Q4−1. |
プログラムの適用基準について |
A4−1. |
本商品の場合、プログラムの適用基準を判断するに際して大きく2項目について判断する必要があろうかと思います。1つは「弾塑性解析法の考え方」、1つは「側圧や地盤バネの計算方法」と考えられます。
(1)弾塑性解析法の考え方
本プログラムで採用した弾塑性解析法は、「道路土工−仮設構造物工指針 平成11年3月 社団法人日本道路協会(以下「仮設指針」と略す)」P104でプレロードを実施する場合の解析法として紹介されている土木研究所の方法「建設省土木研究所:大規模土留め壁の設計に関する研究、土研資料第2553号、1988.3(以下「土研2553号」と略す)」です。「大深度土留め設計・施工指針(案)
平成6年10月 財団法人 先端建設技術センター (以下「大深度指針」と略す)」では「解析法U:背面地盤を弾塑性バネとして評価する方法」として記述がなされています。よって、「仮設指針」「大深度指針」は適用基準と考えられます。いずれの指針においても「より精密な解析を必要とするような場合」として提示されている方法ですから、適用範囲は拡張されたものと思われます。しかしながら、他の基準類につきましては当方では判断いたしかねますので、ご自身で確認してください。
なお、Ver1.01.00フル機能版から、解析法T(中村・中沢の方法)でも検討できるように機能を追加しております。こちらの製品をご使用の場合は、仮設指針p.100の解析モデルと同等のモデルを扱う基準類についても対応可能とお考えください。
(2)側圧や地盤バネの計算方法
仮設指針、「トンネル標準示方書 開削工法編・同解説 1996.7 土木学会(以下「トンネル示方書」と略す)」、「共同溝設計指針
昭和61年3月 社団法人 日本道路協会(以下「共同溝指針」と略す)」に関しては、適用基準として扱うことができると判断しています。また、「設計基準(案)土木設計編
平成4年4月 日本下水道事業団 (以下「下水道指針」と略す)」、「首都高速道路仮設構造物設計基準 平成2年10月 財首都高速道路厚生会」についても、側圧、地盤バネの考え方はカバーしています。
「山留め設計施工指針 1988 社団法人 日本建築学会(以下「建築学会」と略す)」に関しては、全層ランキン土圧でよいとお考えであればカバーしています。
ただし、建築学会に限らず、「側圧係数の直接入力」をサポートしていますので、入力の手間を勘弁して頂ければ、ある程度の条件に対応できると考えられます。
なお、Ver1.01.00フル機能版から、「山留め設計施工指針 2002 社団法人 日本建築学会(以下「建築学会平成14年」と略す)」に対応しています。 |
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Q4−2. |
塑性領域が多層に生じても解析可能か? |
A4−2. |
可能です。本プログラムは、地盤の要素を点として捉え、地盤バネは集中バネとして評価します。よって、弾塑性解析計算では地層を認識するのではなく、計算ポイント毎の地盤バネについて弾塑性解析を行いますので、塑性化が多層に生じることは十分考慮することが可能です。 |
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Q4−3. |
逆解析は可能か? |
A4−3. |
逆解析(例えば、実測値である変位反力から土質定数(土性)を逆計算するような機能)はサポートしていません。同様に、プレロードや地盤改良の自動決定機能についてもサポートしていません。 |
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Q4−4. |
根入れ不足時の自動根入れ延長機能はあるか? |
A4−4. |
ありません。本プログラムでは壁体全長(根入れ長)を入力条件としており、この壁長に対してのみ各種解析を行います。現時点では、設計者がこの壁長を変更しては計算を実行し、その解析結果から適当と考えられる壁長を決定するというマニュアル操作で対応してください。壁長に関しては、根入れに関する安定計算結果や弾塑性解析結果である変位、弾性域長などが判断材料になるものと考えられます。 |
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Q4−5. |
背面土砂形状(法担ぎ形状)の入力並びに上載荷重の計算機能はあるか? |
A4−5. |
「法面の影響による上載荷重の計算」機能がありますが、仮設指針P365の参図8−12に示すように壁体先端から崩壊面を定義するのではなく、最終掘削位置から崩壊面を定義していますので、使用に際してはそれらの相違点に注意が必要です。将来的(工期は未定)には対応を検討していきたいと考えています。 |
