はじめに
福田知弘氏による「都市と建築のブログ」の好評連載の第34回。毎回、福田氏がユーモアを交えて紹介する都市や建築。今回はウィーンの3Dデジタルシティ・モデリングにフォーラムエイトVRサポートグループのスタッフがチャレンジします。どうぞお楽しみください。
Vol.34
ウィーン:音楽の都
大阪大学大学院准教授 福田 知弘
プロフィール
1971年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学大学院准教授、博士(工学)。環境設計情報学が専門。国内外のプロジェクトに関わる。CAADRIA(Computer Aided Architectural Design Research In Asia)学会前会長、日本建築学会代議員、NPO法人もうひとつの旅クラブ副理事長、大阪旅めがねエリアクルー。「光都・こうべ」照明デザイン設計競技最優秀賞受賞。著書「VR プレゼンテーションと新しい街づくり」「はじめての環境デザイン学」など。
ふくだぶろーぐは、http://fukudablog.hatenablog.com/
ウィーンへ
eCAADe2015国際会議に出席するため、アムステルダム経由で、ウィーンへ。ウィーンは、オーストリアの首都であり、人口は184万人。モーツァルトやベートーヴェーンらが活躍したクラッシック音楽の都、数多くの歌劇や舞踏会、カフェ文化、そして国連都市でもある【図1】。
【図1】街なかのCafe Gutenberg
この出張から、関西国際空港の出入国審査場では自動化ゲートを使い始めた。特に帰国時は審査場に人が集中するため、自動化ゲートを使うとスムーズであった。パスポートに出入国のスタンプを押してもらえないのは少々寂しいが、慣れてしまうものだろうか。
ウィンナ・コーヒー
ウィーンといえばウィンナ・コーヒー。初めて出会ったのは、神戸ポートピア博覧会'81のUCCコーヒー館だと思う。メニューを見て、コーヒーに何とソーセージが入っているのか?興味本位で注文してみると、なぜクリームたっぷりのコーヒー?と、はてなマークが辺りに飛び散っていたことを思いだした。「ウィンナ」とは「ウィーン風の」という意味だが、ウィーンに行くとウィンナ・コーヒーはなかった。明石に明石焼きがない(当地では玉子焼きと呼ぶ)のと同じ理屈であろうか。アインシュペナーというそう。コーヒーと同じくらいの生クリームがたっぷり【図2】。
【図2】アインシュペナー
ウィンナ・ワルツ
国際会議の主役は基調講演や論文発表であることは言うまでもないのだが、レセプション、カンファレンスディナー、そして、エクスカーションは重要な社交の場。学会の運営のこと、研究発表についての質問や新たなプロジェクトの相談、ひいては、研究者同士の悩み相談など、コミュニケーションは続く。また、ホストでお世話になる大学・都市・国の文化を体感できる場ともなる。
eCAADe2015のレセプションは、ホスト・ウィーン工科大学本館の最上階にあるホールで行われた。建物自体は古いが、リニューアルされ素敵な木造インテリア。パーティの中ほど、有志で、ウィンナ・ワルツを【図3】。私も折角だからと、プロの先生にご指導を仰ぎながら頑張った。快くお相手してくれた先生に感謝。ダンスはプレゼンより難しいかもしれない(大汗)。カンファレスディナーはウィーン市庁舎の地下にある、穴ぐらレストラン【図4】。
【図3】レセプションでのワルツ講座
【図4】市庁舎でのカンファレンスディナー
ウィーン工科大学には、建築家・オットー・ワーグナー、作曲家・ヨハン・シュトラウス2世、ドップラー効果を発見したクリスチャン・ドップラー氏ら、後世に影響を与えた人物が在籍していたそうだ。
美しく青きドナウ
