Vol.
 7
「 Rey.Hori 」
こと 堀内 営さん


URL
http://www.yk.rim.or.jp/~reyhori/


所在地 :神奈川県川崎市
プロフィール
鳥取大学工学部生産機械工学科を卒業後、富士通株式会社に入社し大型プリンターの機構設計などに従事。その間、高校時代から嗜んできたコンピュータの趣味は、自ら3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の高度なニーズに対応できるまでに昇華。1997年に独立して以来、3DCGのイラストやアニメーションを制作するフリーランサー(ビジネスネーム「Rey.Hori(れい・ほり)」)としてメカへの強みを活かした作品作りで独自性を発揮しています。当初は、電子・電機部品の新製品、市販薬などのパッケージ画およびSF書籍・雑誌向け表紙絵などのCG制作、あるいはWebデザインを中心に活動。そのような中、2004年に次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の関係者らからその取り組みについて説明するためのイラスト制作を受注。これを契機に、毎年のように継続的な検討を通じて加えられるILCの計画変更を反映したイラスト作成のほか、国内外の加速器関連装置など、高度な専門性を要する多様な業務にもその対象を広げてきています。
 
自由曲面モデリングや各種形式データとの連携など強みを有効活用
Shade導入以来25年、各種製品からSF、ILCなどへ活躍の場を拡張
 
3DCGを堀内営(ほりうち まもる)さんが趣味として始めたのは1992年頃。当初は広く使われていた別のCGソフトを購入したものの、斯界の先達アーティストを介して氏が使用するShadeに初めて触れる機会を得て、自由曲面モデリングによる、その使い勝手の良さを改めて実感。95年に自らもShade(当時は「ShadeⅢ」)を導入するに至っています。
Shadeを使い始めて以降、同氏はその、より効果的かつ効率的な活用に繋げるべく、様々なソリューションを模索。そうした一環として、「Shadeは3D形状を作るソフトで、2D作図のソフトではない」との観点に立脚。モデリングするための最初の図形は2DCADソフトで作成。そのデータをAIやEPS形式のファイルにしてShadeに読み込ませる、という独自のアプローチを考案し、これまで多用してきています。特に近年は、込み入った構造物のイラスト作成を依頼される際などに、3DCADデータを顧客側から提供してもらえるケースが増加。その意味でも現行のShade3Dで、NURBSでSTEP形式のデータを入出力できるようになったのは大きな強み、との見方を述べます。
 

また堀内さんは元々、モデリング手法に関しては個人的に「ポリゴンよりも自由曲線」で行いたい、との思いを醸成。試行錯誤する中で、その際、他のソフトとの併用により同手法の機能をより有効に活用できるのでは、との着想に至りました。

同氏は、色味調整の負荷を軽減する狙いから、まずShadeを使い、一度きちんと作り込んだモデルを用意。それを別名保存した上で表面材質をすべて取り外し、全モデルを黒、そのうち欲しいパーツのみを白で表示した「マスク」を作成する手法に着目。色味に関し、とりわけ厳格で細部にわたって何度でも調整を求められたケース、あるいは宇宙船の各部を僅かにザラザラした感じにするため「汚し」を施したケースなどではマスクの活用により作業を効率化できたと言います。


冒頭でも触れたように、同氏は97年の独立以降、1)電子・電気部品、2)新パッケージを検討中の市販薬、3)一見ありそうなのにどの会社のものでもない携帯電話機などの製品、4)グレッグ・イーガン氏、アイザック・アシモフ氏、フィリップ・K・ディック氏、林譲治氏ら国内外のSF作家による小説書籍など向けに各種イラストを制作しています。

さらに、2004年からは高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中心に国際協力によって設計開発が進むILCの最新状況をイラストやアニメで表現する業務を担当。このILCを日本に建設しようという素粒子物理学における国際プロジェクトには世界の研究者や技術者が注目。その実現に向けた取り組みを通じ、更新される計画を反映した3DCGを同氏はほぼ毎年、制作し続けています。


「ILCに関しては計画に早くGOサインが出て欲しいです」。世界を巻き込み巨額の費用を要する同プロジェクトにスタート時からイラストレーターとして関わり続ける堀内さんは、我が事としてその行方を注視。併せて、ILC向け業務を通じ育んできた科学系向け、あるいは広報素材としての3DCGのノウハウを基に、国内外の加速器関連装置はもちろん、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や大型低温重力波望遠鏡KAGRAなど向けのニーズにも期待。3DCADソフトや写真とは異なる、3DCGならではの「この世に存在しないものをフォトリアルに表現できる」メリットへの理解浸透も図りたいとの思いを述べます。

(執筆:池野隆)


▲SF小説のイラストも手掛ける


▲ILC用超電導加速空洞の分解イラストとモデリング画面
  

▲ILC主加速器の完成予想図

▲林譲治著「星系出雲の兵站ー遠征ー1」
のカバー画とモデリング画面


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(Up&Coming '20 秋の号掲載)
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