「もともと絵を描くのが趣味だったのです。その延長線上で3DCGもやってみたいな、と」。3DCGのバーチャルアイドル「テライユキ」などがポップになっていた2000年頃、「こういうのを私もやれるのかしら」と思ったのが斯界に足を踏み入れるきっかけ、と加茂さんは言います。ただ、あくまでも趣味であり、購入しやすい価格帯で買おうと思えるようなパッケージソフトが限られていた中、店頭でShade3Dを見つけ導入に至ります。加えて、国産の3DCGソフトであるShade3Dは日本語の情報が豊富な上、早くから多数のユーザーに浸透。しかも、ユーザー同士が情報を共有し、初心者が相談すると先達たちから適宜アドバイスを受けられるようなコミュニティが当時、既に形成。SNSなどでのやり取りを通じて必要な情報を得やすい今日とは異なり、そのことも自身がShade3Dを選んだ大きな要因の一つになった、と振り返ります。
前述のように、趣味で絵を描く中から3DCGの世界に活動を広げてきた加茂さんは当初、静止画を描くツールとしてShade3Dを使用。導入後しばらくは、「宇宙人というか、爬虫類というか」と自ら形容するイメージの表現を試行錯誤しながら、ノウハウを蓄積。後に自身のメインストリームとなる女性をモチーフとし、独自の幻想的な世界を表現するイラスト制作へと次第にウエイトを移していきます。
3Dプリンターが普及してきたのを契機に、2011年頃からは個人的な活動で作成した3Dデータを立体のフィギュアに出力して作品化する手法も展開。一方、静止画を中心に作品を発表してきた実績などから出版社の依頼を受け、2010年に初めて「Shade 11」の解説書を執筆。以来、「Shade3D Ver.16」(2017年発行、同版解説書のみsisioumaru氏と共著)に至るまで、ほぼ毎年一冊のベースでShade3Dの新版が出るごとに上梓を重ねてきました。
書籍執筆に携わるようなってShade3D利用の創作が仕事に繋がり始め、2016年頃からはペットなど動物の3DCGに基づく立体化、女性あるいは二頭身ぐらいのキャラクターといった「ちょっと緩い・可愛い系の」(加茂さん)イラストの下絵(線画)やフィギュアなどの制作需要が漸増。近年はShade3Dと他のCGソフトを併用しながら、そうしたニーズに対応していると言います。
最近の個人的な創作活動における代表的なテーマと自ら位置付けるのが、「冬虫夏草」です。これは、虫から植物が生えてくる様を擬人化。Shade3Dで作成した原型から妖精のようなフィギュアを複製し、それに髪の毛を貼ってドライフラワーで装飾。そこには、さなぎから羽化する際に新しい命が芽吹く、いわば「尸解仙(しかいせん)」のようなイメージの体現を意図。ただ、「解釈は見る人にお任せ」と加茂さんは述べます。
また、自身が好きなシリーズの一つとして、名画の立体化を挙げます。「真珠の耳飾りの少女」(フェルメール)や「鳥獣戯画」などを基にShade3Dで原型を作成し、石膏3Dプリンターなどを用いてフルカラーで出力。それぞれ一点ものとして制作しています。
そのほか、静止画では幻想的な女性を効果的に配した「吉祥天」や「狐の嫁入り」、「龍宮の遣い」などもShade3Dで作品化しています。
「使い慣れたツールというところが、すごく大きいのです」。約20年にわたって利用するShade3Dへの実感を、加茂さんはこう表現。特に、近年はケースに入れる作品が多いため、出力時のサイズをミリ単位や小数点以下の拡大縮小率で設定できる機能などを高く評価。一つのソフトでCG作成に必要なことが何でも出来るShade3Dは初学者にとっても有効な選択肢の一つ、と位置づけます。
|
|
▲Shade3Dで作成されたCGイラスト |
▲「冬虫夏草」をテーマとしたフィギュア |
|