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本連載は、株式会社ファーストシステムによる「組込システム」をテーマとしたコーナーです。大手メーカー新規商品、特注品、試作機等の組込システムを約30年間に渡って開発してきた実績にもとづいて、毎回、関連のさまざまなトピックを紹介していきます。
第2回は、IoT化する社会においてますます重要となる生活関連システムの開発について解説します。

執筆 ファーストシステム http://www.firstsys.co.jp

2016年12月にフォーラムエイトと事業統合。VRシステムをはじめとした関連分野における展開を推進。
組込システム開発、マイコンソフトウェアの受託開発、コンサルティングを中心とした事業を展開。

IoTの世界における生活関連システムの品質

IoTの技術が私達の生活に溶け込んでくる時代を迎えようとしています。その中で、生活関連のシステム品質がますます重要となります。株式会社ファーストシステムは、生活関連の組込システムの開発を行っています。今回は、私たちの技術要素でもある生活関連のシステム品質について紹介させていただきます。

システムの品質は利用者の生活のための品質であり、提供するシステムは促進要素です。

そのため、徹底的に生活を分析し、新たな生活を創造することが重要です。提供するシステムは、利用者に笑顔を届ける縁の下の力持ちとして、時には支え、時には導き、時には助けるものです。

ここでは、生活システムの特徴と、提供するシステムの3つの品質視点と、どのように実現するのかについて述べさせていただきます。

生活におけるIoT(Internet of Things)

■生活システムの特徴

利用者は、システムが“あんばい”と稼動してくれることを期待しています。生活関連システムは、コンピュータ室に設置され、専任オペレータに操作されているのではありません。そのため、利用者、利用目的、操作方法、運用の仕方、さらに、利用環境も様々になります。

また、システムは、生活活動の一部であり、多少の不具合があってもシステムを停止することなく、生活を守ることが必要です。万が一、不具合が発生した場合でも、まずは最低限生活に必要な機能だけが、多少、性能を落としてでも、安心、安全に動作することです。


■生活システムの品質要素1 あんばい

“あんばい”とは、利用者に安心・安全を前提に最大の満足と効率を提供することです。

例えば、光センサを用いて、夜間にだけ照明を点灯する道路灯があります。光センサが昼間に故障し、夜になっても照明が付かないことは、安全上許されません。かといって、光センサの故障検出回路を設け、センサを二重化するというコストアップも望まれません。そのため、光センサに不具合が生じた場合、省エネ機能をなくし、安全のために終日点灯するようにします。

1日には、必ず昼と夜があるので、故障検出回路がなくてもセンサの値の変化から安全である点灯に制御することができるからです。このように、“あんばい”を実現するためには、生活を徹底的に把握する技術が必要です。

“あんばい”は、生活システムに重要な品質

■生活システムの品質要素2 感性の時代の企画品質

社会は“モノ”の時代から“コト”の時代にパラダイムシフトし、これまで以上に、感性が重要となってきました。また、社会は複雑化・多様化してきています。もはやアイデアだけで斬新な企画ができる時代ではなくなりました。

近年の開発において、システムの企画の多くが、企画者と設計者ですくみ状態を起こしています。企画者は、斬新な技術の応用可能性が見えないので、潜在的な要求に気付きません。逆に、設計者は、要求が見えないために、技術の応用可能性を明確に提示することができません。

例えば、操作ボタンの品質だけを考えていても、スマートホンの操作性は、生まれなかったでしょう。机やファイルから必要なものを見つけ出すという生活活動を徹底的に追及し、狭い画面でどう実現するかを考えたからこそ感性の品質にたどり着いたといえます。品質項目さえ分かれば、関係者がそれに焦点をあてた議論を行い最適な設計ができます。

そもそも、どの様な品質が重要かという目処を立てずに試作しても、焦点がずれたものを作るだけで、本質に気付くことは不可能です。


■生活システムの品質要素3 生活基盤のライフサイクルを通した品

人々の生活は、日々改善され、変化していきます。今は存在していない、新たなシステムにつながれます。その変化に対応するためには、境界をフレックスに設け、安全安心の防波堤を築くことが必要です。

システムはいつかは陳腐化します。しかし、システムは生活に入り込んでおり、次のシステムがある日突然マジックのように切り替わることはありません。一斉に更新するためには予算も膨大になります。そのため、旧システムを一部リニューアルしながら、新システムに移し変えていく機能も考慮しておく必要があります。


■事例紹介

ここでは株式会社ファーストシステムでのこの一年間の主な開発事例について簡単に紹介いたします。

制御設備の制御中枢部のソフトウェア開発

システムは、場合により安全や健康に影響を受けるものであり、システムの異常停止は、大きなコスト損失につながるものでした。

各種センサが誤動作、故障、または誤った運用をしたときなど、あらゆる想定外の事象と、起こりうる障害の可能性を検討し、お客様と膝をつき合わせて議論し、障害回避の要件を漏れなく定義できました。

当初お客様は、制御ソフト開発と考えられていました。しかし、様々な想定外の事象が発生しても、安全を保障するための運用を含むシステム設計の要件定義漏れをご理解いただくことができ、二人三脚で堅牢なシステムの要件定義を行うことができました。その中で、ソフトウェアではカバーできないお客様のハードウェアの設計変更のご提案にもつながりました。

大容量情報のデータを高速で制御する装置のソフトウェア開発

LANを介してパソコンから組込制御装置に対して、大量の制御情報を瞬時に送る開発依頼を受けました。

LANの通信ビット速度は早いのですが、特定の通信元から特定の送信先の場合、通信以外の処理が全体のほとんどの時間を占めてしまいます。そのままの、依頼内容で性能を実現するためには、大きなハードウェアコストが必要でした。

そこで、お客様の実際の使い方を詳細にヒアリングし、必要な性能の絞り込みを行いました。パソコンの設定操作中に可能なデータを先送りしておき、必要最小限の情報と制御切り替えのタイミングだけを制御実行時に送信する通信方式を提案し、コストを上げずに要求された操作性と性能を実現することができました。


■生活品質を実現するために

ファーストシステムは、企画段階からお客様と一緒になり、利用者に成りきって考えさせていただきます。ファーストシステムは、うるさい、頑固なシステム職人です。様々なシチュエーションを提言し、判断を求めます。様々な、可能性や制約を提言します。しかし、実際に提供システムを使い始めて、よかったと実感していただけます。

私たちファーストシステムは、IoTを用いた未来の斬新な生活をお客様と共にシミュレーションしながら創造していきます。

組込ソフトウェア開発では、ハードウェアを直接制御するため、「そんな事まで考えているの」と仰天されるような機構部の形状や素材の特性、その先の対象の性質や環境など全てを徹底的に分析し、最適な制御を行えることが技術です。華やかな機能が技術ではなく、実はそれを支え実現しているのが組込技術です。もちろん、通信方式、画像や各種アルゴリズムの利用技術はベースとしての技術として有しています。

スマートハウス、HEMS(Home Energy Management System)など様々な企画が進められていますが、私たちの組込技術と融合すれば、安心安全に夢を身近なものに実現することができます。



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