映画から学ぶレジリエンス 災害映画5選

2013年に国土強靭化基本法が成立し、「国土強靭化」という言葉が普及するようになりました。「強靭化」は英語では「レジリエンス」と訳され、回復力や弾性(しなやかさ)を意味する言葉です。災害の多い日本においてはレジリエンスの強化が求められており、そのためには様々な災害リスクを知ることが必要不可欠です。

今回は映画から学ぶレジリエンスとして、災害を扱った映画を取り上げます。実話を基にしたものもあり、決してフィクションとしての災害では片付けられない作品ばかりです。

水害:予期せぬ豪雨と予期せぬ場所で起きる水害
「13人の命」

2018年6月23日、タイ北部にて記録的な豪雨が発生。地元の少年サッカーチームとコーチ13人は観光地であるタルムアン洞窟を探索していた。しかし、豪雨により洞窟内の水位が上昇し、閉じ込められてしまう。救援物資すら届けられない状況が数日間も続き、地元の救急隊が駆けつけるもレスキューは困難を極めた。白羽の矢が立ったのは洞窟ダイビングの専門家であるイギリス人2人。前代未聞の救出劇が幕を開ける。

タイで起きた実際の事故を題材にしており、「バックドラフト」を手掛けた名匠ロン・ハワードが監督を努めています。ドラマチックな展開やエモーショナルな描写を省略し、質実剛健な作りになっているのが特徴です。

イギリス映画 2022年製作 上映時間:149分 配信:Amazon Prime Video
監督:ロン・ハワード 出演:ヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレルほか

風害:決してその「目」を背けるな
「イントゥ・ザ・ストーム」

突然ですが、ストームチェイサーという職業をご存知でしょうか? 竜巻やハリケーンの現象解明のために、危険を承知で現地調査する仕事です。今作はアメリカのストームチェイサーたちを中心に、直径3200メートルという規格外の竜巻に挑む物語。もちろんフィクションですが、POV(主観映像)による撮影や臨場感あふれる竜巻の表現が観る者を圧倒します。特に、気象観測のために特別に作られた頑丈な重機が、竜巻の前ではいとも簡単に吹き飛んでしまう描写が忘れられません。そして台風の「目」のような、竜巻の中心部に入るシーンも・・・。続きは本編を御覧ください。

未来の防災・減災のためにストームチェイサーの調査結果が活用されることを願ってやみません。

アメリカ映画 2014年製作 上映時間:89分 配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:スティーブン・クォーレ 出演:リチャード・アーミテージ、サラ・ウェイン・キャリーズほか

地震:原発事故を政府・電力会社の視点から描いた稀有な大作
「Fukushima 50」

3.11以降、これまで多くの東日本大震災・原発事故関連の映画が作られてきました。しかし、そのほとんどは地域住民など発電所の外側の人々の物語ばかりで、今作のように発電所内の人々を描く映画は見たことがありません。描く題材的にも登場人物の視点的にも、かなりチャレンジングな作品といえます。

福島第一原発所長を渡辺謙、同原発1・2号機当直長を佐藤浩市、内閣総理大臣役を佐野史郎が演じ、VFX(視覚効果)は「ゴジラ-1.0」を担当したスタジオ白組によって事故の様子を妥協なく再現。当時はニュース・新聞等でしか知りえなかった原発事故対応の内実を余すところなく描き、新たな3.11の真実が見える映画です。

日本映画 2020年製作
上映時間:122分 配給:松竹、KADOKAWA
監督:若松節朗 出演:佐藤浩市、渡辺謙ほか

ビル火災:138階立ての超高層ビルが炎に包まれる
「タワーリング・インフェルノ」

138階建て、高さ約550mもの超高層ビルが竣工。落成式の日に地下室の発電機が故障し、ヒューズから発生した火花によって火災が発生。煙とともに立ち昇る炎。下に降りることできず、上に登っても空を見上げるばかり。

八方塞がりの中、ビルの設計士と救急隊のチーフがメインとなり、救出に立ち向かう。

ビルの設計士をポール・ニューマン、救急隊のチーフをスティーブ・マックイーンが演じており、2大スターの共演も魅力的です。70年代には様々な「パニック映画」というジャンル映画が作られましたが、今作はその中でも最高傑作と称されています。CGのない時代にも関わらず、高さ550mという当時では信じられない超高層ビルの火災を非常にリアルかつダイナミックに描いています。娯楽性と社会性、そして火災の恐ろしさを知るうえで最もオススメしたい災害映画です。

アメリカ映画 1974年製作 上映時間:165分
配給:ワーナー・ブラザース映画=20世紀フォックス 監督:ジョン・ギラーミン
出演:スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマンほか

森林火災:火を以て火を制す衝撃の実話
「オンリー・ザ・ブレイブ」

2013年6月28日にアメリカのアリゾナ州で実際に発生した森林火災「ヤーネルヒル火災」をベースにした映画であり、山火事を描いている点でも珍しいです。市街地とは異なり近くに水源がなく、空からの消火も部分的にしか対応できない。そこで、意図的に火を付けることで防火帯の防御力を強化、火の進行方向を変える方法により被害を食い止めようとする。

20人の消防隊それぞれのドラマを描きながらも、未曾有の森林火災を迫力たっぷりに可視化しています。いよいよ逃げ場が無くなり、全方位を炎に包まれた消防隊が取った行動とは・・・。ラストは一生忘れられません。

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© 2017 No Exit Film, LLC. All Rights Reserved. Motion Picture Artwork © 2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

アメリカ映画 2017年製作 上映時間:134分 配給:ギャガ
監督:ジョセフ・コジンスキー
出演:ジョシュ・ブローリン、マイルズ・テラーほか


(Up&Coming '24 盛夏号掲載)

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