しかし国境など軽々と飛び越えてしまう現在のグローバル・ネット社会では、海外に拠点を置くブックメーカーの日本のスポーツを対象としたスポーツベッティングが無制限に行われているのが実情だ。Jリーグのサッカーを対象としたスポーツベッティングは、海外の様々なホームページを通じて年間2兆円もの売上げがあり、そのうち1割の2000億円が日本人の参加によるものと言われている(その結果スポーツ専門中継サービスのDAZNの視聴者が増え、Jリーグに対して10年で2千億円の放送権料を支払うことが可能になったのだ)。
言葉は悪いが、いまや日本のスポーツは海外の賭け屋による草刈り場状態で、Jリーグ以外にもBリーグやプロ野球、ラグビーのリーグワンや大相撲などの賭けが、海外のブックメーカーのネットで行われ、今春は高校野球センバツ大会の賭けのできるホームページが、日本語のホームページを含めて10以上も開設された。
何しろアメリカンフットボールの最高峰のイベントであるスーパーボウル1試合だけで、スポーツベッティングの売上げは2兆1千億円もあり、全米のスポーツベッティングの市場規模は16兆円と言われている。
日本でもスポーツベッティングを解禁(合法化)すれば、約7兆円の売上げが予想され、経費や配当金や国庫納入金を差し引いた約1兆7千億円がスポーツ関連予算に使えることになるとの試算もある。
現在のスポーツ庁の予算は約351億円。totoによるスポーツ界への援助も約176億円程度(いずれも令和5年度の金額)。ということは、スポーツベッティングの合法化によって、現在の30倍以上のスポーツ予算を獲得できることになり、五輪選手などの強化費用の増額やスポーツ施設の充実、小中高の部活動のアウトソーシング(プロのコーチの起用による教師の授業以外の負担軽減)……等々、日本のスポーツ界の発展に大きく寄与することが考えられる。
とはいえ日本では、刑法で「悪」として原則禁止されている賭博に対しては、忌避する感情が今も強く、totoの法律が審議されたときも、衆院文教委員会に参考人として招かれ、toto法案賛成の意見陳述をした小生は、婦人団体や教育団体の人々や多くの女性議員から「賭博で青少年の夢を汚さないで!」と激しく非難されたものだった。
が、1960年、3年間の調査の後に世界に先駆けて一切の賭博行為を民間に開放する「賭博解禁法」を成立させたイギリス政府は、そのとき次のような声明を発表した。「賭博はコントロールすべきだが、禁止すべきではない。禁止すればかえって犯罪を生む」
1920年代のアメリカで、キリスト教団体や道徳団体の主張から「禁酒法」が成立した結果、密造酒や密輸入酒や闇酒場などでアル・カポネなど裏社会のマフィアが大儲けしたことは有名だ。現在の日本政府の賭博に対する姿勢が、禁酒法時代のアメリカに似ているとまで言うのは言い過ぎかもしれないが、スポーツベッティングの導入に関する検討は、IR(カジノ&総合型リゾート)以上に今すぐ取り組むべき課題と言えるかもしれない。
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