また堀内さんは元々、モデリング手法に関しては個人的に「ポリゴンよりも自由曲線」で行いたい、との思いを醸成。試行錯誤する中で、その際、他のソフトとの併用により同手法の機能をより有効に活用できるのでは、との着想に至りました。
同氏は、色味調整の負荷を軽減する狙いから、まずShadeを使い、一度きちんと作り込んだモデルを用意。それを別名保存した上で表面材質をすべて取り外し、全モデルを黒、そのうち欲しいパーツのみを白で表示した「マスク」を作成する手法に着目。色味に関し、とりわけ厳格で細部にわたって何度でも調整を求められたケース、あるいは宇宙船の各部を僅かにザラザラした感じにするため「汚し」を施したケースなどではマスクの活用により作業を効率化できたと言います。
冒頭でも触れたように、同氏は97年の独立以降、1)電子・電気部品、2)新パッケージを検討中の市販薬、3)一見ありそうなのにどの会社のものでもない携帯電話機などの製品、4)グレッグ・イーガン氏、アイザック・アシモフ氏、フィリップ・K・ディック氏、林譲治氏ら国内外のSF作家による小説書籍など向けに各種イラストを制作しています。
さらに、2004年からは高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中心に国際協力によって設計開発が進むILCの最新状況をイラストやアニメで表現する業務を担当。このILCを日本に建設しようという素粒子物理学における国際プロジェクトには世界の研究者や技術者が注目。その実現に向けた取り組みを通じ、更新される計画を反映した3DCGを同氏はほぼ毎年、制作し続けています。
「ILCに関しては計画に早くGOサインが出て欲しいです」。世界を巻き込み巨額の費用を要する同プロジェクトにスタート時からイラストレーターとして関わり続ける堀内さんは、我が事としてその行方を注視。併せて、ILC向け業務を通じ育んできた科学系向け、あるいは広報素材としての3DCGのノウハウを基に、国内外の加速器関連装置はもちろん、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や大型低温重力波望遠鏡KAGRAなど向けのニーズにも期待。3DCADソフトや写真とは異なる、3DCGならではの「この世に存在しないものをフォトリアルに表現できる」メリットへの理解浸透も図りたいとの思いを述べます。
(執筆:池野隆)
|