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ユーザ紹介第59回
第一復建株式会社
Daiichi Fukken

第一復建株式会社のホームページ
http://www.dfk.co.jp

設計への付加価値創造と新事業化を拓く3次元リアルタイムVR

 今回は、福岡市に本社を置き、さらに東京支社と大阪支店をハブとして張り巡らせたネットワークにより全国展開を進める総合建設コンサルタント「第一復建株式会社」をご紹介いたします。
 フォーラムエイトの各種製品をご利用いただく中で、同社がとくに現在、その可能性に注目するツールが「UC-win/Road」。そこで、設計業務への付加価値創造や新事業に向けたキーツールとしてその積極活用を図ろうという同社道路構造部部長の緒方英雄氏と、実際にUC-win/Roadを使った業務を指揮する情報管理室主任の陣内(じんのうち)和久氏にお話を伺いました。
■8月に本社を統合移転

 第一復建株式会社は、戦後の荒廃からの復興を目指して1946年に設置された社団法人復興建設技術協会九州支部事務所を前身としています。その後、同協会九州支部の事業を引き継ぐ形で、1959年に株式会社九州復建事務所を設立。さらに、地元九州をベースに東京や大阪など全国的な営業展開を拡大・強化する流れの中で1972年、現在の社名に改称されたわけです。
 もともと測量業務を中心にスタートした同社は現在、(1)道路・トンネル (2)鋼構造・コンクリート構造物 (3)河川・砂防 (4)下水道 (5)都市計画・公園・造園・区画整理等 (6)港湾・漁港 ― などに関する調査・計画・設計をはじめ、社会基盤施設の維持管理、環境に関する調査・分析・評価、地質の調査・解析、施工管理、GIS ― など広範な分野をカバー。福岡・東京・大阪の各拠点のほか、全国18支店・事務所にわたって、社員317名(そのうち、コンサルタント部門の技術職192名、技術士53名など)を擁するに至っています。
 同社は今年8月1日、本社を新社屋ビルへ統合移転。併せて、本社機構の組織を改めます。これは、これまで二ヵ所にまたがっていた本社機能を諸岡DFビル本館(福岡市博多区諸岡1-7-25)に集約し、事業のいっそうの効率化を目指そうというものです。


■マーケティング指向の流れと「KMシステム」活用

 「主に公共事業を対象とする土木建設業界であっても、マーケティング指向の考え方に立って独自性を発揮していかなければ、今後は生き残っていけないとの発想がありました」
 現在、同社が力を入れているIT(情報技術)の有効活用に関する主要な取り組みの一つに、「KM(ナレッジ・マネジメント)システム」があります。
 これは、社内において「知」を共有化することで、コスト削減や必要な情報を探すための時間短縮、さらに将来にわたって利用可能な独自ノウハウのデータベース化を目指そうというもので、2003年度にシステムを構築。以後、膨大な過去の事例や社内で作成した技術計算のフォーマット、顧客情報などを同システムに蓄積する作業が続けられています。
 今後は同システムのいっそうの高度化および情報の拡充を進め、ゆくゆくは、同社の技術担当者が顧客先でソリューション提案などをする際に、例えばノートパソコンを使ってリアルタイムで必要な情報にアクセス可能な「いつでも、どこでも、社員の誰でもが利用できる」KMシステムを実現したいとしています。
 つまり、業界を取り巻く新たな競争状況の中でさまざまな経営戦略を築いていくベースとして、更なる生産性・効率性の向上とともにITの高度活用とリンクした顧客ニーズへの対応、すなわち、マーケティング指向の展開を求められる流れがあった、と緒方英雄氏はIT重視のアプローチに至った背景を振り返ります。


