身近な台湾
台湾は、超高層建築・台北101、日本が初めて新幹線技術を輸出した台湾高速鉄道など、建築・都市分野の華々しいプロジェクトの話題を頻繁に耳にする。【図1】。
台湾訪問は、1997年がはじめて。新竹市にある国立交通大学で開催されたCAADRIA97のため。新竹は、IT関連の工場や企業が集中しているため、「台湾のシリコンバレー」と呼ばれている。
次いで2009年4月、CAADRIA 2009国際会議が雲林縣斗六市にある国立雲林科技大学で開催された【図2】。この時には、研究室の博士前期課程学生2名が発表(川口君、吉川さん)。2名とも国際会議での発表は初めてだったが、ともにCAADRIA若手優秀賞を受賞した。おめでとうございます。
1997年以来、台湾は最も多く訪問している国・地域。これまで、台北、新北、新竹、宜蘭、台中、斗六、台南、高雄などの都市や村を訪問してきた。
騎楼
台湾の伝統的な地区でよく見かけるのが騎楼【図3】。騎楼とは、建物の2階より上階が車道際まで張り出して、その下の1階部分がアーケードとして、セミパブリック空間になっている建築様式のことである。「私」である建物が「公」の空間を連続的に提供しているために、一般の人々が通行でき、半公共的なコミュニティ空間が存在している。暑い日差しや降雨を遮ってもくれる。騎楼を歩いていると、合格者と合格大学の名前がズラリとぶら下げられている場所があった。どうやら、学習塾が入る建物らしい。台湾は日本と同じく受験戦争が盛んなようだ。
高架道路の下が週末限定の市場となる建国花市・建国玉市(台北)は、公共空間の活用法として参考になる【図4】。
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【図1】台湾高速鉄道 |
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【図2】CAADRIA2009終了後、皆でダンス! |
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【図4】建国花市 |
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【図3】騎楼(左:三峡老街、右:台南) |
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Next Gene 21+
Next Gene 21+ プロジェクトは、台北から東へ車で約1時間のアオディという地域に、台湾国内外の建築家がそれぞれ住宅や施設をデザインする開発計画。2000年代後半に進められた。
プロジェクト・テーマの一つに、次世代の住環境と新たなライフスタイルの提案がある。筆者らは、プロジェクトリーダーの劉教授より参加の要請を受け、2007から2008年にかけて、新たなライフスタイルの提案とその表現メディアとしての映像制作に取り組んだ【図5】。
ライフスタイルを検討する際に、台湾と日本の高齢化率を比較したので紹介しておこう。ある年の台湾と日本の高齢化率(%)を、(年, 台湾, 日本)と表すならば、(2005,9.74,21.0)、(2025,19.8,29.9)、(2050,36.7,38.9)となる(この数値は、2007年時点のものだが、2019年時点でもほぼ推計通りとなっている)。つまり、2005年の台湾は高齢化率が10%未満と若い人々が多い国なのだが、2025年には高齢化率は2005年頃の日本の水準にまで達し、そして2050年には日本と同じく5人に2人が高齢者という状況を迎える。
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【図5】作成したライフスタイル映像 |
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一方、出生率は日本より低い水準であり、日本以上に少子高齢化が深刻になることが考えられる。そのため、日本のライフスタイルとして受け入れられつつある地産地消、コミュニティ再生、エコツアー、健康といったテーマが台湾でも今後求められるのでは、と考えた。
2008年6月には、台北市でセレモニーが開かれ、各建築家の最新案と筆者らが作成したライフスタイル映像が一般公開された。2008年度のベネチア・ビエンナーレにも出展した。
霧峰林家
台湾で著名な一族は5つあり「台湾五大家族」と呼ばれる。その一つ、台中郊外にある霧峰の林家花園へ。上(かみ)林家景薫楼は「台湾議会之父」と称される林献堂の居宅【図6】。文物館では、氏が使用した書物や調度品のみならず、数々の写真、手紙、日記などが丁寧に保管されていた。
