Users Product Trial Report
ユーザ製品体験レポート

株式会社 ブルドジオテクノ
代表取締役 花田俊弘
技術士(建設部門/総合技術監理部門)

使用製品 Geo Engineer's Studio Ver.2
平面ひずみ解析、軸対称解析を対象とした、静的な地盤の応力~変形解析を行う2次元弾塑性地盤解析プログラムです。土留め掘削解析、シールドトンネル掘削解析、液状化解析など地盤に連動する多くの土木構造物の断面力・変位、および周辺地盤の変形影響解析を実施する場合に、威力を発揮する汎用FEM製品です。FEMモデルの作成はCAD的な入力方法を採用し、SXF、DWG、DXFファイルのインポートにも対応しています。ここでは、地盤分野で用いられるFEM解析を「略称:FEM地盤解析」と呼んでいます。

地盤分野におけるFEM地盤解析の活用について

株式会社 ブルドジオテクノ
代表取締役 花田俊弘(はなだ・としひろ)

福岡県出身、1982年に福岡建設専門学校卒業。 1982年土木会社創業、1990年に技術部門を立ち上げ、現在に至る。

我が国は、地形・地質・気象等の条件が厳しく、たびたび自然災害に見舞われています。また、7月には静岡県において大規模な土石流が発生し、大きな被害が出てしまいました。心よりお悔やみとお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧をお祈り申し上げます。土木に携わる者として、設計・解析などの重要性を改めて感じた次第です。

近頃のFEM地盤解析

地盤分野で用いられるFEM地盤解析は、約半世紀にわたり、地盤変形・斜面安定・液状化・浸透流・近接施工等の問題解決のツールとして、多くの複雑なモデルをシュミレーションしてきました。また、実験室内で実現象を再現することが困難な場合や膨大な費用を要する場合などには、FEM地盤解析は様々な現象などを予測し、変形・応力を可視化し、複雑な地盤などの挙動メカニズム把握などに大きな貢献をしてきました。

しかしながら、FEM地盤解析は複雑な支配方程式を用いていることや、プログラムの実施過程のほとんどがブラックボックスであるなど、不得手な方も多いと思います。FEM地盤解析に用いる地盤定数においては、数十~数百平方メートルの解析範囲に対して、土質サンプルは拳大の物が数個程度と、費用・日数等の制限もあり、なかなか数が増えないのが実情です。

とはいえ、FEM地盤解析の活躍範囲はますます広くなっており、解析プログラムのバージョンアップはもちろんのこと、入力地盤定数においての文献等も充実してきており、実務でのFEM地盤解析実施数は年々増えております。

本コーナーは、FEM地盤解析プログラム「Geo Engineer's Studio Ver.2」による、実務での利用を考慮した解析例を紹介します。

Geo Engineer's Studio Ver.2の特徴

本プログラムは、平面ひずみ解析、軸対称解析を対象とした、静的全応力法による地盤の応力~変形解析を行う2次元弾塑性地盤解析プログラムです。

主な適用範囲としては、以下の検討に使用することができます。

  • 地盤の応力・変形解析
  • 地盤と構造物の相互作用の検討
  • 水圧の変動が地盤に及ぼす影響の検討
  • トンネル掘削時地盤影響・施工検討解析
  • 土留め工の弾塑性解析
  • 堤防の地震時液状化の影響解析

また、特徴として

  • ステップを考慮した解析が可能
  • 境界条件はローラ・固定・強制変位を定義可
  • 構成要素モデルは
    ・平面ひずみ,軸対称,梁,棒,バネ要素など
  • 地盤モデルは
    ・ 弾性、非線形、MC、弾塑性、液状化モデルM
    ・ No-Tension、梁要素のM-φモデルなど
  • 考慮可能な荷重は
    ・ 集中、等分布荷重、強制変位
  • オートメッシュ機能を搭載

