連載【11回】
「コロナうつ」にならないために
profile
関西医科大学卒業、京都大学大学院博士課程修了、医学博士。マウントシナイ医科大学留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬塾クリニック院長を経て現職。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心療内科学会上級登録医・評議員、日本心身医学会専門医、日本森田療法学会認定医。日本統合医療学会認定医・理事。日本ホメオパシー医学会専門医・専務理事。日本人初の英国Faculty of Homeopathy専門医(MFHom)。2014年度アリゾナ大学統合医療プログラムAssociate Fellow修了。『国際ホメオパシー医学事典』『女性のためのホメオパシー』訳。『妊娠力心と体の8つの習慣』監訳。『がんという病と生きる 森田療法による不安からの回復』共著など多数。
新型コロナウイルス感染によるパンデミックは、経済・社会・生活に多大なる影響を及ぼしています。働く現場では、政府の緊急事態宣言を受ける形で一斉にテレワーク(在宅勤務)が普及し、数か月に及ぶ在宅勤務生活によって、これまでにないストレスや体調不良を訴える人も少なくありません。「コロナうつ」という言葉も耳にするようになりました。一人ひとり以前とは違う生活となり、特に行動が制限されることで、イライラして落ち着かなくなる状態も出ています。ちょっとしたことで衝突が起こり、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待の悪化や増加が懸念されています。特にテレワークでは仕事と私生活のメリハリがなくなり、生活リズムが乱れ、仕事においてのコミュニケーションの取りにくさから孤立感、孤独感が増える傾向があります。
「うつ」·「うつ状態」·「うつ病」
「うつ」は日常用語で、落ち込み、気分が沈む、つまらない、やる気が起こらない心の状態を指す言葉です。日ごろどんな人でも短いスパンで経験しています。
一方「うつ状態」という言葉は、精神科疾患、身体疾患、ストレス反応のひとつの状態像(症状)として用いられます。このうつ状態が長く続き、日常生活が支障をきたし、ほとんど一日中、しかも2週間以上続く場合、疾患としての「うつ病(大うつ病)」になります。大うつ病の診断基準を図1に示しています。
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実際、うつ病になるまでにいろいろな身体症状が出現します。一番多いのは睡眠のパターンが変わってくることです。夜なかなか眠れなかったり(入眠困難)、途中で何度も起きたり(中途覚醒)します。睡眠時間が短くなり、朝早く目を覚まします(早朝覚醒)。また悪夢も見るようになり、朝が起きれない、身体が鉛のように重い感じがします。逆にいつまでも起きれない、ずっと寝ている過眠状態になることもあります。食欲もなくなり。無理して食べている、味を感じない、砂をかんでいる感じがしたりします。過食になることもあります。甘味や炭水化物ばかり食べるようになります。自分がうつ病であると気が付かないで、このような身体症状を訴え、内科を受診する人もすくなくありません。
「コロナうつ」という言葉は新型コロナウイルス感染拡大によるストレス反応としてのうつ状態に対して用いられています。このうつ状態が長期化することで、うつ病という精神障害に発展します。セルフケアで「うつ」を減らす、長引かせないことができれば「コロナうつ」を避けることができるといえます。
「コロナうつ」にならないためのセルフケア
1 携帯電話やテレビから離れる時間を作る
多すぎる情報は脳の興奮につながり、より不安が増します。正しい情報を選択して、一定の時間内で情報を収集しましょう。
2 コロナ以前の生活パターンで過ごす
免疫力を低下させないための抗炎症食や日本食を取り入れた健康的な食事や、適度の運動、良い睡眠を心がけます。規則正しい食事の時間や睡眠時間を決めるのも大切です。
3 コミュニケーションを多く持つ
孤独感、孤立感は心の苦しみとなり、「うつ病」へと陥っていきます。一人暮らしで、テレワーク、毎日ほとんど仕事以外に他人との会話もなく過ごしていませんか。他人との会話の中で、自分の気持ちに気付いて、その気持ちを表現することが少しずつできれば、「こころ」が軽くなっていきます。できる範囲で他の人とのつながりを維持することが大切です。電話やオンラインなどもうまく取り入れて家族や友人と会話するなど、「孤立状態」に陥ることを防いで下さい。
4 仕事のオンとオフを切り替える
仕事と私生活のメリハリがなくならないようにします。また仕事はスケジュールを設定し、優先順位をきめて行うようにしましょう。「仕事モード」から「オフモード」への切り替えの時間を設定してください。できれば働く空間とプライベートは分けておくことが必要です。オフモードには自分の好きなこと、楽しいことを始めてください。
こころの健康維持のセルフチェックを図2にあげています。1週間振り返ってみてチェックするのもよいでしょう。チェックがなるべく多くなるように自分の時間を持つよう心がけ、「コロナうつ」にならないようにしましょう。
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(Up&Coming '20 秋の号掲載)