同じ管種について鉛直断面と継手の計算を行う場合など、複数製品にわたって検討する際には、管データや地盤データを各々の製品に入力しなければなりません。下水道管シリーズの各製品では、地盤データや基準値データを共有する事ができますので、その手間はある程度軽減されますが、新製品ではデータを共有する手間を省く事ができます。また、各製品の検討項目はそれぞれ異なりますが、その計算過程では部分的に同じ計算を行っているところもあり、計算書をそのままマージすると同じ計算過程が複数出力され、計算書の編集が必要となりますが、新製品ではそのような手間も省く事ができます。
新製品の計算機能は、基本的に既存の4製品を踏襲したものとなりますが、土かぶり高を範囲指定して、複数の土かぶりの条件について一括で計算する機能や液状化の判定機能を追加する予定です。土かぶり高の範囲指定時には土かぶり高毎の結果を比較表形式で出力する事ができます。液状化の判定方法は耐震対策指針に記載されている、H14道路橋示方書V耐震設計編に準じたものとなり、レベル1、レベル2地震時に対しての判定が可能となります。
■RC管、陶管
- 管の鉛直断面についてFrame計算で断面力を算出し、鉄筋コンクリート管、陶管の安全性を判定します。
- 解析Frameモデルの節点分割数を「24」「36」「48」から選択できます。
- 常時における支点条件として、「左(ピン)、右(水平ローラー)」、「左右(水平ローラー)、管底(鉛直ローラー)」のいずれかを指定可能です。
- 地震時水平力における支持条件として、「法線・接線方向モデル」、「X・Y方向モデル」のいずれかを指定可能です。
- 鉛直土圧、鉛直水圧、水平土圧、水平水圧、および底面地盤反力を考慮します。
- 鉛直土圧の算出方法として、「直土圧」、「テルツァギーのゆるみ土圧」のいずれかを指定可能です。
■強化プラスチック複合管、ダクタイル鋳鉄管
- 管の鉛直断面について、『大規模地下構造物の耐震設計法・ガイドライン(案)』の近似計算法により断面力を求め、強化プラスチック複合管、ダクタイル鋳鉄管の安全性を判定します。
- 近似計算法の断面分割角度として、「1度」、「2度」、「5度」、「10度」、「15度」の中から指定可能です。
- 鉛直土圧の算出方法として、「直土圧」、「テルツァギーのゆるみ土圧」のいずれかを指定可能です。
- 計算精度の補正係数βを任意に設定可能です。
■継手の計算
- 鉄筋コンクリート管、陶管、硬質塩化ビニル管、強化プラスチック複合管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管について、マンホールと管きょの接続部、管きょと管きょの継手部の照査を行います。
- 硬質塩化ビニル管、ダクタイル鋳鉄管については、差し込み継手管きょ、一体構造管きょのいずれかを選択可能です。
- 地震動による屈曲角/抜出し量、地盤の液状化に伴う地盤沈下による屈曲角/抜出し量、地盤の液状化に伴う永久ひずみによる抜出し量、傾斜地の永久ひずみによる抜出し量、地盤の硬軟急変化部を通過する場合の抜出し量、浅層不整形地盤でのひずみによる抜出し量の照査が可能で、照査項目を選択する事ができます。
■軸方向の計算
- 硬質塩化ビニル管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管について、管軸方向の照査を行います。
- 硬質塩化ビニル管については、「差し込み継手管きょ」、「一体構造管きょ」のいずれかを指定可能です。
- 地盤の剛性係数 Kg の算出方法として、「表層地盤」、「管きょ位置」のいずれかを指定可能です。
■液状化の判定
- 平成14年3月道路橋示方書V(耐震設計偏)に基づいた、レベル1、レベル2地震時に対する液状化の判定が可能です。
- 土質定数の低減係数DEを算出する事ができます。
■「下水道施設の耐震対策指針と解説−2014年版−」対応
2014年5月に公益社団法人 日本下水道協会「下水道施設の耐震対策指針と解説−2014年版−」(以下、耐震対策指針2014)が8年ぶりに改定されました。「下水道管の耐震設計Ver.2」において、最新の2014年版と2006年版の基準を選択可能にし、2014年度版で変更された以下の項目に対応します。
1.下水道用ポリエチレン管
一体構造管きょとして、下水道用ポリエチレン管を新たに追加します。下水道用ポリエチレン管(JSWAS K-14)の継手を電気融着により一体化して接合したものにおいて、「公益社団法人 日本水道協会 水道施設耐震工法指針・解説」を参考に管軸方向の照査の管体のひずみに対しての計算を行います。また、基準値には、JSWAS
K-14の呼び径50〜300mmまでの管種データを登録します。
2.管きょ本体の鉛直断面計算
一体構造管きょとして、下水道用ポリエチレン管を新たに追加します。下水道用ポリエチレン管(JSWAS K-14)の継手を電気融着により一体化して接合したものにおいて、「公益社団法人 日本水道協会 水道施設耐震工法指針・解説」を参考に管軸方向の照査の管体のひずみに対しての計算を行います。また、基準値には、JSWAS
K-14の呼び径50〜300mmまでの管種データを登録します。
▲地盤反力係数とフレームモデル
ここに、
Kr:部材鉛直方向の地盤反力係数(kN/m3)
Ks:部材軸方向の地盤反力係数(kN/m3)
ED :表層地盤の動的変形係数(kN/m2)
