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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーの体験レポート。
新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。
製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望の内容など、全12回にわたってお届けする予定です。
【プロフィール】 1959年、広島県生まれ。京都大学工学部土木工学科卒業、ジョージア工科大学大学院工学修士課程修了、京都大学大学院修士課程修了。その後、日本鋼管(現JFEエンジニアリング)、日経BP社を経てイエイリ・ラボ開設。BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」の人気コーナー「イエイリ建設ITラボ」や「建設3次元まつり」などを担当。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp |
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●はじめに 建設ITジャーナリストの家入龍太です。フォーラムエイトの代表的製品である3Dリアルタイムバーチャルリアリティー(VR)ソフト「UC-win/Road」は、道路や街並みを3次元で再現し、その空間内にクルマや人間、信号など、様々な動くものを配置して状況をリアルにシミュレーションするものです。 最近では、3次元空間に時間軸を加えた「4次元」の世界を表現するVRプラットホームとしての性格も強くなってきました。例えば、3次元CADで設計した道路、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)で設計した建物、避難解析ソフトの結果をUC-win/Roadにインポートして、まるで現実の世界を見るように表示させる目的でも、使われています。 9月21日には最新版の「UC-win/Road Ver.5」がリリースされ、オートデスクの土木用3次元CADソフト「AutoCADCivil3D」とのデータ連係機能や、3次元レーザースキャナーの点群読み込み機能、津波解析ソフトとのデータ連係機能などが強化されました。様々な設計ソフトや解析ソフトの結果を、UC-win/Roadに読み込み、合成することで、リアルなVRを見ることができるのです。
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▲UC-win/RoadをWebブラウザから操作できる「UC-win/Road for SaaS」 |
●製品概要・特長
「UC-win/Road for Civil3D」は、UCwin/Roadにプラグインソフト「UC-win/RoadCivil3DPlugin」を組み合わせたもので、「Civil3D」との間でデータ連係を可能にしたものです。
データ連係には、地形データの共通ファイルフォーマットである「LandXML」というデータ形式を使い、「地形」、「道路平面線形」、「道路縦断線形」、「道路断面」の4種類のデータを両ソフトの間でデータ連係することができます。
UC-win/Roadは、走行・飛行・歩行など動きを表現したり、天候や地震、風水害など周囲の環境を変化させたりと、様々なシチュエーションをバーチャルに再現することができます。 一方、Civil3Dは、建築分野で急速に普及しつつあるBIMのような機能を持ったソフトです。道路の盛り土や切り土などを3次元モデルで設計し、そのデータを基に平面図、断面図などの図面やパースの作成、土量計算や数量計算などを行うことができます。設計変更のときは、モデルを修正するとすべての図面や計算書が連動するという整合性も持っています。
UC-win/RoadとCivil3Dが連携することで、それぞれの機能を補完し合うことにより、プレゼンテーションと設計との間でワークフローがスムーズに流れ、設計の生産性は大きく向上します。
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▲LandXMLによるAutoCADCivil3DとUC-win/Road for Civil3Dのデータ連係 |
●体験内容
10月1日の午後、フォーラムエイト東京本社で「UC-win/Road for Civil3D体験セミナー」が開催されました。参加者自身でUC-win/Road
Ver.5とCivil3Dを操作し、データ連係や作図、数量計算などを体験する内容です。 まず、フォーラムエイト技術サポートグループの田代則雄さんが、各ソフトの概要や開発の背景、データ連係仕様などの基本を説明しました。土木分野の3次元プロダクトモデルには旧日本道路公団の「JHDM」やIAIの「IFCBridge」、国内橋梁メーカーが開発した「SYMPHONY」、そして国際的な開発型コンソーシアムによって開発されている「LandXML」があります。
このうちLandXMLは、フォーラムエイトやオートデスクのほか多くのベンダーが協力して活用を推進しており、LandXMLに対応したソフトとの間でもデータ連係ができます。そのため、Civil3Dとのデータ連係にはLandXMLが採用されました。
3次元プロダクトモデルは、建築のBIMモデルと同様に、設計だけでなく調査や測量、積算や施工、維持管理など、将来的には一連の建設ライフサイクルに使うことで、効率的なデータの利活用が実現することができます。
続いて、フォーラムエイト技術サポートグループBIMサポートチームの江間由佳さんが操作体験の講習を行いました。 まずはCivil3Dを起動させて、DWG形式で3次元の等高線データを読み込みます。そして等高線の間に「サーフェス」を張って現地盤面を3次元で表現します。続いて、道路の平面線形を描いていきます。ここまでの作業は、3次元CADを扱っているという感じはあまりなく、2次元CADで作図しているような感覚で進みます。
