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Vol.39
スイート建設会計
体験セミナー
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する
「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー有償セミナーの体験レポート
【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp

建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。
新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けしています。

はじめに

建設ITジャーナリストの家入龍太です。建設会社を経営していくためには、しっかりした技術を持ち、きちんとした施工管理を行っていくのはもちろんです。さらにビジネスとして着実に利益を上げていくためには、各現場や会社全体でのお金の流れをリアルタイムに把握していくことが求められます。

小遣い帳の場合は、モノを買ったり、電車に乗ったりして現金を使ったら支出で、お年玉や小遣いをもらったら収入になり、現金の動きがそのまま小遣い帳に反映され、残高も現在、手元にある現金と同額になります。

しかし、企業のお金の流れは複雑です。例えばモノを売ったときも現金と引き替えではなく、まずは納品書とモノを納め、後日、請求書を発行し、最後に納品した相手からこちらの銀行口座に現金が振り込まれます。

そのため、モノを納めたときに「売り上げ」が立つことになりますが、現金は後から入ってくるので、その間、現金が入ってくるまで「売掛金」として帳簿に記録しておき、入金されたときにそれを消し込むという方法で、売り上げと現金の時間差を管理していきます。

また、現金の代わりに「約束手形」というものでもらう場合もあります。約束手形は受け取ってから2〜3カ月後に銀行で現金に換える有価証券です。売り上げが現金や預金の姿になるまでには、タイムラグがあるのです。

そのため、ひどい場合には会社はもうかっているのに、現金が足りなくて支払いができず、“黒字倒産”してしまう会社もあります。

そこで、売り上げから現金の入金までを確実に管理するため、企業では小遣い帳の代わりに「複式簿記」というものを使っています。今はコンピューターの時代ですから、複式簿記ももちろん、パソコンで動くソフトウエアになっています。

さらに建設会社の場合は、売り物である建物や土木構造物を造るのに数カ月から数年と長い期間がかかり、それぞれ別の現場で作業が行われているという、他の業種にはない特徴があり、さらに複雑なお金の管理が求められます。


製品概要・特長

フォーラムエイトの「スイート建設会計」は、建設会社特有のお金の管理をスピーディーかつ正確に行えるように開発されたクラウドサービスです。

クラウドサービスなので、パソコンにソフトをインストールしたり、アップデートしたりする必要はありません。インターネットに接続されたパソコンさえあれば、どこからでも利用することができます。帳票の出力はライセンス分の人数しかできませんが、データを入力する作業には人数制限はありません。

また、クラウドサービスの提供や利用に対して適用されるクラウドセキュリティーの第三者認証である「ISO27017」を取得予定なので、安心して使えます。

スイート建設会計の特徴は、会社全体のお金の流れだけでなく、工事現場ごとのお金の流れも同時に管理できることです。例えば、外注費や労務費などの支出を仕訳入力するとき、「工事コード」を入れることで、工事別に原価管理できます。

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▲スイート建設会計の各種設定画面

一般の会計ソフトは、お金の動きを複式簿記の方法で記録し、帳票などにまとめるだけです。一方、このソフトでは工事ごと、科目ごとに実行予算を登録し、それに対して現在、どれくらいの支出になっているかを管理する原価管理や、進捗(しんちょく)率管理の機能が付いているのが、建設業に向いていると言えるでしょう。

さらにフォーラムエイトのソフトらしいのは、工事の積算に使うソフト「スイート積算」との連携機能があることです。スイート建設会計で材料費や労務費などの実行予算管理を行うと、そのデータをスイート積算の費目別に連携することができるのです。

つまり、スイート積算とスイート建設会計を連携させることで、お金のデータもBIM/CIMと同様に業務と連動してシームレスに処理することができます。

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▲スイート積算との連携機能 ▲スイート積算上で実行予算を設定すると、
 スイート建設会計と連動させられる

また、建設業の会計ルールでは、工事が完成するまでの支出は「未成工事支出金」として扱われますが、完成後は「完成工事原価」に振り替えます。この建設業独特の振り替え処理を自動的に行う機能も備えています。

各工事現場をバックアップするのが本社で行われている様々な業務です。そのコストは「共通工事原価」として、工事の規模などに応じて各現場に配賦する機能も、スイート建設会計は備えています。こうした機能によって、建設業のお金の流れを会社全体の視点と、各工事の視点の両方で管理できるのが、スイート建設会計の強みなのです。

一般の会計ソフトを建設業で使う場合は、「未成工事支出金」や「工事未払い金」など、建設業独特の勘定科目を登録する必要があります。また、工事を完成させるために支出する外注費と労務費とでは消費税の扱いが異なります。

また、それぞれの科目によって資産・負債か、または収益・費用かといった判断を間違えずに入力しないと、後で大変なことになってしまいます。その点、スイート建設会計はこれらの勘定科目をあらかじめ登録・設定してあるので、手軽に使い始めることができます。

使用に当たってはまず、工事の登録を行い、続いて予算を登録します。その後、毎日の作業として材料の仕入れや部品の購入などの支出や入金を「仕訳入力」し、月末には「共通工事原価の配賦・仕訳」と「進捗率の管理」を行います。そして年度末には「決算仕訳」「決算書作成」「年次繰り越し」を行います。

決算期には、一般の会計ソフトと同様に、会社全体の資産内容をまとめた貸借対照表や、会社がどれだけもうかったかがわかる損益計算書を出力できます。このほか、完成工事原価報告書や販売費・一般管理費内訳書、株主資本変動報告書、個別注記表なども出力でき、決算処理を楽に行えます。


体験内容

2018年7月12日、フォーラムエイトの各支社で「スイート建設会計体験セミナー」が開催されました。講師はフォーラムエイト クラウド開発チームの御園 英司さんです。