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Q4−6. |
突出モデルに対応しているか? |
A4−6. |
対応しています。同時に突出区間に水位のある、いわゆる水中掘削状態にも対応しています。なお、出力結果などできちんと突出区間の作用荷重などが印刷できていない点につきまして、いましばらくお時間を頂きたいと考えています。 |
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Q4−7. |
切りばりの盛替えの設定はできるか(例えば、3段梁設置後に2段梁の位置を変更する)? |
A4−7. |
対応できません。 |
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Q4−8. |
斜めの切り梁を施工するとき(左掘削側の1段目を右掘削側の2段目で受ける)は入力出来ないのか?又どう考えているのか。 |
A4−8. |
斜めの切り梁(左掘削側の1段目を右掘削側の2段目で受ける)は両壁モデルでは検討(入力)できません。
計算するためのモデル化については、検討すべき状況が、どうしても左右の壁の挙動が非対称であることが明確である、すなわち、切ばりの中心線が移動するような挙動であるならば、両壁モデルで解析する必要があります。よって、この場合は本プログラムでは入力できませんので、誠に申し訳ありませんが、別プログラムの検討の必要があろうかと思います。
しかしながら、片面で別々に解析してもよいと判断できるのであれば、斜め支保工のバネ強度を計算し、この値を直接入力することで、左壁、右壁を単独に解析するなどで検討を加えることはできると思います。おそらく、今までは、そのように単壁モデルで検討していたのではないでしょうか。 |
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Q4−9. |
自立時3mの検討を弾塑性法で行いたいが、制限事項等あれば教えて欲しい。 |
A4−9. |
特にないものと判断しています。
ご質問の背景には、仮設指針などで、弾塑性法を取り扱う掘削深さが、10.0mより深い場合としていることから、何らかの制限があるのではないかと危惧されているものと思われます。しかしながら、10.0m以上掘削するためには、ご質問のような掘削深さ3.0m程度の自立状態を含めて、10.0mより浅い状態の架設ステップでの解析を行う事が必要です。弾塑性解析方法そのものは、掘削深さによらず同じ理論で解析しており、掘削深さ10.0m未満の比較的若い掘削次数における弾塑性法による解析結果が、過去に、問題視されたことがないことからも、問題はないものと考えています。 |
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Q4−10. |
弾塑性法時に側圧係数を直接入力する方法は? |
A4−10. |
側圧係数を任意設定するには、[考え方|弾塑性法]の「□土圧係数の直接入力をする」にチェックマークをしてください。その上で、[地層|地層]において、各種の土圧係数をすべて直接入力して下さい。
一度この設定を選択せずに土圧係数をプログラム内部で計算させておいた結果を参考とした方が良いかと思います。
[計算書作成]にて、弾塑性法の検討条件から[側圧・地盤バネ分布表]、[側圧に関する詳細表]を選択し印刷プレビューなどを実行し確認下さい。 |
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Q4−11. |
弾塑性法に於いて弾性域率(%)の判定があるが、指針ではふれておらず何%以上が妥当なのか。又、何か規定があればお教えて欲しい。 |
A4−11. |
[基準値|設計用設定値|安全率]の50.0%の出典根拠は首都高速道路基準(平成2年10月)です。ご指摘の通り、仮設指針では弾性域率については特に触れられていませんが、当方としては、根入れ長の決定にあたり、なんらかの判断材料になるのではないと思い照査を行っております。なお、弾性域率の算出方法等につきましては、ヘルプ[計算理論及び照査の方法]−[弾塑性法編]−[弾塑性法の概要]−[弾塑性解析による弾性域長の照査について]に記述していますので、そちらを参考にしてください。 |
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Q4−12. |
