「基礎の設計計算,杭基礎の設計 Ver.1.00.00〜5.01.00」において発生した
不具合についての報告
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2006年6月13日
株式会社フォーラムエイト
サポート窓口 ic@forum8.co.jp
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1.不具合の内容 |
2005年11月、ユーザ様より、「単列杭モデルで、基礎降伏後、水平震度の増加に対して上部構造慣性力作用位置の水平変位の増加量が減少するケースがある」というご指摘を頂き、該当データから調査した結果、本プログラムで行っている杭基礎レベル2地震時計算での荷重増分法のモデル化において、前ステップまでの状態における杭およびフーチング前面地盤の弾塑性状態、杭体の曲げ剛性等を用いて作成した計算モデルに、前ステップからの荷重増分を載荷して得られた変位、反力、断面力等の状態量を前ステップまでの累計値に加算する際、上記方法により求めた現ステップまでの杭体曲げモーメントの累計値に応じて、図3
のように部材ごとの区間を分類し、次ステップの計算に用いる部材の曲げ剛性を、
・O-C区間:図1のO-Cの勾配,C-Y区間:C-Yの勾配,Y-U区間:Y-Uの勾配
・O-Y区間:図2のO-Yの勾配,Y-Y'区間:Y-Y'の勾配
としていますが、図3のU-U区間(Y'-Y'区間)の曲げ剛性を無限大として取り扱っていた、という不具合を確認しました。
なお、杭頭モーメントがMu(Mp)に達した場合、以降のステップでは、杭頭ヒンジ結合としています。
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(1)不具合が内在したバージョン
U-U区間,Y'-Y'区間の曲げ剛性を無限大として取り扱っていたバージョン
基礎の設計計算,杭基礎の設計 Ver.1.00.00〜4.05.02
RC下部工の設計計算,ラーメン橋脚の設計計算 Ver.2.08.00〜3.02.00
U-U区間,Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-UおよびY-Y'の勾配としていたバージョン
基礎の設計計算,杭基礎の設計 Ver.4.05.03〜4.05.05,Ver.5.00.00〜5.01.00
RC下部工の設計計算,ラーメン橋脚の設計計算 Ver.3.03.00〜3.04.00
(2)対策履歴
不具合に関して、以下の修正を行いました。
・基礎の設計計算,杭基礎の設計Ver.4.05.03(2005年11月)
・RC下部工の設計計算,ラーメン橋脚の設計計算 Ver.3.03.00(2005年12月)
U-U区間,Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-UおよびY-Y'の勾配とし、対策が不完全でした。
・基礎の設計計算,杭基礎の設計Ver.4.05.06,Ver.5.01.01(2006年4月)
・RC下部工の設計計算,ラーメン橋脚の設計計算 Ver.3.04.01(2006年4月)
U-U区間,Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-UおよびY-Y'の勾配の1/nとし、n値の入力(1〜1,000,000)を設けました。
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2.不具合の影響箇所 |
橋脚および橋台基礎の変形による上部構造慣性力作用位置における応答変位δFr,δArとなる状態までに、U-U(Y'-Y')区間が発生したとき、δFr,δArとなる状態が正しく算出できていなかったため、以下のフローのハッチング箇所に影響があります。
(1)橋脚基礎:液状化なし
(2)橋脚基礎:液状化あり
(3)橋台基礎
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3.正常値との結果比較 |
U-U(Y'-Y')区間の曲げ剛性を過大に考慮していた影響により、応答変位状態となるときの水平震度,作用力が実際よりも大きくなっていました。
作用鉛直力=Σ(鉛直反力)
作用水平力=Σ(水平反力)
作用モーメント=Σ(鉛直反力×杭頭座標+杭頭モーメント)
の関係より、杭頭反力は、絶対値で比較して、実際より大きく算出されていた傾向にあります。ただし、U-U(Y'-Y')区間が発生する杭としない杭が混在するとき、水平反力の分担が変わり、発生した杭の水平反力が実際より小さくなっていたケースも考えられます。また、この場合、同様に杭頭モーメントの絶対値も実際より小さくなっていたケースも考えられます。
このように、全てのケースで同じではありませんが、多くのケースでは、正常値と比較して以下の傾向にあります。
・鉛直反力が支持力の上限に達していないケースでは、フーチングの回転角が大きく、水平変位が小さくなっていた。
このため、橋脚基礎時の変位照査(回転角≦0.02rad)で安全側の結果になっていた。
・水平反力が大きく算出されていたため、コンクリート杭の場合の杭体せん断照査で安全側の結果になっていた。
・フーチングせん断照査について、鉛直反力が絶対値で大きく算出されていたため、安全側の結果になっていた。
・フーチング曲げ照査について、 以下に、代表的な例での計算例をまとめます。
例1: 図−Aの杭体曲げモーメント分布のとき
比較例 (本例の正常値は、Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-Y'の勾配の1/10,000として算出しました。)
