コロナにより新しい生活様式が叫ばれた2020年。しかし、私は今年も変わらず、劇場に足を運び続けました。一切欠勤のない私の身体が、映画館の安全性を物語っていると思います。皆さんも是非劇場に!今回は、2020年の新作映画ベスト5、2020年の映画時事総括、今後の映画界について書いています。

2020年映画ベスト5

5位「TENET テネット」

コロナ禍によってマーベルやディズニー、007の新作など超大作が続々と劇場公開延期を発表する中、臆することなく時代に「逆行」し、劇場公開に踏み切った今作。

ノーラン監督は私生活でも新聞や小説をオチから読み、自身の作品も常に最後から最初に戻っていく「逆行」の申し子であり、今作も物語やアクションの多くが「逆再生」で構成されています。順行のシーンが別の視点に変わり逆行でも再生される、世にも珍しい超大作が誕生したのです。

「TENET テネット」 アメリカ映画 上映時間:150分
監督:クリストファー・ノーラン 出演:ジョン・デビット・ワシントンほか
見所:逆再生をウリにする、まさに「逆転」の発想!

4位「ミッドサマー」

ホラー映画の画面と言えば薄暗い、不気味な雰囲気を漂わせるのが定石。しかし今作は白夜により常に昼間であるスウェーデンが舞台で、一見すると清潔感しかない風景で惨劇が起こる異色のホラーです。

現社会から離れ、独自の文化を継承するホルガ村の民が、主人公たちに見せる「祝祭」をたっぷり味わってください。また、今作の舞台となる架空の村、ホルガ村の公式HPのデザインセンスは秀逸!ぜひ鑑賞後「https://welcometoharga.org/」にアクセスを。特にHP担当の方、必見です!?

「ミッドサマー」 アメリカ映画 上映時間:147分
監督:アリ・アスター 出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナーほか
見所:ホラーの概念を覆す!白く清潔感がある舞台で起きる大惨劇!

3位「透明人間」

突然舞い降りた残業のため、本編開始から30分以上遅れて劇場に馳せ参じたのですが、残業後の陰鬱な気分を見事に吹き飛ばす爽やかホラー映画となっていました!これまでの透明人間のセオリーを崩し、女性が主体となる展開や予想しなかった衝撃のオチなど、欠点を探す方が難しい作品でまさかの3位にランクイン!

「透明人間」 アメリカ映画 上映時間:122分
監督:リー・ワネル 出演:エリザベス・モス(ハンドメイズテイル)ほか
見所:単なるB級ジャンル映画に非ず!「見えない」女性の苦悩が「透けて」見える怪作!

2位「フォードvsフェラーリ」

実は2019年の東京国際映画祭で早めに鑑賞しており、その頃からベストに入れようと思っていた作品でした。舞台は1966年のル・マン24時間耐久レース。大衆車メインに作っていたフォードがル・マンで常勝のフェラーリに下剋上を挑む、モータースポーツ版半沢直樹な作品です。上映時間は153分ですが体感時間は30分!超スピードで走るレーシングカーと映画の展開、あなたは付いてこられるか!?

「フォードvsフェラーリ」 アメリカ映画 上映時間:153分
監督:ジェームズ・マンゴールド 出演:マット・デイモン、クリスチャン・ベールほか
見所:モータースポーツを描いた映画の中ではオールタイムベスト!

1位「ようこそ映画音響の世界へ」

映画における「音響」がどのように表現されてきたか、その歴史を辿るドキュメンタリー。最初は真面目で退屈な内容に思えましたが、鑑賞後の劇場は拍手で包まれ、私もベスト1に選定致しました。「スターウォーズ」、「ジョーズ」、「地獄の黙示録」など50を超える名作が、「映画音響」という一つのテーマで繋がるという奇跡を体感できた経験は、自分にとって大きな財産となるでしょう。

映画好きだけでなく一般の方にも是非ご覧になっていただきたいのですが、映画館という空間の広さと高級な音響システムをフル稼働させる映画です。そのため映画館か、超が付くほどのお金持ちの家でしか堪能できません!ご自宅で鑑賞される際は、音響は5.1ch等のサラウンド環境を強く推奨します!

