株式会社 フォーラムエイト 代表取締役社長
台湾デジタル担当大臣
講演内容
講師プロフィール
東北大学災害科学国際研究所所長、津波工学研究分野 教授
講師プロフィール
グリニッジ大学 火災安全エンジニアリンググループ(FSEG)教授
講師プロフィール
建設ITジャーナリスト
講師プロフィール
初めにタン大臣はパンデミックの危機の中で、台湾ではデジタル化を伴う社会変革によって民主化が加速し、官民部門間の協力が深まっている、と発言。政府が「国民のために」だけでなく「国民とともに」改革を進めていくには、国民を信頼することが大切で、そうしなければ国民の信頼を得られない。だから国民を新技術に適応させるのではなく、国民が必要とする技術を導入する、という視点が重要。たとえば、同国の接触確認システムが民間のシビックテック・コミュニティG0の提案により実現していることに触れ、公共と民間のパートナーシップによって強靱なデジタル社会インフラの構築が可能になる、と締めくくりました。
その後、「津波などの災害に対して行政はどう備えていくべきか」というテーマに沿って、今村教授は、10年前の東日本大震災で津波警報システムの第1報の津波予測が過小だったため避難が遅れた経験から、災害直後の情報は全体を把握しづらく、時間が経つと高精度になるが避難に間に合わないというトレードオフの関係を指摘。
続いてガリア教授より、自然災害に対しては一般の人たちへの教育と訓練を含む堅牢な計画が必要で、シミュレーションは大きな役割を果たす。また、一般住民は技術者や官僚の思った通りに動くとは限らないため、彼らがどのように自然災害に反応し行動するかを考慮してシミュレーションを作成する、と強調。また、わかりやすい災害警報や避難標識への改善と、それらの意味を人々に理解浸透させる必要性を説きました。
三者共通して子どもの防災教育の重要性に言及。今村教授は、過去の津波の教訓を学んだ小学生が、東日本大震災では周辺住民の早期避難をサポートした事例を紹介。またタン大臣によると、台湾で子どもは大気質や水質などに影響する複合的な要素を段階的に学ぶほか、参加型アプリを利用して楽しみながら防災や環境を学ぶ。18歳以下の若者が防災などにもっとも熱心に取り組む年代層だ、と報告。ガリア教授は、子どもたちに教えると彼らが親や大人に教えてくれるため、子どもの教育は社会の強靱化につながる、と指摘。最後に、今村教授が災害コミュニケーションの国際的な標準化による共有、ガリア教授は防災計画に一般市民の意見を聴いて組み込むことが彼らの心の備えになること、タン大臣は官民連携によるアイデアの共有などを提唱しました。
グリニッジ大学 火災安全エンジニアリンググループ(FSEG)教授
講演内容
講師プロフィール
自身の組織や研究内容、そこでの避難シミュレーション「EXODUS」や火災シミュレーション「SMARTFIRE」の開発などを紹介。これを受けて、1)火災などで避難の支援が必要なPRM(モビリティの低下した人)向け移動支援機器について、実験で得た各種機器のパフォーマンス情報を使いbuildingEXODUSでシミュレーション。さらに、物理的装置の明示的なモデリングに当たり空間的・運動学的制約、ホロノミックデバイス・非ホロノミックデバイス、空間構成を考慮。複雑な空間における各デバイスの制約を反映した最適なソリューションを開発、2)従来型標識の課題を踏まえ、実験や測定を経て開発したアクティブダイナミックサイネージシステム(ADSS)と従来型標識をEXODUSでシミュレーション。ADSSの有効性を確認、3)高層ビル建設現場からの避難の様々な課題を数値化するため、実際の現場で実験。反応時間や避難時間などの、避難経路の状態や昇降機の有無に応じた違いをモデル化、4)大規模都市災害向けに開発したurbanEXODUSを多様なモデルとリンク。大規模火災での歩行者やクルマの避難をシミュにレーション、5)最近開発したmatEXODUSを使い、混雑した場所を歩き回る武装テロリストの影響をシミュレーション、6)電車内や歩行中の新型コロナウィルス感染のメカニズムを解明するためSMARTFIREをアレンジしてエアロゾルをシミュレーション ― するなどした取り組みを説明。安全・安心な避難あるいは感染制御を確実にする計画での、EXODUSやSMARTFIREなど先進のシミュレーションツールの有用性に言及しました。
一般社団法人レジリエンスジャパン 推進協議会 常務理事
講演内容
レジリエンスジャパン推進協議会について