午後1時半からのセミナーは、スイート建設会計の特徴や機能、建設業で使われる勘定科目の説明など、基本的な説明から始まりました。

続いて、スイート建設会計を使いながらの実習です。初めてこのクラウドサービスを使う建設会社が、ある工事で日々の施工管理、月次処理を行った後、完成するまでを想定した実戦さながらのストーリーを想定。この業務の流れに沿って、スイート建設会計を使いながら会計業務を処理していく手順を、一つ一つ、実習していきました。

▲2018年7月12日に開催された「スイート建設会計体験セミナー」。
  フォーラムエイト東京本社セミナールームにて

まず、スイート建設会計のクラウドシステムへのログインです。あらかじめ受講者にはIDとパスワードが渡されており、それを使ってログインします。そして、システムを使い始めるための最初の設定として、会社の会計期間を入力し、続いて現金や資本金などの開始残高を設定します。

複式簿記では左右の「貸借」の合計金額が常に合っていることが必要ですが、システムは自動的にこのチェックを行ってくれるので、入力にミスがあっても、一番初めの段階で発見できます。

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▲スイート建設会計の操作の流れ ▲複合仕訳入力画面。工事コードを入れることで、工事別に
  複雑なお金の流れを1枚の伝票にわかりやすく入力できる

いよいよ日々の入力に移りますが、スイート建設会計では、「各種設定」「日次処理」「年次決算」という基本的な画面が3つあり、相互にリンクしてスピーディーに切り替えられるようになっています。日々の入力で一番多く使うのが「日次処理」の画面です。 

スイート建設会計では、工事現場ごとにお金の流れを管理できるのが特徴です。日次処理の画面には「工事管理」というボタンがあり、工事番号や工事名、請負金額、完成予定日などを入力します。実習では会計年度内に完成予定の工事を2件、入力しました。

続いて、スイート建設会計らしい、スイート積算と連携した実行予算管理の入力です。両システムを連携させるキーとなるのは、会計単位(実習では「本社」を選択)と工事番号です。セミナーでは概算の費目別管理を入力しましたが、科目別に詳細な予算設定を行うこともできます。

このほか、複合仕訳入力も実際に行いました。これは一般の会社で使う「振替伝票」に、工事別管理の項目を追加したもので、複雑なお金の流れを1枚の伝票にまとめて表現することができます。

例えばある日、ある会社から材料を仕入れたり、労働者を受け入れたりしたとき、現金と当座預金で一部を払い、残りは後日、振り込むといったような取引をシンプルに記録できます。

続いて、月次処理の画面に移って、「共通工事原価の自動配賦」の機能を使ってみました。ボタンを押すとそれぞれの工事の材料費や労務費をどんな割合で各工事に振り分けるかを細かい基準で設定できます。

もう一度、日次処理の画面に戻って、今度は「進捗率計算表」というボタンをクリックして、材料費や労務費の支出額ベースでの進捗率を確認しました。支出額が実行予算の100%に近い数字になっていると、工事が完成したことを意味します。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲スイート建設会計の操作の流れ
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲スイート建設会計の操作の流れ

そこで日次処理の画面にある「工事管理」のボタンをクリックし、工事完成区分を「未成」から「完成」へと変更し、完成日の日付を入力します。すると、工事完成日の複合仕訳伝票が自動的に作成され、これまで「未成工事支出金」として処理されてきた勘定科目が、「完成工事原価」に振り分けられます。

最後に完成した建物などを施主に引き渡した日に、「完成工事未収入金」を「完成工事高」に振り替えることで、会計上、工事の収益として計上できます。会計年度が終わったら、「年次決算」の画面から決算書を作成したり、次年度への繰り越しを行ったりします。これで実習は終わりです。


画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲工事完成日には「完成工事未収入金」を「完成工事高」に振り
  替える伝票が自動作成される
▲スイート建設会計の年次決算画面

イエイリコメントと提案

スイート建設会計の今後の開発予定としては、スマートフォンなどのマルチデバイスとの対応が計画されています。領収書などをカメラで撮影し、その場でアップロードすることで、紙の領収書を台紙に張り付けて整理・保存するといった面倒な業務から開放されます。

また、有料オプションとして、社員の経費精算管理機能を追加することも計画されています。関連商品としてスイート給与計算もあり、労務日報入力やタイムカード連動機能を持っています。2018年12月には出面(でづら)管理機能も追加される予定です。

クラウドサービスのメリットは、インターネットさえあれば、高機能なハードやソフトを用意する必要なく、すぐに目的の機能を使って業務を処理できることです。

建設会社には本社や支店のほか、工事現場という臨時の事業拠点があります。工事期間だけ発生しては消えていく現場では有利です。さらに、クラウドサーバー自体が、社内の情報を1つに集約できる機能を持っている点も見逃せません。

現場事務所はこれまで、独立した企業のような存在であり、その動きをリアルタイムに把握することは、大がかりなシステムが必要でした。しかし、スマート現場会計を使って現場ごとのお金の動きを管理してもらうと、そのデータは本社からも共有でき、全社の資産や損益状況ともに各現場の進ちょく状況までが手に取るようにわかるのです。

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を使った設計業務で今、注目されているのは、クラウドやVR(バーチャルリアリティー)と連携させて、離れた場所にいる人々が「移動のムダ」なく設計のコラボレーションを行えることです。建設業の経営でも、移動のムダがないというクラウドのメリットに再度、目を向けると生産性の向上がさらに図れるように思います。

スマート建設会計は、スマート給与計算などのクラウドサービスと連携することで、移動のムダをさらに削減し、現場の生産性向上に効果を発揮していきそうです。



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