『ようこそ映画音響の世界へ』
Blu-ray・DVD販売中、配信レンタル中
配給:アンプラグド

© 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

ジョージ・ルーカス監督出演シーン
スティーブン・スピルバーグ監督出演シーン
映画「ジュラシックパーク」の音響制作の様子

「ようこそ映画音響の世界へ」
Blu-ray・DVD販売中、配信レンタル中
配給:アンプラグド
© 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.
◆監督:ミッジ・コスティン
◆出演:ウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライドストローム、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・リンチ、アン・リー、ライアン・クーグラー、ソフィア・コッポラ、アルフォンソ・キュアロン、クリストファー・ノーラン、バーブラ・ストライサンド
2019年/アメリカ/英語/94分/カラー/ビスタ/5.1ch

コロナ禍の映画時事総括

2020年は100年を超える映画史の中でも大きな変化を遂げた1年でした。2020年の激動の映画時事を、ここで振り返ります。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3月以降は1席空けての興行を開始。緊急事態宣言のあった4-5月は全劇場で営業休止となりました。6月に営業再開するものの大作は公開を見合わせ、過去作を再上映する流れに。7月には約20年前に公開された「千と千尋の神隠し」が興行収入で3週連続1位になる異例の事態が起こりました。

9月になると、これまで公開延期を貫いてきたディズニーが自社サイト「Disney+」での実写版「ムーラン」の配信を決定。この出来事が、新作を動画配信で公開する全世界的な流れを加速させました。今後、ディズニー社の傘下となったマーベルスタジオ、ルーカスフィルム(スターウォーズ)、20世紀スタジオ等の新作も動画配信されるでしょう。

そんな中、ワーナーブラザーズだけは時代に逆行しました。9月には「TENET」、12月には「ワンダーウーマン1984」を全世界で劇場公開し、多くの劇場を救いました。

10月には「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が公開され、2021年2月中旬時点で興行収入は370億円を突破。日本の歴代最高収入1位である「千と千尋の神隠し」を上回り記録を塗り替えました。12月になると、日本でのみ公開の鬼滅の刃が、2020年の全世界の興行収入ランキングのトップ5入りを果たします。この異例の事態を各国のメディアが取り上げ、コロナ禍でも劇場が通常営業できる日本の特異性が浮き彫りになりました。

映画時事 備考
3月 新型コロナウイルスが国内外で深刻化、様々な店舗が時短営業・休業へ ソーシャルディスタンスを考慮し、1席空けての興行がスタート
4月~5月 緊急事態宣言に伴い映画館が休業 公開予定だった「007」が延期され、映画界に衝撃が走る
6月 全国のシネコンで営業開始
大作の相次ぐ公開延期のため、過去作を再上映する動きへ
7月にはジブリ「千と千尋の神隠し」が3週連続で興行収入1位に
9月 ディズニーが新作「ムーラン」を自社サイトでの配信公開に踏み切る 同じく超大作のワーナーブラザーズ配給の「TENET」は劇場公開へ
10月 「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が大ヒットし、日本歴代興行収入1位に 2020年の全世界の興行収入でトップ5に入り、日本の特異性が世界に知れ渡る
12月 ディズニー&ピクサーの新作「ソウルフル・ワールド」が動画配信へ ワーナー配給の「ワンダーウーマン1984」は劇場公開

今の映画界は変革期の真っ最中

2020年は劇場公開から動画配信へシフトする、大きな流れがありました。突然のことに思うかもしれませんが、実はコロナ以前から新作が動画配信されることは多く、Netflixなど動画配信専門の会社でも、今やアカデミー賞の常連となりました。

映画界にはおよそ10年に1度、大きな変革が起きると言われています。90年代にはフィルム上映からデジタル上映へ(スターウォーズEP.1より)、00年代は「3」D上映が始まり(アバター)、10年代は「4」D上映や旧作の「4」Kリマスター上映。そして20年代は「5」Gなどの高速通信による動画配信が拡大。つまり、「3」→「4」→「5」という順序数詞的に映画界の変革が起きています。動画配信の躍進は以前から決定的であり、それが新型コロナによって時期が早まっただけ、なのかもしれません。

2020年代は、通信技術やVR・AR技術の革新によって遠隔での撮影など、非接触型の撮影手法が加速すると思われます。20世紀初頭はハリウッドのスタジオシステム(映画に関わる全てのヒト・モノが一ヶ所に集まること)による映画作りが隆盛を極めましたが、100年の時を経て、自宅がスタジオになるのかもしれません。




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(Up&Coming '21 春の号掲載)
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