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フーチング変位
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不具合1 |
不具合2 |
正常値 |
備考 |
鉛直変位 δyo(m) |
0.00792122 |
0.0079212 |
0.007921 |
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水平変位 δxo(m) |
0.17994 |
0.18835 |
0.20582 |
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回転角 αo(rad) |
0.015484 |
0.014912 |
0.013729 |
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上部工慣性力作用位置の水平変位
δ=δxo+αo・hu
hu=14.700(m) |
0.4076 |
0.4076 |
0.4076 |
応答変位は不 変 |
不具合1:Y’-Y’区間の曲げ剛性を無限大
不具合2:Y’-Y’区間の曲げ剛性をY-Y’の勾配
不具合の結果は、水平変位が安全側となる小さい値,回転角が安全側となる大きい値で算出されていました。 |
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杭頭反力
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不具合1 |
不具合2 |
正常値 |
杭列 |
1 |
2 |
3 |
1 |
2 |
3 |
1 |
2 |
3 |
鉛直(kN) |
9005 |
1530 |
-5945 |
8728 |
1530 |
-5669 |
8157 |
1530 |
-5098 |
水平(kN) |
1407 |
863 |
863 |
1286 |
857 |
857 |
1105 |
812 |
812 |
モーメント(kN.m) |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
-1491 |
いずれのケースも全杭の杭頭モーメントがMpに達しています。
不具合の結果は、鉛直反力,水平反力ともに安全側に算出されていました。
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フーチング曲げモーメント(kN.m/m)
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不具合1 |
不具合2 |
正常値 |
M |
My |
M |
My |
M |
My |
押込 |
杭列1位置 |
-1723 |
-3389 |
-1646 |
-3389 |
-1530 |
-3389 |
柱前面 |
2882 |
3316 |
2810 |
3316 |
2625 |
3316 |
引抜 |
柱前面 |
-2405 |
-3389 |
-2243 |
-3389 |
-1933 |
-3389 |
杭列3位置 |
1066 |
3316 |
1064 |
3316 |
1038 |
3316 |
降伏モーメントMyには、不具合の影響はありません。
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考察:
本ケースは、全杭の杭頭モーメントがMpに達し、杭頭モーメントに変化がなく、不具合の結果は、鉛直反力(絶対値),水平反力が大きく(安全側に)算出されていました。柱前面においては、鉛直反力の差による影響が水平反力の差による影響より大きいため、押込側の下面引張,引抜側の上面引張の曲げモーメントが大きく(安全側に)算出されていました。また、最前列,最後列の杭列中心位置では、鉛直反力は関係せず、水平反力,杭頭モーメントによる曲げモーメントが算出されますが、杭頭モーメントが不変で、不具合の結果は、水平反力の差による分だけ正常値より大きく(押込み側では上面引張に対して安全側に、引
抜き側では下面引張に対して安全側に)なっていました。
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例2: 図−Bの杭体曲げモーメント分布のとき
比較例 (本例の正常値は、Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-Y'の勾配の1/10,000として算出しました。)
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フーチング変位
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不具合1 |
不具合2 |
正常値 |
備考 |
鉛直変位 δyo(m) |
0.0019366 |
0.0019366 |
0.0019366 |
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水平変位 δxo(m) |
0.049424 |
0.049182 |
0.048882 |
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回転角 αo(rad) |
0.017534 |
0.017550 |
0.017570 |