岸田文雄首相の所信表明演説(2021年10月)などにおける国土強靭化、新しい資本主義実現本部の緊急提言(同11月)における「デジタル田園都市国家構想」の位置付けに言及。次いで、これまで大災害を教訓とする防災・減災対策が深化し国土強靭化の考え方に至った経緯、近年の自然災害頻発、国土強靭化基本法や推進体制などを巡る流れ、国土強靭化で警戒対象として描く大規模自然災害、それらの発生や被害の可能性を整理。国土強靭化における事前防災対策の重要性、国土強靭化推進の枠組み、関係予算の推移、そこでウェートの高い5カ年の加速化対策のポイントとDX関連施策の位置付けについて概説。
その上で、国土強靭化への民間の取り組み推進を担うレジリエンスジャパン推進協議会設立の推移、その組織体制、役割と活動、その一環としてのレジリエンス認証制度やシンポジウムおよびアワードの運営(フォーラムエイトの「第7回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)初代国土強靭化大臣賞」受賞)、ワーキンググループによる政策提言とそれらの国土強靭化年次計画への反映へと展開。最後に、2021年に行われたDXに関連する各会議・研究会での検討内容と成果を説明しました。
統括官 国民向けサービスグループ グループ長
講師プロフィール
これを受けた同講演の後半は、デジタル庁統括官 国民向けサービスグループグループ長の村上敬亮氏にスイッチ。企業の新製品・新サービス投入や設備・研究開発投資における日本と世界の対比、日本企業の売上が増加する中での労働生産性伸び止まり、貧困率上昇や給与下落の実情を整理。それを受けて、自助(民間事業:特定ユーザーの完全競争)と公助(公共事業:不特定多数の公共インフラ)の間に共助(データ連携基盤、自動走行車両など:特定多数)を位置付け。これまでは複数分野のサービスが繋がるデータ連携基盤において、APIエコノミーでサービスよりも基盤自体に多く利益をもたらすメカニズムだったのを、サービス側によりチャンスを広げる仕組みへの変革を強調。その具体像として自身が担う「デジタル田園都市国家構想」のイメージを提示。その核となる、特定多数の事業者が官のサポートを得ながらお互いに相互運用性にコミットして使うオープンな基盤の構築が、停滞する日本を再び世界最先端に立たせるカギになる、との考えを解説。基盤となる枠組みは国とともにつくり、その上でそれぞれ個性のある地域、あるいは共助のコミュニティをいろいろなレイヤで作っていくというアプローチへの展開を説きます。
秋田大学 学長
講師プロフィール
同大の4学部5大学院研究科などから成る現行体制に触れた後、国際資源学部における大学の世界展開力強化事業・スマートマイニング特別プログラム、医学部・附属病院における医療デジタル化による都市部とへき地を繋ぐオンライン診療、先進ヘルスケア工学院におけるVR技術活用の歩行環境シミュレータ開発といったデジタルへの取り組みを紹介。その上で、今後のDX推進の一環として2024年4月に5番目の学部としてオープンを目指す「ICT・データサイエンス系新学部」の概要、養成する人材像、そこに設置される情報科学を中核に人間支援、社会安全およびビジネスという特徴的な4プログラムの教育内容について説明。さらに、Society 5.0に向けた全学のDX推進のための拠点として新棟建設を進める情報統括センターの施設や役割を概説。それに合わせて計画中のVR教材の開発や外部講師の招聘にも言及します。
フォーラムエイト執行役員 システム営業マネージャ
講演内容
多様な領域に渡るフォーラムエイトの国土強靭化設計支援ソリューションとデジタルツインを連携し、スマートシティや国土強靭化のプロジェクトに活用する考え方に触れた後、そのVRプラットフォームをベースとする統合的な取り組みへの外部の評価について概説。併せて、UC-win/Roadの全体の処理の流れ、そこで関連する国土交通データプラットフォームやPLATEAU(いずれも国交省)、自治体の点群データなどオープンデータの活用方法をデモを交えて説明。
さらに近年の各種シミュレータやF8VPSの活用事例を紹介し、インフラデジタルデータベースシステムの活用による様々な可能性、F8VPSの経産省による次世代ソフトウェアプラットフォーム実証事業への採択、会計や積算などへの対応、UC-win/Roadの関連機能拡張、AR/MRソリューション提案などへと話を展開しました。
フォーラムエイト解析支援グループ グループ長
講演内容