■Roadをキーに新たなビジネス展開へ

 「マーケティング指向の延長上で、『UC-win/Road』の活用性にも着目したわけです」
 従来の設計に付加価値を付けたい。では、それをどのように具体化するか。その一つの解として、3次元リアルタイムVRソフトを用いることで設計成果の完成イメージをシミュレーションし、他社とは異なるインパクトを与えられるのではと考えられました。その上、それがもたらす顧客との優れたコミュニケーション機能は、それ単独でのビジネス化をも可能にし、しかもその付加価値の部分が事業化へのアピールにもなり得る。緒方英雄氏は、付加価値向上と同時に新たな事業チャネルという両面かつ不可分のメリット実現への可能性につながった、と語ります。
 従来のように紙の平面図・断面図だけでは、とくに一般の地元関係者には分かりづらい。それが、UC-win/Roadを使えば仮想空間として実物に近い状態を直感的・視覚的に示すことが出来る。それであれば、その合意形成あるいは関係者への説明プロセスに同ソフトを利用し、効率的にシミュレーション・データを作成することへのニーズはあるはず。そのため、まずは九州を中心に先発企業の優位性を確立しようとの考えに至ったといいます。
 同社は三年ほど前にUC-win/Roadを購入。その後、前述のような付加価値化に向けて実績を重ねる過程で、単独事業化の構想を具体化。今年1月には事業化の第一号として、新規路線の計画・設計に伴う走行シミュレーションを作成し、地方公共団体向けに納品しています。
 今回納品したシミュレーションデータでは、最低限必要な環境設定をとの要望もあり、それでも道路から200〜300m程度の沿線であれば、計画段階の道路がどのように見えるのかの把握は可能。コストとの兼ね合いはあるものの、「例えば、樹木や家の配置などに手間を掛ければ、よりリアルに表現できるはずです」と、陣内和久氏は説明しています。


■場所を選ばずに見られるということ

 UC-win/Roadのこうした用途におけるとくに優れた機能について、緒方英雄氏はまず、「地元の方の視点で、場所を選ばずに見ることが出来る」点を挙げています。
 つまり、合意形成などのシーンでは、道路を作る側というよりもむしろ、それを日常的に見たり使ったりする(専門家ではない)エンドユーザがそれぞれの視点で、将来出来上がるものを事前に把握できるということが重要となります。
 「私の家からはどげん見えるとね」
 「ちょっと待ってください。お宅さんの家はどのへんね」
 「ああ、そんな感じになるとばいね」
 ― といったやり取りも、このUC-win/Roadであれば可能になるというわけです。
 また、設計との絡みからは、線形計画の適性の評価が出来ることも挙げられます。
 一方、CGにより3次元のデータを作成するとなると、従来のやり方ではコスト面でかなり高額にならざるを得ませんでした。しかし、UC-win/Roadを使うことで、例えば、ポイント的な空間表現であれば、前述のように設計の付加価値として企業努力で吸収可能なレベルに納めることも可能になるわけです。


■新たなターゲット

 道路構造部としては今後、設計業務の付加価値としての側面はもちろん、UC-win/Roadを使った単独事業の営業展開に力を入れていくとしています。
 それに関連して陣内和久氏は、現在の道路あるいは橋梁を中心とする取り組みを成功事例とすることで、将来はその対象分野を河川や港湾、都市計画など他の部門にも広げられるものと見ています。
 緒方英雄氏はさらに、合意形成のためのアプリケーション・データを提供するのみならず、自身によるコーディネーターあるいはファシリテーターといった合意形成に直接関与する事業への展開をも視野に入れています。
 こうした取り組みと並行し、同社では、今後の3次元設計へのニーズの高まりを睨んでそれに対応する人材育成、基盤作りに力をいれていく方針です。
 加えて、全社的なネットワークを活用してe-ラーニング・システムを導入。3次元設計の人材育成をはじめ、情報セキュリティなどの社内教育の効率化に活用していく予定とのことです。
 お忙しい中、取材にご対応いただいた関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。

▲第一復建株式会社 本社ビル


▲道路構造部 部長
  緒方英雄様


▲情報管理室 主任
  陣内和久様


▲説明用データ


▲盛土シミュレーション


▲坑口検討シミュレーション


▲橋梁景観シミュレーション




     
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