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上部工慣性力作用位置の水平変位
δ=δxo+αo・hu
hu=14.700(m) |
0.3072 |
0.3072 |
0.3072 |
応答変位は不変 |
不具合1:Y'-Y'区間の曲げ剛性を無限大
不具合2:Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-Y'の勾配
不具合の結果は、水平変位が安全側である大きい値、回転角がやや危険側である小さい値で算出されていました。
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杭頭反力
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不具合1 |
不具合2 |
正常値 |
杭列 |
1 |
2 |
3 |
1 |
2 |
3 |
1 |
2 |
3 |
鉛直(kN) |
4666 |
707 |
-904 |
4666 |
707 |
-904 |
4666 |
707 |
-904 |
水平(kN) |
539 |
474 |
474 |
520 |
470 |
470 |
487 |
466 |
466 |
モーメント(kN.m) |
528 |
584 |
584 |
418 |
495 |
495 |
279 |
345 |
345 |
いずれのケースも1,3列は支持力の上限に達しています。
不具合の結果では、作用力が大なるため、水平反力,杭頭モーメントともに安全側に算出されていました。 |
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フーチング曲げモーメント(kN.m/m)
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不具合1 |
不具合2 |
正常値 |
M |
My |
M |
My |
M |
My |
押込 |
杭列1位置 |
-117 |
-2074 |
-163 |
-2074 |
-213 |
-2074 |
柱前面 |
2074 |
2636 |
2036 |
2636 |
1995 |
2636 |
引抜 |
柱前面 |
-731 |
-2074 |
-688 |
-2074 |
-613 |
-2074 |
杭列3位置 |
-38 |
-2074 |
4 |
2636 |
66 |
2636 |
降伏モーメントMyには、不具合の影響はありません。
考察:
本ケースでは、最前列,最後列の杭が押込み,引抜きの支持力上限値に達し、以降の作用モーメントの増分に対して杭頭モーメントのみで抵抗しています。杭頭反力は、鉛直反力に変化はなく、不具合の結果は、水平反力,杭頭モーメントが大きく(安全側に)算出されていました。フーチングの曲げモーメントへの影響は、水平反力,杭頭モーメントの差によるもので、本ケースでは、水平反力の差による影響よりも杭頭モーメントの差による影響が大きいため、押込側では下面引張に対して安全側に(上面引張に対して危険側に),引抜側では上面引張に対して安全側に(下面引張に対して危険側に)算出されていました。
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4.現行製品での対応 |
本不具合につきましては、前述の対策履歴に示しました、
・基礎の設計計算,杭基礎の設計Ver.4.05.06,Ver.5.01.01(2006年4月)
・RC下部工の設計計算,ラーメン橋脚の設計計算 Ver.3.04.01(2006年4月)
以降の製品より、U-U区間,Y'-Y'区間の曲げ剛性をY-UおよびY-Y'の勾配を1/nとし、n値の入力(1〜1,000,000)を設けることで対応しています。
また、n値が大きく、全杭の地中部にU-U区間,Y'-Y'区間が生じたとき、僅かな増加荷重により変位が激増し、データによっては応答変位となる状態(上部構造慣性力作用位置の水平変位=応答変位)が求まらないケースがあるため、
・基礎の設計計算,杭基礎の設計Ver.4.05.07,Ver.5.01.02
・RC下部工の設計計算,ラーメン橋脚の設計計算 Ver.3.04.02
で、n値の初期値を10,000とし、応答変位となる状態が求まらないときには、計算実行時にメッセージを表示するようにしています。
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5.不具合の対応 |
本不具合につきましては、ご利用いただいているユーザ様も数多く、影響が大きいことから、このたび、詳細をレポートし、報告させていただくことといたしました。通常、不具合のご案内については、対策版リリース後、3日以内に「FORUM8 Products Information」(保守メール)に配信させていただいております。その他、影響の大きい不具合については、対策版対応中であってもホームページでその状況をご案内しております。不具合対策製品は、ユーザ情報ページからいつでもダウンロードしてご利用いただくことができま す。
本レポートに関するご質問は、「サポート窓口」にて承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。
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今後も弊社では、製品の品質確保に向けてより一層改善を図ってまいりますので何とぞご理解のほどお願い申し上げます。
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