弾塑性解析における撤去時の検討は、最終掘削時のみでなく仮想盛替え支保工の段数を増やすことにより、施工段階ごとの撤去時照査が可能であると考えてよいか。 |
A4−12. |
そのように解釈して頂いて結構です。
下から順番に切ばり支保工を撤去したならば、必ず下から順番に盛替え支保工を設置するという原則をお守りください。 |
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Q4−13. |
定常性から定まる根入れ解析方法について
土留め壁の根入れ長を決定する方法として、「首都高速道路公団仮設構造物設計基準」(H2.10)では「土留め壁の応力・変形及び切ばり軸力の定常性から定まる方法」を提示しているが、本プログラムは、この方法に対応しているか?DOS版でサポートしていた定常性判定グラフ作成機能は、サポートしていないのか? |
A4−13. |
可能です。[考え方|照査項目]の「□弾塑性法による定常性の検討を行う」にチェックマークをしてください。当然の事ながら、[詳細入力|適用基準|弾塑性法]は、設計しない以外(何らかの基準を選択した状態)でなければなりません。また、[考え方|照査項目]の□弾塑性解析時に断面変化を行うにチェックマークが付いている場合は定常性の検討はできません。[結果確認]ボタンで通常の設計が支障なく終了しますと、定常性に関する条件入力画面が表示されます。
余談ですが、この解析方法については以下のような指摘もあります。
「開削トンネル設計指針(試案)H8.11阪神高速道路公団」では、この「定常性」について、多層地盤や軟弱地盤の場合は、根入れを長くしても山留め壁の応力や変位が一定の値に収束しない場合があることや、収束したとしても、曲げモーメント、変位、軸力のそれぞれの収束状況が異なり、設計者による収束位置の判断が、曖昧になる場合があるとして、根入れ長の決定要因とはしなかったとあります。このあたりの見解が現在、どうなっているかは不明ですが、本プログラムの最優先文献である「仮設構造物工指針」でも特に取り上げられてはいませんでした。参考まで記述させて頂きました。 |
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Q4−14. |
弾塑性解析により各段階の変位量は評価されるが、これに対する許容値はどのように考えるのか? |
A4−14. |
解析方法が、慣用法であろうが弾塑性法であろうが、基本的な許容値の考え方は、大きく異なるものではないと思われます。しかしながら、仮設指針においても、特に、弾塑性法で照査を行った場合の許容値を明記している箇所がないことから、本プログラムにおいても、弾塑性解析時の変位に関しては、許容値に対する判定は行っていません。
変位量の規定については、仮設指針では、p.26(3)土留め壁の応力および変位で、「土留め壁に過大な変形を生じて、周辺地盤が沈下することのないように設計する」とあり、具体的な許容変位量の記述としては、
(1)p.92(3)鋼矢板の剛性の検討
p.94に「以上のように求めた鋼矢板の最大変位量は、0.3m程度を目安とする。」という記述がある。
(2)p.151(3)土留め壁頭部の許容変位量
自立式の記述ですが、「掘削深さの3%を目安とする。」という記述がある。
以上の2箇所ぐらいではないかと考えられます。よって、これらを参考に、設計者の判断で、許容変位量を規定して頂きたいと考えています。 |
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Q4−15. |
弾塑性法による土留壁の計算における切ばり反力の算出式の詳細は印刷できるか。また、切ばり反力の算出式を調べたが、これはと思われる式を探せなかった。参考資料があれば教え欲しい。 |
A4−15. |
反力も含めて、変位、断面力の算出式の詳細印刷並びに算出式そのものは申し訳ありませんがありません。無論、親切な入門書でもあれば理論式の説明はあるかと思いますが、当方では、残念ながら、提供できる資料はありません。
弾塑性解析は、最終的には、格点バネを考慮した、いわゆる弾性床上のはり理論による構造計算を行っているわけです。具体的には、土留め壁を1本の有限長の弾性はりとして、これに、地盤バネや支保工バネを格点集中バネとして考慮し、各種の側圧を荷重として載荷した骨組構造面内解析結果が、ご質問の反力であり、変位であり、応力なわけです。ですから、片持ちばりや単純ばりといった比較的簡単な構造モデルで、かつ、荷重も集中荷重や等分布荷重といった簡単な場合を想定した、構造力学公式集などで示される算定式で表現できるものではないことをご理解ください。 |