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今回のバージョンアップでは、軽量盛土対応,落石防護擁壁について機能追加を行い、あわせて入力,計算,出力,図面の全般に関して拡張しますので、さらに適用範囲及び検討項目が広がります。
●軽量盛土対応
軽量盛土は、軽量性,自立性,施工性が優れているため、擁壁の裏込め土などに使用され、擁壁に作用する自重の低減,裏込め土からの土圧を低減することを目的とした土圧軽減工法に多く採用されています。
その他の適用用途としては、裏込め土として補強時,変状構造物保護のための部分施工、既設構造物保護の補強があります。
設計条件によっては、軽量盛土の施工が異なり、前面の構造物に作用する側圧や土圧に影響があります。
台形の場合は、土圧合力の作用位置が擁壁内にないため土圧は作用せず、軽量盛土のみで自立することになり、擁壁には土圧は作用しません。
逆台形の時は、軽量盛土の背面勾配,裏込め土の安定勾配などの施工条件により、擁壁には軽量盛土後方より土圧が作用することになります。
軽量盛土後方の土圧は、軽量盛土の設置勾配<裏込め土の安定勾配の時は、土圧が作用されないため擁壁へは土圧を考慮しません。軽量盛土の設置勾配≧裏込め土の安定勾配の時は、軽量盛土の設置勾配と裏込め土の安定勾配間の土塊による影響として試行くさび法などから土圧を算出して、擁壁に作用する土圧として考慮する必要があります。
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▲軽量盛土の入力画面 |
軽量盛土からの側圧は、軽量盛土上の上載荷重(載荷荷重,RC床版,埋戻し土)の影響を考慮して、EPSの時は上載荷重の0.1程度を等分布より,FCB(緩衝材が無い時)の場合は側圧係数K=ν/1-ν(ν:ポアソン比)を台形分布で考慮します。
現状のVer.8では,軽量盛土の設置位置は躯体下部のみで、土圧は任意土圧(土圧合力,土圧強度)で、側圧は直接指定する必要がありました。
今回のVer.9では、盛土材料としてEPS,FCB及び舗装などを新たに追加し、任意位置への設置,側圧の考慮,土圧の試行くさび法による自動算出を可能にします。
●落石防護擁壁
Ver.5では、衝撃力と崩壊土を考慮した待ち受け擁壁の設計に対応しましたが、Ver.9では落石による荷重と堆積を考慮した落石防護擁壁の設計に対応します。
- 荷重の組み合せ
通常の照査における常時及び地震時の照査の他に、壁衝突あるいは柵衝突時の落石時,土石堆積時の堆積土圧による堆積時の照査を行い、落石時は自重+落石の影響,堆積時は自重+堆積土+堆積土圧,地震時は自重+自重による慣性力による荷重を作用させます。
常時(地震時) |
堆積時 |
落石時(壁衝突) |
落石時(柵衝突) |
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自重、自重慣性力 |
自重、堆積土圧 |
自重、落石の影響 |
自重、落石の影響 |
落石荷重は、1個のみの岩石が壁あるいは柵に水平に衝突すると仮定するため、荷重の入力画面では複数の組み合わせを検討できるように荷重ケースを任意に作成できるようにしています。
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▲落石荷重の入力画面 |
- 壁衝突時
擁壁は、弾性地盤によって支持された剛体と仮定し、落石の衝突により伝達された運動エネルギーが地盤の弾性応答時の変形エネルギーと等しくなるまで擁壁が変位及び回転するとして、落石衝突後の擁壁の運動エネルギーを地盤の塑性変形によって吸収し、弾性応答時の変形エネルギーと塑性変形時の応答エネルギーが同じと仮定して安全性を評価します。
落石エネルギーは、偏心モーメントMw,水平力,最大抵抗モーメントMu,浮上がり限界モーメントMl,降伏モーメントMy,弾性応答時のモーメントMLを計算し、荷重と変位曲線の関係より変位量,回転角を求めて、エネルギー一定法則から落石衝突時の回転変形エネルギーEL,可能吸収エネルギーEMを求めます。
- 柵衝突時
