ユニバーサル・コミュニケーションデザインの認識と実践
       
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                              太田 幸夫 
                  ビジュアル・コミュニケーションデザイナー、太田幸夫デザインアソシエーツ代表 
                  特定非営利活動法人サインセンター理事長、多摩美術大学 前教授 
                  LoCoS研究会代表、日本サイン学会理事・元会長、日本デザイン学会評議員 
            一般財団法人国際ユニバーサルデザイン協議会評議員 
                  A.マーカスデザインアソシエーツ日本代表 | 
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      | Vol.12 | 
      JIS Z 9095避難誘導システム(SWGS)蓄光式の制定 | 
     
    
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      新しい国是となった国際整合化では‘国内規格の国際規格化’が理想パターンである。非常口サイン(本誌107号参照)はそれを実現している。ここではその一歩手前、準理想と言えるもので、日本が反対したのに国際規格化されたものを、日本で改善・改良して、国家規格に導入した事例である。 
       
      ISO/TC145/SC2/WG3国際会議に筆者が一人、日本を代表して出席し、国際規格ISO16069(避難誘導システム-蓄光式)に以下の理由で終始反対した。 
      1)病院、学校、劇場、レストラン、ホテル、デパート、ターミナル、地下街など、不特定多数の人が使用する全ての建物の壁、階段、手すり、非常口周りに連続蓄光ラインを張り巡らして、非常時の暗闇で人々を非常口に誘導するもので、平常時に100ミリ幅のラインが目障りとなり環境を損ねる。インテリアの質を損ねない配慮が必要。 
      2)固定的な連続ラインだけでは避難する方向を示すことができない。火災発生場所によって避難の方向を変えるなど、動的な誘導システムが必要。 
      3)日本では阪神淡路大震災のように、非常口から外に出た後も多くの命が失われている。安全な場所まで人々を誘導する「非常口から避難場所までの一貫した避難誘導システム」が必要。 
       
      反対だけでなく代替え案も提案した。冷陰極管が使われ正方形の小サイズになって環境負荷が軽減した日本の非常口サインを採用してはどうかという提案。実物サンプルをベルリン会議に持参して見せた。各国代表は目の色を変えて分解し、エッジライト方式がきれいな面光源になる技術を絶賛していた。けれども蓄光材メーカーを代表する委員が半数を占めるため、電気方式は見送られた。50ミリ正方形の非常口ピクトグラムに矢印を添えた蓄光式サインを廊下の幅木の上に連続して取り付ける案も蓄光材の使用量が少ないと言わんばかりに拒否された。 
       
      物理的連続ラインに代わる視覚的連続ライン案も提案した。名古屋市営地下鉄と都営地下鉄六本木駅の構内を終電から始発まで使って、80×250ミリ程の蓄光プレート誘導サインをプラットホームの丸柱の下などに貼付して、災害時の暗闇で、点線状に連続して見とれる誘導効果のデータとサンプルそれに英文レポートを作成し、ベルリン会議で提案した。サブ案として取り入れられた。東京の地下鉄構内で床面に明示物と呼ばれるタイルの誘導サインが施工されているのは、筆者に無断で日本の蓄光材メーカーが東京消防庁に持ち込んだ結果である。 
       
      2004年に国際規格化されたISO16069を国内導入するまでに3年程が経過した。世界の蓄光材の70%を占める上記メーカーを含む産官学の国内委員会が、永年の筆者の反対に配慮して状況を静観してくれた結果であり、感謝している。 
       
      国内導入の地鳴りを感じ、JIS原案作成委員長を指名されて、最初に挑戦したのがライン幅と輝度の関係式の見直しであった。国際規格では2乗式になっており、幅を1/2にすれば4倍、1/4なら16倍、1/10では100倍の輝度が求められる。技術的に細くすることがほぼ不可能と言える。 
       
      予算もない中、筆者はポケットマネー100万円を拠出して公共施設のホールに廊下や階段をつくって暗闇にし、被験者100名の実証実験を実施して、2乗式の妥当性を検証した結果、1乗式でよいことが判明した。幅を50ミリにするなら輝度を2倍にすればよい。幅20ミリなら輝度が5倍あればよい。 
       
      参考実験では、幅を5ミリ、3ミリ、1ミリまで細くして、暗闇での視認性と誘導性を調べた。いずれもその効果は十分で、幅木の上に取り付ければ昼夜間ともインテリアを損ねることがなくなる。極細ラインであっても、廊下の方向や階段のステップは明確に視認できるし避難できるのだ。国際規格の2乗を削除して大幅に改善したJIS Z 9095(避難誘導システム-蓄光式)が完成した。 
       
      ニューヨークの超高層ビル200棟にISO16069を施工し終えた米国代表委員J.ペックハムが来日した際、JIS Z 9095のバックデータと5ミリ幅の蓄光ラインサンプルを示して説明した。「すばらしい!アメリカは今後、日本のJISを使いたい!」と明言した。 
       
各国代表とISO16069を審議していた当時、総務省消防庁に2回でかけて消防行政の意見を求めた。「非常口に避難する日本の手立ては電気式で整えている。余計なことはしてくれなくてよい。」と言われた。JIS Z 9095が制定された2014年1月、六本木ヒルズでその説明発表会を開催し、消防庁も出席した。その時はすでに、JIS Z 9095が消防法に取り入れられていた。霞ヶ関の本省で見た消防庁の廊下と階段には全て、非常口まで連続して続く幅20ミリ程度の蓄光ラインが取り付いていた。インテリアを損ねる度合いは少なかった。けれども毎日勤める職場のそのライン幅が100ミリで囲まれていたとしたら、いかがなものであっただろうか。 
代替え案も数案提案した。 
 
 
      
      
        
          
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            | 5mmと1mm幅でも視認できた実験 | 
           
        
       
      
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        | (Up&Coming '16 秋の号掲載) | 
       
      
        
        
         
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