はじめに |
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「(自分たちの活動の中では)CIM(Construction Information Modeling(/ Management))ということ自体をあまり意識していません。(ただ)こういう技術はどんどん進化していくものです。(したがって)それが建設分野のテクニカルなところに閉じ込められるのではなく、私たちの(取り組んでいる)ような地域づくりの分野などに応用されることで、CIMそのものも鍛えられていくだろうと思っています」
建設事業の初期段階から3次元(3D)モデルを導入。一連のプロセスで関係する情報を発展・連携させつつ、それを一元的に共有・活用することにより、建設生産システム全体での効率化・高度化に繋げようという「CIM」。その利用がもたらす効果として期待される一つに、「フロントローディング」機能があります。
これは、上流工程に労力をかけ、後工程で生じそうな仕様の変更などを事前に集中的に検討することにより、当該事業の品質向上や工期短縮を図ろうというもの。例えば、計画や調査、設計の段階から施工や維持管理サイドの視点を反映することで、上流工程での手間はある程度増すものの、後工程での手戻りを防ぎ、トータルとして余分な時間やコストの上昇を抑え、後に起こり得るトラブルを未然に回避する可能性が見込まれます。このフロントローディングの具体化に当たって、バーチャル・リアリティ(VR)技術を用いた多様なシミュレーションが有効な手法と注目されています。
NPO地域づくり工房の代表理事、傘木宏夫氏は「持続可能な社会の実現」を念頭に住民主体の地域づくりに長年取り組んできました。この間、大小様々な建設プロジェクトに関わり、住民説明会やアセスメント(影響評価)活動も主導しています。そこでそれらの経験を通じて得た、住民主体のアプローチの中から生まれてくる地域に根差した創造性への独自の観点に言及。そうした流れを背景に、自ら携わるファシリテーション・シーンにおいて期待されるCIMの可能性へと話を展開します。
本連載はCIMの利活用、関連技術の開発や研究などに先進的に取り組まれている各界のキーパーソンに順次取材。多彩なアングルからCIMの可能性や課題、進むべき展開方向などを紹介します。その第4弾では、CIMのフロントローディングに繋がるファシリテーション活動で多彩な実績を誇るNPO地域づくり工房代表理事の傘木宏夫氏にお話を伺いました。 |
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