など、多種の解析モデルへの対応が可能です。

RC擁壁の土圧検討例

本検討例は、RC造逆T型擁壁設置に当たって、土圧層が軟弱な上に、工事後の隣接地に残土仮置による土圧増加によるRC擁壁の構造上の影響を解析(二次元)した例です。

解析は平常時を対象とし、設置段階をステップでモデル化し二次元FEM地盤解析を行いました。以下ステップで解説します。

1.工事前(説明用モデル図↓)

2.切土・掘削時(せん断ひずみコンタ図↓)

3.擁壁設置(せん断ひずみコンタ図↓)

4.隣地残土仮置き時(せん断ひずみコンタ図↓)

残土仮置きによって、竪壁脚部曲げモーメントは約72%増加し、RC擁壁は約8mm位置がずれる結果となりました。

RC擁壁の土圧検討例

モデル図

・節点数 : 2724/・ソリッド要素 : 2601/・要素 : MC、弾性

変位図(X10)

主応力図

トンネルの掘削時周辺地盤影響解析例

本検討例は、シールドトンネル掘削による周辺地盤への沈下影響を解析した例です。掘削径6mのシールド掘削時の地盤への影響を解析(二次元)した例です。

上図:鉛直方向の沈下量コンタ図↑

・ 地表面の鉛直沈下量=10mm
・ シールド掘削面天端の沈下量=16mm
という結果になり、周辺地盤への影響は少なくないと判断されました。

トンネルの掘削時周辺地盤影響解析例

モデル図

・節点数 : 5198/・ソリッド要素 : 5088/・要素 : 弾性

掘削時変位図(X100)

掘削時せん断応力図

斜面の安定検討例

本検討例は、盛土斜面の地下水位上昇時の変形・作用力解析(二次元)を行った事例です。

上図:変位図(X10倍)↑

上図:せん断ひずみコンタ図↑

盛土下側部分の土層にひずみが集中しているのが分かります。

斜面の安定検討例

モデル図

・節点数 : 3336/・ソリッド要素 : 3216/・要素 : 弾性

主応力図

RC地下水路の変形解析(応答震度法)例

本検討例は、地下設置ボックスのレベル2地震時「応答震度法」の変形及び作用力解析(二次元)を行った事例です。

上図:変位図(X10倍)↑

上図:せん断応力コンタ図↑

ボックスに作用する応力算出結果のうち、M(モーメント)図を示しています(上図↑)

RC地下水路の変形解析(応答震度法)例

モデル図

・節点数 : 2340/・ソリッド要素 : 2204/・要素 : 弾性

主応力図

河川堤防の地震時安定(液状化)検討例

既設河川堤防の耐震安定性評価にFEM地盤解析を用いた事例です。具体的には、「H19.3 河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」及び「H28.3 河川構造物の耐震性能照査指針」 国土交通省河川局治水課における基礎地盤のFEM自重変形解析(二次元)です(液状化による堤体沈下量を算出)。

上図:フロー図↑

解析では「レベル2①液状化前→②液状化時→③体積圧縮時」のステップ解析を行い、「液状化による自重変形量」を解析により求めています。

②液状化時:液状化FL分布図↑

③体積圧縮時:変位図↑

本堤防は、レベル2地震で液状化が発生する可能性が大きく、なおかつ堤体下側土層に液状化の発生が予想される。また、液状化による堤体沈下量は洪水時水位に近いため、耐震上問題がある堤防であると判断されました。

河川堤防の地震時安定(液状化)検討例

モデル図

・節点数 : 10374/・ソリッド要素 : 3351/・要素 : バイリニア弾性、剛性低下弾性、弾性

おわりに

このようにFEM地盤解析は、多種の構造への適用が可能であり、RC構造との複合構造の解析にも用いられる。また、可視化図表が豊富で、変位や応力分布もカラー図で確認出来ます。

「Geo Engineer's Studio Ver.2」は、地盤分野のFEM解析ツールとしては、活用分野も広く計算も安定しており、操作も分かりやすいソフトです。業務での諸問題解決などに活用してください。

(Up&Coming '21 秋の号掲載)



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