νD:表層地盤の動的ポアソン比
Rc:管きょ図心半径(m)
τ:地震時周面せん断力(kN/m2)
GD:表層地盤の動的せん断弾性係数(kN/m2)
Hg:表層地盤の厚さ(m)
本製品では、周面せん断力τは、管径に関係なく考慮・無視の状態を選択し設計することができます。
3.線形応答時の破壊保証モーメント
ダクタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管の鉛直断面計算において、地震時の断面力を線形解析にて算出した場合、非線形応答時の破壊保証モーメントMBではなく、線形応答時の等価線形計算により換算した破壊保証モーメントMdを用いて計算することができます。
MB =0.25・PB・r+0.165・W・r
Md=0.318・Pe・r+0.239・W・r
ここで、
W:管きょの自重(kN/m)
r:管きょの管厚中心半径(m)
ここで、弾性応答時の荷重Peは、非線形応答時の荷重比PBとの荷重比の補正係数Cs(=PB/Pe)を入力し算出します。
▲非線形応答と弾性応答
4.液状化の判定
液状化の判定では、平成24年と平成14年の道路橋示方書に準拠した計算を行うことができます。2006年版耐震対策指針を基準に選択した場合は、液状化の判定は、新しい基準の平成24年だけではなく、平成14年を選択し検討することができます。
■耐震計算マトリックス
対象管きょ:差し込み継手管きょ
管種 |
鉄筋コン
クリート管
(開削
工法用) |
鉄筋コン
クリート管
(推進
工法用) |
陶管
(開削
工法用) |
硬質塩化
ビニル管
(ゴム輪
接合) |
強化
プラス
チック
複合管 |
ダクタイル
鋳鉄管
(自然流
下管) |
地
震
動
に
よ
る |
マンホール
と管きょの
接続部 |
屈曲角 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
抜出し
量 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
管きょと
管きょの
継手部 |
屈曲角 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
抜出し
量 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
鉛直断面の
強度 |
耐荷力 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
― |
― |
― |
応力度 |
― |
― |
― |
― |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
管軸方向の
強度 |
管体
ひずみ |
― |
― |
― |
― |
― |
― |
応力度 |
― |
― |
― |
Lv1・2 |
― |
― |
液
状
化 |
永久
ひずみ |
抜出し
量 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
地盤沈下 |
屈曲角 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
抜出し
量 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
傾
斜
地 |
永久
ひずみ |
抜出し
量 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
Lv2 |
硬軟
急変化 |
抜出し
量 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
浅層
不整形 |
抜出し
量 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
対象管きょ:一体構造管きょ
管種 |
硬質
塩化ビニル管
(接着接合) |
ダクタイル
鋳鉄管
(圧送管) |
鋼管 |
地震動による |
マンホールと
管きょの接続部 |
屈曲角 |
Lv1・2 |
― |
― |
抜出し量 |
Lv1・2 |
― |
― |
管きょと管きょの
継手部 |
屈曲角 |
― |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
抜出し量 |
― |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
鉛直断面の強度 |
耐荷力 |
― |
― |
― |
応力度 |
― |
― |
― |
管軸方向の強度 |
管体ひずみ |
― |
― |
Lv1・2 |
応力度 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
Lv1・2 |
液状化 |
永久ひずみ |
抜出し量 |
― |
― |
― |
地盤沈下 |
屈曲角 |
― |
― |
― |
抜出し量 |
― |
― |
― |
傾斜地 |
永久ひずみ |
抜出し量 |
― |
― |
― |
硬軟急変化 |
抜出し量 |
― |
― |
― |
浅層不整形 |
抜出し量 |
― |
― |
― |
Lv1・2:レベル1地震動、レベル2地震動で検討する項目、Lv2: レベル2地震動で検討する項目
― :耐震検討を必要としない項目 |