その後、Civil3Dのメニューから「縦断を作成」というコマンドを実行すると、画面上に道路の縦断図が現れました。続いて、道路の「標準断面図」に相当する「アセンブリ」画面で車線の幅や側溝の種類、盛り土・切り土の法面形状を入力します。 最後に、道路の線形全体に沿ってこのアセンブリを割り当てることにより、自動的に盛り土・切り土の形状を備えた「コリドー」ができあがります。2次元CADで盛り土や切り土の形状を作図するのは大変ですが、3次元CADだとクリック一つで自動的に行えるのには驚きました。 次はこのデータをUC-win/Roadにインポートします。Civil3Dを立ち上げたまま、UC-win/Roadを起動させ、デフォルト地形を読み込んだ後、メニューから「Civil3Dデータエクスチェンジ」というコマンドを実行します。するとダイアログボックスの中に、Civil3Dで描いた道路やサーフェス、アセンブリの一覧表が出てきます。ここでインポートしたい要素にチェックし、路面のマーキングや盛り土・切り土のテクスチャーなどを設定すると、Civil3Dで作成した道路の3次元モデルデータがUC-win/Road上に読み込めるのです。
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▲フォーラムエイト東京本社で開催された
「UC-win/Road for Civil3D体験セミナー」 |
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▲講師を務めたフォーラムエイト技術サポートグループの
田代則雄さんと同BIMサポートチームの江間由佳さん |
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▲Civil3Dで作成した地形、線形、断面情報を
UC-win/Roadに読み込み、VR表示 |
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▲交通流を設定するとドライブシミュレーションも可能に |
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▲Civil3Dで作成した土量計算書 |
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▲Civil3Dで作成したコリドー |
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▲Civil3Dで作成した縦断図 |
その後はUC-win/Roadの機能で交差点を作ったり、ビルや樹木の配置したり、交通流や車種を設定したりしていくと、Civil3Dのデータに基づいたVRができあがっていきます。炎や煙などを使うと交通事故や火事の現場などもリアルに再現できます。 逆に、UC-win/Roadで設計前に作ったVRのデータを基に、Civil3Dで設計を進めていくことも可能です。このときも「Civil3Dデータエクスチェンジ」コマンドを使い、UC-win/Road側で作った道路や地形を、Civil3D側にエクスポートします。
Civil3Dに読み込んだ道路や地形のデータから、平面図や縦断図を作ったり、土量計算を行ったりすることができます。操作体験では、これらの作業を一通り行いました。
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▲3Dレーザースキャナーで渋谷の街並みを計測した
点群データをUC-win/Roadに読み込んだところ |
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▲点群を3Dモデル化する手間なしに、人やクルマ
などを配置するとリアルなVRが手軽に作れる |
●イエイリコメントと提案 UC-win/Roadの新機能で注目すべき点は、3Dレーザースキャナーで計測した道路や街並みの点群データを「点群モデリングプラグイン」を介して、直接取り込めるようになったことです。これは、商店街の改修やまちづくりの合意形成を低コストでスピーディーに行うための強力なツールになるでしょう。 たとえば、MMS(モービルマッピングシステム)という、3Dレーザースキャナーを搭載した車両で道路を走行すると、路面や周辺のビル上の点を無数に、高精度で計測することができます。この点群をUC-win/Roadに読み込んで、道路や交通流、そして新築する建物や構造物の3次元モデルを配置すると、即座に既存の街並みに基づいたまちづくりの計画を精度よく作ることができます。 従来も、既存の街並みを3次元モデルで作成し、その空間上に改修計画を作ることが行われてきましたが、既存の建物をモデル化するのに大きな労力が必要でした。それが、MMSなどで計測した点群のまま処理できるようになると、既存の街並みをモデル化する労力はほとんど必要なくなるからです。 さらに、UC-win/Roadをネットワーク上のサービス「SaaS(Software as a Service)」として活用するため、「UC-win/Road for SaaS」というシステムを使うと、インターネットに接続したWebブラウザーさえあれば、VRで作った街並みをウオークスルーして計画やデザインを確かめることができます。VRでプレゼンするために、大がかりなパソコンやディスプレーを用意したり、一つの場所に関係者が集まったりしなくても、合意形成を図りやすくなります。
●製品の今後の展望 まちづくりや都市計画というと、どうしても道路や公園のデザインや機能に目が行きがちです。これまで、屋台が密集し、人々でにぎわっていた昔からの通りが、美しく整備されたとたんにさびれてしまったという話は誰しもが体験することでしょう。しかし、本当に重要なのは、その街並みや施設を舞台に、人々が実現する生活スタイルそのものです。
これまでの図面やCG、パースでは、整備後の生活をイメージするのが難しかった面があります。UC-win/Roadは、クルマや人が行き交う日常生活や、洪水や津波、火災に遭ったときのまちの状況や人々の避難状況もリアルに再現できます。 建築分野ではBIM、土木分野では3次元設計がこれからますます活用されてくると思います。UC-win/Roadは、様々な設計用CADや解析ソフトの出力結果を統合し、動きで見せるためのプラットホームソフトとしてナンバーワンの地位を保っていくため、これからもデータ連係機能の拡張は不可欠でしょう。国際的にも重要な意味を持つソフトだと思います。
●次回は、「Allplan」セミナーをレポート予定です。 |
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(Up&Coming'10 晩秋の号 掲載) |
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