柵衝突時には、防護柵による落石吸収エネルギーの照査,防護柵の取り付け位置における部材照査を行います。
防護柵による落石吸収エネルギーの照査では、落石エネルギーEは防護柵における支柱の塑性変形,ワイヤロープの伸び,金網の伸び変形により吸収され、可能吸収エネルギーETをET=ER+EP+EN≧E
(EP:支柱のエネルギー,ER:ワイヤロープの吸収エネルギー,EN:金網の吸収エネルギー)より求め照査します。
また、ER,EP算出時は、ロープと支柱強度の組み合わせにより支柱が塑性変形する場合とロープが変形する時があるので、支柱への反力R,支柱の下端が塑性ヒンジを形成するのに要する力Fyをそれぞれ求め両値を比較後、支柱が先に塑性変形する場合とロープが先に降伏する時のケースを条件毎に求めます。
防護柵の取り付け位置における部材照査では、支柱による曲げ応力度,押し込みせん断を照査します。
●入力,計算
- 二段積みの入力改善
下段擁壁に上段擁壁の影響を考慮する二段積み擁壁は、下段擁壁に作用する土圧の増大に関して調査・検討等が必要になるため、対応当時は使用頻度等が少ないと考えていましたが、地盤条件等の問題により宅造擁壁等では比較的使用頻度が高く、問い合わせも多く寄せられている状況です。
現状、入力が煩雑となっていますので、下段擁壁と上段擁壁の間の土砂,上段擁壁後方の土砂を入力するだけで簡単に検討できるように入力を改善します。また、U型擁壁においては、左右どちらにも上段擁壁を設置できるようにあわせて改善予定です。
- 任意形状の揚圧力の算出
任意形状では、ブロック入力,座標入力,マウス編集と拡張してきましたが、Ver.9では次のような複雑な形状の揚圧力の算出に対応しますので、計算上の制限が一部緩和されます。
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▲二段積みの入力画面 |
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- 土砂ブロックの編集
形状によっては土砂と土圧の仮想背面を別にモデル化したり、荷重ケースによって仮想背面を変えて検討(常時ではかかと端を鉛直に結ぶ線,地震時は天端とかかと端を結ぶ線)することがあるので、荷重ケース毎に土砂ブロックを編集できるようにします。
- 任意土圧による計算拡張
軽量盛土,多層地盤対応に伴い任意土圧(土圧係数,土圧強度,土圧合力)による土圧計算をあわせて拡張します。
土圧係数指定では上端と下端の土圧係数,不連続面への対応、土圧強度指定ではU型擁壁への適用拡張、土圧合力指定では仮想背面の折れ等を考慮した複数指定を予定しています。
●図面作成
図面作成では、曲げ加工,数量計算,単位メートルの作図について拡張します。
曲げ加工では、「竪壁主鉄筋」画面に隅角半径(折曲げ部の曲げ加工半径)の入力を追加し、折り曲げ部を曲げ加工とした竪壁主鉄筋の作図を可能とします。「竪壁天端平行配力筋」画面では鉄筋最大長の入力を追加し、竪壁正面形状が「山折れ」の時は竪壁天端平行配力筋の継ぎ手位置が山折れ部に掛からないように設定できるようにします。
単位メートル当たりの配筋図の作図では、底版平面図を標準図に合わせた方向で作図します。
また、数量計算(コンクリート体積、コンクリート型枠面積)においては、開口部の数量を考慮して算出できるようにします。
また、平面折れの開口部,水抜き穴,コーナー部配筋の図面作成を予定しています。
今後もお客様のご意見・ご要望を多く取り入れ、広く使いやすいプログラムにしていきますので、「擁壁の設計」にご期待ください。 |
擁壁の設計セミナー
●日時 : 2009年 5月 28日(木) 9:30〜16:30 ●参加費 : \15,000 (1名様・税込 \15,750)
●本会場 : フォーラムエイト東京本社 GTタワーセミナールーム TV会議システムにて 東京・大阪・名古屋・福岡にて同時開催 |
■擁壁の設計 Ver.9 リリース予定日:2009年6月 |
(Up&Coming '09 新緑の号掲載) |
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