態に至った場合、親族は、介護をしたり、介護サービスの利用料を支払ったりする義務を一定程度負うこととなります。高齢化に伴い、介護が重度化・長期化する傾向にあり、扶養義務者の負担も相当増加することが考えられます。
■2.介護保険における扶養義務の強化
しかし、介護保険制度を利用すれば、適切な介護サービスを低額で受けることができ、扶養義務者の負担も軽減できます。
具体的には、市町村に設置される介護認定審査会で要介護認定を受けた後、ケアプランナーに介護サービスの利用計画を作成してもらい、希望する介護サービスの種類や事業者を選択します。そして、介護サービスを受けるために、利用者本人が事業者と契約を締結します。なお、利用者本人の判断能力が不十分である場合、成年後見人を付して、利用者に代わって契約を締結してもらいます。また、介護保険制度を利用すれば、1割の自己負担額で介護サービスを受けることができます。
もっとも、介護保険は、対象者から徴収された保険料によって成り立っています。基本的には、対象者本人が納付義務を負いますが、65歳以上の対象者に関しては、配偶者や世帯主も連帯納付義務を負います(介護保険法132条)。
仮に、介護保険料を滞納すると、自己負担額が通常は1割のところ、3割、多いときには全額となってしまいます。近年、介護保険料の滞納が問題となっています。ご自身や家族の介護保険料が年金や給与から天引きされていない場合は、いざという場合に介護保険制度を最大限活用できるように、介護保険料の支払い状況を確認するようにしましょう。
■監修:中本総合法律事務所 |
(Up&Coming '13 晩秋の号掲載) |
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