プロフィール
大学で建築を専攻。卒業後に就職した設計事務所では、15年間にわたり分譲マンションや商業施設を中心とする設計、現場監理などの業務に従事。2001年に独立し、佐藤雅克さんは建築設計事務所「スタジオブロック建築デザイン」としての活動をスタートしました。そこで自身の建築デザインを顧客に紹介するため、CGの活用を着想。当時既に関係者間で評価が高かったShadeを導入。設計業務の傍らShade利用のスキルを磨くうち、取引業者からCG制作の依頼が増えてきたのを受け、ウェートをそこへと移行。2004年には自社Webサイトを立ち上げ、作り溜めてきたCG作品をアップ。以来、同サイトを通じ取引先は首都圏をはじめとする全国へと次第に拡大。現在、モデリングサポート(札幌・横浜の2名)および首都圏営業(東京1名)を担う外部スタッフと連携する体制を構築しています。
建築デザインの豊富な知見を駆使し、外観・内観のCGパースを主に制作。照明の効果や建築のディテールを正確に反映、用途に応じ多様なテイストにも対応できるのが特色です。
建築デザインの知見を駆使した建築パースはじめ多様なCG制作をカバー
リアルさと「自然な感じ」の表現を追究、Shade3D利用の独自スタンス
「建築デザインを図面からのみでは分からないお客さんに形として見せるため、CGを自分で表現したかった」という佐藤さん。CGソフトの中でも特に「(描かれた)静止画がすごくきれい」だからと、独立早々にShadeを採用。建築デザイン業務の合間を縫い、Shade習得のため関連書籍を参考に海外の優れたサンプルや自ら撮影した室内写真を正確に再現すべく、連日数時間かけて練習。実際にCG制作を始めてみると、Shade操作の覚えやすさに加え、使い込むほどにそのリアルな表現力を実感したといいます。
自らのスキル向上と合わせ、建築CGパースの制作依頼が年々増加。そこで2004年、Shadeを核にハードも含め本格的なCGパースの受注体制を整えるとともに、Webサイトを設置。そこに自身の力量をアピールできるよう100%の力を注ぎ込んで制作してきたPR用の各種CG作品を展示。これを契機に同サイトを通じ、次第に全国の様々な企業からCG制作の依頼が入るようになり、その対象分野も建築パースからインテリア、各種製品およびそのパッケージ、ゲームソフトの背景など多岐に渡ってきました。
佐藤さんが建築CGパースの制作を手掛け始めた頃、同業者は美術系の出身者が主流で、絵のタッチも手描きの延長のような傾向が多かったと振り返ります。それに対し、建築出身の氏は、光源から来る照明の効果をはじめ、建築デザインを図面に則って正確な表現に努めるなど、建築家の視点に立つアプローチを重視。その半面、用途に応じてはリアリティを抑制し、敢えて鮮やかに表現したり、絵画風なテイストを加えたりといったアレンジにも柔軟に対応。その上で「自然な感じ」の表現への一貫した思いにも触れます。
当初、CGパースは外観がメインだった中で、同氏はShadeを使うと内観を優れてきれいに仕上げられることに着目。次第に後者の比重が増してきました。元々内観CGパースを扱う業者は多くなかったのに加え、Shade導入以来、多様なマテリアルや光源、色合いなどの設定を作り溜めてきており、それらのノウハウを流用することで作業の効率化を実現。その仕上がり品質やコストパフォーマンスの良さ、ニーズに適した対応が可能なことなどから高い顧客リピート率を誇ります。
そのほか、1)サッカークラブを作るというコンセプトのゲーム向けに、チームの盛衰とともに変化する建築物などの環境(背景画)、2)メーカーのカタログ用に、建材や照明施設を効果的に見せるための室内空間、などのCGを制作。特に後者は建築の専門家が商品や部材を選ぶ基になるもので、氏はShadeの適応力の高さを示すものと位置付けます。
「簡潔に言うと、Shadeはすごく使いやすいソフトだと思うのです」。自然の部分から人間が作るものまで簡単に表現が可能で、ある程度の技術を習得するにはそれなりの時間を要するとは言え、初めて触れるCGソフトとしてはうってつけ。その際、出来の良し悪しを第三者の目で率直に指摘してもらうことが重要と、佐藤さんは説きます。
同氏はまた、特に長年のCG制作を通じ蓄積してきたレガシーを、これまでShadeのバージョンが更新しても利用し続けてこられたメリットを評価。さらに、従来は静止画のCG制作がほとんどだったのに対し、今後は動画への対応も視野に入れており、Shade3Dの新バージョンでは前述のメリットを維持しつつ、そうしたニーズに即した機能強化への期待を述べます。
執筆:池野隆
(Up&Coming '21 新年号掲載)