初めに、フォーラムエイトの製品ラインナップにおけるFEM解析ソリューション(シリーズ)の位置付けを整理。その上で、1)3次元積層プレート・ケーブル・動的非線形解析「Engineer’s Studio®」、2)総合有限要素法解析システム「FEMLEEG」、3)RC構造2次元動的非線形解析「WCOMD Studio」、4)静的2次元弾塑性地盤解析「地盤FEM Geo Engineer’s Studio」を始めとする地盤解析シリーズなどについて、1)橋梁(コンクリート橋)、2)橋梁-上部工(非合成鈑桁橋)、3)劣化を考慮した解析、4)地震の観測値/計測値の活用、5)木造建築、6)円形RCタンク構造物、7)定常/非定常熱連動解析 ―などにおける活用事例を交えて説明しました。
フォーラムエイト執行役員 UC-1開発マネージャ
講演内容
フォーラムエイトソリューション「デザイン」の中核的製品群「UC-1設計シリーズ」にフォーカス。同シリーズの位置づけや他のソフトウェアとの連携、特徴、機能および分野(構造解析断面、橋梁上部工、橋梁下部工、基礎工、仮設工、道路土工、水工、地盤解析・地盤改良、CAD/CIM、維持管理)ごとの多様な製品ラインナップを概説。そのうち複数製品を使い、他ソフトとの連動やそれによる効果、BIM/CIM対応、設計計算書・図面の作成、3Dパラメトリックツールについてデモを交えて説明。また、「UC-1 Cloud自動設計シリーズ」の特徴、現行ラインナップ(BOXカルバート、擁壁、土留め工)、今後の製品リリース予定、一層の設計業務効率化に向けた自動計算への対応、UC-1 Engineer’s Suiteシリーズとの連携強化、AI橋梁損傷度判定支援システムへの対応などに触れつつ、Cloudの操作についてデモを交えて紹介。さらに、主力製品「BOXカルバートの設計・3D配筋」の最新バージョンの機能や対応、今後の開発予定にも言及しました。
Day3午後の部後半は、「第8回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワード(NaRDA)」の各賞発表と表彰式が行われました。NaRDAは、構造解析、地盤工学、水工学および防災分野を対象とし国土強靭化に資する取り組みを顕彰するもの。6月22日~10月15日に応募された作品の中から10月26日に8作品をノミネート。さらにそれらを基に11月16日、審査委員長の吉川弘道・東京都市大学名誉教授、審査員の守田優・芝浦工業大学名誉教授および若井明彦・群馬大学大学院理工学府教授の3氏から成る本審査会(フォーラムエイト東京本社)にて各賞が決定しています。
その結果、グランプリ(最優秀賞)は、株式会社新日本コンサルタントの「既設鋼管アーチ水管橋の耐震検討 -鋼アーチ部材の損傷確認と脚の非線形耐震性能照査-」。これは、水道施設耐震工法指針に準じてランガー補剛形式の水管橋の耐震診断調査を実施。非線形動的解析で耐震性を照査し、耐力が不足する箇所の補強工法を比較検討したもの。現在ニーズの多い既設構造物の耐震設計を調査、補強工法とフルコースで検討。その高度なプロセスを分かりやすく作品化したことが大きなポイント(吉川氏)とされました。
準グランプリ(優秀賞)は、有限会社エフテックの「土木施設と建築施設を一体化した耐震性能照査 -動的解析による地震時挙動の再現-」。地下の大型貯水槽と地上の多層階建築施設(上屋)が一体となった大規模な排水機場において、それらの一体化した解析モデルを構築。外力として実際の地震動波形を与える動的解析により耐震性能を照査する手法を提案。基準の異なる建築と土木の上下構造物を一体化した耐震性照査という新しいチャレンジに加え、非常に詳細な最適解を検討しており、意義のある設計(守田氏)と評されました。
審査員特別賞(吉川氏選考)はナレッジフュージョン株式会社の「非線形構造解析プログラムによるRCはり部材の耐力検討 -土木・建築の枠を超えて-」が、審査員特別賞(守田氏選考)は株式会社三協技研の「パイルベント橋脚のレベル2地震時耐震性能照査 -動的非線形解析による橋全体系での耐震性の検討-」が、審査員特別賞(若井氏選考)は株式会社シードコンサルタントの「新設5径間連続鋼ペデストリアンデッキ歩道橋の3次元動的非線形解析 -限られた境界条件下でのコンパクトな構造検討-」がそれぞれ受賞。各賞が各審査員により発表・授与された後、吉川審査委員長が次回NaRDAに向け改めて国土強靭化に資する解析・設計の具体的な事例を積み重ねることの重要性を位置付け。その際、「非常にややこしいところ」を分かりやすくまとめること、またタイトルやサブタイトルで概ね理解できることは大きなポイントになる、と総括。すべてのセッションが終了しました。