池の中にあるステージ「飛觴酔月亭」から迎賓館「五桂楼」を眺める【図7】。以前は橋の延長線上に迎賓館の真ん中の入り口があったが、1999年9月の921大地震で1mほどずれてしまったそうだ。当地は921大地震の震源に近いため被害が大きかったそうで、迎賓館は壊れてしまい、近年再建されたそうである。
霧峰林家の近くには、九二一地震教育園区が整備されており、大破した学校建築が壊れた当時のまま、保存されていた。敷地内には亀裂の入った断層があり、淡路島の野島断層記念館を思わせる。
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【図6】上 林家 景薫楼 |
【図7】霧峰林家花園 |
台南
台南は、日本の奈良や京都のような古都と呼ばれる。街なかはレトロとモダンが入り混じっており歩いて楽しい。
林百貨店は、1932年にオープンした百貨店。台湾初の百貨店である菊元百貨店(台北)とほぼ同時期。1988年台南市政府により「市定古跡」に認定され、その後保存修理された。そして、2014年に新しい林百貨店としてリニューアル・オープン【図8】。一般的な商品を扱うのではなく、デザイナーによるお洒落な商品がギャラリー風に販売されていた。上階には第2次世界大戦での米軍による爆撃跡が残る一方で、日本のビルではお馴染みの稲荷神社が祀られていた【図9】。林百貨店の向かいには、1937年に完成した現・土地銀行台南分行(元・日本勧業銀行台南支店)がどっしりと建つ【図10】。
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【図9】屋上の稲荷神社 |
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【図8】林百貨店外観 |
【図10】元日本勧業銀行台南支店 |
黄金海岸は、台南市街から南西方面にあり、その名の通り、夕日が美しいビーチ。夜に行って驚いたが沢山の屋台が出ていた。11月に訪問したのに日中の気温は25~30℃と、日本では夏の終わりの感じで、海風が心地いい。屋台では、好きな食材を選ぶと、その場で調理してくれる【図13】。浜辺には、大きなパラソルがわざと倒されて並んでおり、パラソルの屋根が隣との目隠しになって、セミプライベートな空間が作られていた【図14】。
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【図13】黄金海岸の屋台 |
【図14】黄金海 |
高雄
台南駅から在来線で高雄まで約1時間。台南駅は1936年に完成した近代建築であるが今なお現役である【図15】。
高雄にはMRTが2路線あり、その乗換駅が美麗島駅。地下1階の乗り換えコンコースには、光之穹頂 (The Dome of Light) と呼ばれる、直径30mの巨大なステンドグラスがあり、利用客を楽しませてくれる【図16】。
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【図15】台南駅 |
【図16】美麗島駅のステンドグラス |
台湾の人々との交流
海外に出かけた時、筆者はジモティ(地元の人々)に出会うことが何よりも楽しみである。台湾の場合、CAADRIA国際会議を通じて知り合ったメンバーと交流が続く。出会う度に新たな発見や笑いを沢山共有する。そしてまた台湾を訪問したくなる。
プロジェクトや学会で海外を訪問した際には、非常にタイトなスケジュールだ。例えば、Next Gene 21+プロジェクトでは、現地撮影のため2泊3日で訪台したが、睡眠時間はほとんど取れなかった。一方で、プロジェクトメンバーと打合せをした後の食事会は非常に盛り上がった。「カンペイ!」と、台湾ビールの入ったグラスを皆で飲み干す瞬間は、本当に最高である。
台湾で食といえば、麺、肉、魚、鍋、スープなど多彩な料理がいくつも思い浮かぶ。そして、美味しいレストランは、ジモティが一番よく知っている。
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3Dデジタルシティ・台湾 by UC-win/Road
「台湾」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ |
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UC-win/Roadによる3次元VR(バーチャルリアリティ)モデルを作成したものです。台北市内の観光スポットを中心に3Dデジタルシティを作成しました。
日本統治50年間での最大の建築物「総統府」や中国の宮殿陵墓式が採用された「中正記念堂」、深夜まで大勢の人で賑わう「夜市」のほか、MD3人間キャラクタを利用し、公園で太極拳を楽しむ人々のリアルな動作を表現しています。 |
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