ドナウ川へ早朝散歩。ドナウ川は、ドイツ・シュヴァルツヴァルト(黒い森)に端を発し、ドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリー、クロアチア、セルビア、ルーマニア、ブルガリア、モルドバ、ウクライナと10ヶ国にまたがる国際河川。ウィーンの辺りは、まだ、上流部に位置づけられるようだ。川岸には、四角い客船が沢山並んでいた。写真の船はこれからスイス・バーゼルまで行く模様【図5】。いつか乗ってみたいね。
【図5】ドナウ川
ウィーンと大阪の大雑把な共通点を。川でいえば、都心に川幅100mほどの河川がある。ウィーンはドナウ本流から引き込まれたドナウ運河(緑道が心地よい)、大阪は旧淀川(大川、堂島川、土佐堀川)。そして、都心近郊に川幅800mほどの大河川がある。ウィーンはドナウ本流、大阪は淀川。そして、フンデルトヴァッサー建築の存在。
フンデルトヴァッサー
フンデルトヴァッサーと聞くと、曲線を多用したデザイン、赤、黄、緑、青のカラフルな色使い、どこまでも続く線や渦巻きなどが思い浮かぶ。日本国内にフンデルトヴァッサーの作品は4か所あり、大阪には、大阪市環境局・舞洲工場、舞洲スラッジセンター、そしてキッズプラザ大阪と、3か所もある。キッズプラザ大阪には何度か通ったものだが、まさに直線を使わない建築となっていた。つまり、床・壁・天井が曲線でつながり有機的な形態をしており、子供の落書きのようなペインティングが伸び伸びと描かれており、不思議な感覚を覚えた。ウィーンの街なかにはフンデルトヴァッサー・ハウスがあり、街はずれにはシュピッテラウ焼却場がある。焼却場は大阪の舞洲工場とよく似ているデザインなのだが(若干小ぶりにせよ)、隣のオフィスビルは血が流れているようなデザインであった【図6】。
【図6】シュピッテラウ焼却場
他の施設を。オットー・ワーグナー設計のウィーン郵便貯金局。1912年完成。外壁は大理石の板で覆われ、装飾を兼ねたアルミの大きなボルトによって留めてある。中に入ると印象的な郵便窓口ホール。ガラスと鉄の天井が美しい【図7,8】。
【図7(上),8(下)】ウィーン郵便貯金局
数年前に完成したウィーン経済大学の新キャンパス。斬新な建物群は気鋭の建築家によるもの【図9,10】。錆びた鉄板の外壁がシブい。庇を閉じると建物全体が赤錆びの塊になりそうだ【図11】。
【図9(上),10(中),11(下)】 ウィーン経済大学
ザハ・ハディッド氏のラーニングセンターはランドマーク的存在【図12】。尚、ザハ建築は、ウィーン市内にもう一か所、シュピッテラウ焼却場の隣に古い高架橋を跨ぐ格好で作られた集合住宅がある【図13】。
【図12】ウィーン経済大学
【図13】シュピッテラウの集合住宅とドナウ運河
有名な美術史美術館とウィーン自然史博物館に隣接するミュージアムクォーター。6haの敷地に複数の美術館が集まるアート地区。かつては厩舎であった。
建物に囲まれた広場はアートやベンチ、キオスクが並んでおり、ウィーン都心のほっこり空間となっていた【図14】。ジモティの男性グループはペタンクに興じていた。
【図14】ミュージアムクォーター
オーストリアワイン
ウィーンはワインも有名。学会終了後、有志で街はずれのワイナリーへ。ひと仕事を終えた仲間と、自家製のワインと食事を共にする時間は最高であった。2年後、eCAADe 2017をホストされるイタリアチームと記念ショット!ローマでの再会が楽しみだ【図15】。
【図15】ワイナリー Schuebel-Auer Heuriger
3Dデジタルシティ・ウィーン by UC-win/Road
「ウィーン」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ
「UC-win/Road CGレンダリングサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細なCG画像ファイルを提供するもので、今回の3Dデジタルシティ・ウィーンのレンダリングにも使用されています。POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。
(Up&Coming '16 盛夏号掲載)