ラウンドアバウト |
■ラウンドアバウトとは
日本の交差点は、道路交通法2条1項5号で、「十字路、丁字路(T字路)その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分」と定義されています。
ラウンドアバウト(Roundabout)とは、交差点形状の一種であり、環状交差点中心における「中央島」の周りを走行車両が優先して周回する交差点形状のことを指しています。2010年現在、日本には、ロータリー交差点と呼ばれる構造しかありません。ラウンドアバウトは、主に、イギリスやドイツのような欧米諸国で普及しています。
ラウンドアバウトでは、進行方向が異なる車両や歩行者が交差点上で出会う錯綜点が一般的な平面交差点より少なくなっています。
1)
錯綜点が少なくなると、特に、多重交差点および右左折進入や右左折流出による交差点事故が少なくなります。その理由は、流入車両に対して、環道車両の走行における優先権の明確化がはっきりしているためであります。
2) 3)
中央島の設置により、平面交差点と比較すると、交差点としての認識をより分かりやすく行うことが出来ます。ラウンドアバウトの利用者は交差点内における優先順位が明確に決まっているため、交差点内での運転については、容易な判断が可能となっております。
ラウンドアバウト内の走行車両は比較的低速で、車両間の走行側道の差が大きくないため、事故が発生しにくい。走行車両は、平面交差点の場合と比較すると、ゆっくり走行することが特徴的であり、速度抑制に効果を発揮しています。
環道内に他の車両が走行していない場合、ラウンドアバウトに進入した車両は、待ち時間なしで速やかに交差点内に進入することが可能です。この点は、信号を有する交差点とは大きく異なり、待ち時間が少なくなると、CO2等の排出ガスを低減できます。
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▲ラウンドアバウトのイメージ図 |
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▲錯綜点の比較 1) |
■ロータリー交差点との違い
ロータリー交差点は、中央島の周りを一方向に周回する交差点形状 であります。ここで、ロータリー交差点は、信号が設置されていないので、ロータリーに進入する走行車両は安全を確認して進入する必要があります。
ロータリー交差点の利点と欠点は、以下となります。
<利点>
- ロータリー交差点は、直交交通がありませんので、ロータリー内では走行速度を落とす必要があり、事故率が低くなります。
- 信号が存在しないため、錯綜交通がなければ一時停止することなく通行が可能。信号を設置しないため、維持費が不要です。
<欠点>
- 信号交差点に比べて交通容量が小さくなるため、交通量の多い交差点では不向きです。
- ロータリーを設置する面積が必要であり、用地の制約があるところでは設置が難しい。
- ロータリー交差点は中央島を中心に外回りするため、右折するときに、対向の右折車両と2回交差します。
よって、交通量が多いときに右折すると、対向の右折待車両により自車線を妨げてしまい、交差点内で立ち往生してしまいます。
●ラウンドアバウトとロータリー交差点との違い
ラウンドアバウトは、上記の利点を生かして、欠点を改善したものと言われています。
ロータリー交差点では、ロータリーに進入する車両に優先走行権があり、ロータリー内を走行している車両が進入してくる車両に譲る必要があり、ロータリー内の車両が停滞することによって渋滞の原因となっていました。以上の問題点を解消するために、車両進行の優先度を逆にしてロータリー内走行を優先し交通容量を確保出来るように改良されています。さらに進入部に導流島設置や停止線設置等で「ロータリー内の車両優先」を徹底しています。
■ラウンドアバウトの計画設計ガイドライン(案) 4)
交通工学研究会では、平成18年〜19年度の2カ年で実施された自主研究において、詳細設計に係わる技術的検討を行い、「ラウンドアバウトの計画設計ガイド(案)」として取りまとめています。以下に、その概要を紹介します。
これまで交差点の設計においては、信号制御か信号がない交差点の選択で計画を行っていた。新たにラウンドアバウト方式の手法を取り入れることが可能なようにまとめられています。
第1章では、日本におけるラウンドアバウトの定義が示され、必須構成要素の形式や特徴について整理されています。第2章では、ラウンドアバウトの導入できる箇所について、道路階層区分に応じて提案されています。第3章では、ラウンドアバウトの機能を適切に発揮させるための交差点構造設計について、望ましい方法が示されています。第4章では、運用原則と必要な標識や路面標示について提示されています。
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▲ラウンドアバウトの計画・設計ガイド(案)の構成 |
■参考文献
1) Merkblatt fur die Anlage von Kreisverkeheren 2006 Forschungsgesellschaft
fur StraBen und Verkehrswesen
■ (ドイツにおけるラウンドアバウトの設計ガイドライン)、August 2006
2) ラウンドアバウトの新展開、山田晴利・青木英明、土木計画学研究・講演集No.22、1999年10月
3) 車両間交錯度を考慮したラウンドアバウトと信号交差点の性能比較分析、中村英樹・馬渕大樹、交通工学Vol.41、No.5、2006年9月
4) 日本におけるラウンドアバウトの計画・設計ガイドの検討、中村英樹・大口敬・馬渕太樹・吉岡慶祐、交通工学Vol.44
No.3、2009年 |
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(Up&Coming '10 新緑の号掲載) |
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