済州島へ

2024 FORUM8 韓国ユーザセミナーへ出席するため、済州島へ。
済州島は、楕円形をした火山島であり、面積は香川県よりも少し小さいくらい(1,845km2)。人口は69.5万人。島の北半分は済州(チェジュ)市、南半分は西帰浦(ソギポ)市。済州島自体が韓国の最南端に位置しているので、西帰浦市は韓国最南端の都市である。

大阪から済州島までは840kmほどあるが、福岡からは360kmである。つまり、福岡からは大阪に行くよりも済州島に行く方がはるかに近い。

昨年11月に完成した、大阪・なんば広場から南海電車に乗って関西空港へ、そして済州島へ(図1,2)。

1 なんば広場

2 済州島を上空より

本態博物館

済州島に到着後すぐに訪問したのは、島の南西部にある本態(ポンテ)博物館。「本態」とは「物事の本来のありさま」という意味で、韓国の本来の文化である民芸品が数多く展示されている。設計は、安藤忠雄さん。

エントランスから、打ち放しコンクリートと水庭、韓国の伝統的な壁で構成されたアプローチを歩いて韓国の民芸品が展示されている第1ギャラリーへ(図3)。それぞれのギャラリー棟は起伏のある敷地に沿って配置されており、東シナ海や博物館の周りの自然を眺めながら建物の中に入る。

3 エントランスから本態博物館第1ギャラリーへ

民芸品の展示の仕方が興味深い。2層分の大きなコンクリート打ち放しの空間には、お膳や風呂敷がコンクリート壁一面に並べてある(図4)。

4 第1ギャラリー。韓国の伝統的なお膳の展示

お膳は、伝統的な一人用の食事テーブルであり、オンドル(床暖房)で食べ物が温まってしまわないように脚付きタイプが普及したらしい。その他、韓国伝統の枕は、側面の刺繍が見えるようにしながら、たくさん積み重ねられて展示してある。

「福」という漢字を見つけた。韓国や中国に行って、自分の名前の漢字を見つけるとなぜかうれしくなる(図5)。

5 枕の展示と「福」の発見!

屋外の現代アートや自然を眺めながら第2ギャラリーへ向かう。
済州島は、日本の西南部と同じく照葉樹林帯に含まれているからであろう、日本と同じ青いアジサイに出会えた(図6)。体育座りをしているかのようなジャウメ・プレンサのアートの前で集合写真(図7)。

6 屋外アートと青いアジサイ

7 体育座りの前で記念写真

第2ギャラリーでは、自然光を取り入れるトップライトや瞑想空間が安藤さんにより作られている(図8)。赤いアートグラスは、2023年に訪問したミラノサローネでもブラウン系のものを見かけた。同じシリーズかな(図9)。

8 第2ギャラリー。トップライトと瞑想空間

9 安藤さんのアートグラス
左:本態博物館 右:ミラノサローネ2023

第3ギャラリーでは、草間彌生さんの常設展が楽しめた(図10)。
そういえば、関西空港でチェックインの長い行列を待っている時、幕の大屋根に赤と白の水玉模様のバルーンが佇んでいた。上空を眺めている時は、済州島で草間彌生さんのアートをこれから見学するとは想像していなかったのだが、もしかすると済州島からのサインだったのかもしれない。

10 草間彌生さんの常設展

食事

博物館をあとにして、西帰浦の海岸沿いにある刺身レストランへ。
日本の食べ方とは少し異なり、刺身をコチュジャン(唐辛子味噌)に付け、サンチュやエゴマの葉に包んでからいただく。同時に野菜をたくさん頂けるのがうれしい(図11)。

11 刺身料理

翌日の昼食は、セミナー会場近くの韓国料理屋で、サラダビビンバを注文した。豚肉をトッピング。ビビンバはご飯に様々な具材を混ぜて食べる韓国の伝統料理。厨房のそばで料理の完成を待っていたロボットが、できあがった我々の食事を載せるとわざわざ遠回りしながら、運んできてくれた。

個人的に韓国料理は油断禁物、と思っている。ずっと昔、青々としたシシトウを思い切りかぶりついたら、声が出ないほど辛かった。慌てて、ビールを飲むと、辛さはさらに加速した。その時まで、赤いシシトウだけが辛いものだと思い込んでいた。今回も「超辛いかな?」とビビッていたが、全く辛くはなかった。一方で向かいに座ってチゲを注文したメンバーは、汗だくになりながら、格闘していた。

道すがら、済州島のシンボルで守り神とされる石像「トルハルバン」にも挨拶(図12)。

12 トルハルバン

いよいよセミナー

午後からのセミナーは、ロッテシティホテル済州で開催された。
FORUM8 KOREA社長・Dohoon Kim氏、次いで、フォーラムエイト 代表取締役社長・伊藤裕二氏より、ウェルカムスピーチとフォーラムエイトの歴史や近年の取組みが紹介された(図13)。

FORUM8 KOREA Dohoon Kim社長

フォーラムエイト 代表取締役社長 伊藤裕二

13 2024 FORUM8 韓国ユーザセミナー

続く1番目のセッションでは、交通分野での適用事例をテーマに行われた。
ソウル大学 Sooncheon Hwang氏より「UC-win/Roadを活用した利用者側の自律走行研究」、インテリジェント・ソリューションズ(Intelligent Solutions)CEO Yong Sung Cho氏より「アクティブスマートデリニエータシステムによるトンネルの安全性強化: 総合的な研究」と題して、それぞれのプレゼンテーションが行われた。

ソウル大学 Sooncheon Hwang氏

Intelligent Solutions CEO Yong Sung Cho氏

次いで特別講演と題して、筆者より「より良い都市環境のためのAIを伴うXRと3Dモデリング」と題してプレゼンテーションした。

大阪大学 福田知弘氏

休憩を挟んで始まった2番目のセッションでは、自動運転分野での適用事例をテーマに行われた。
浦項工科大学(POSTECH)産業工学科 Hee-Cheon You氏より「ドライバー疲労軽減のためのモーションシートシステムの効果」、韓国交通安全公団 Junbeom Lim氏より「バス停における混雑リスク管理に関する研究」と題して、それぞれのプレゼンテーションが行われた。

その後、漢陽大学校 Cheol Oh氏を座長として、現代建設 Young-gyun Kang氏、韓国科学技術院(KAIST)Seonghoe Kim氏が登壇し、ディスカッションが行われた。

浦項工科大学 Hee-Cheon You氏

ディスカッション

最後のセッションでは、フォーラムエイト 松田克巳氏より「VR・CG/F8VPS」、フォーラムエイトが新たに設立した蘇州支社である富朗巴(苏州)科技创新有限公司 マーク・アウレル・シュナベル氏より「F8NFTS(FORUM8 NFT Service)」と題したプレゼンテーションが行われた。

フォーラムエイト 執行役員 松田克己

富朗巴(苏州)科技创新有限公司 マーク・アウレル・シュナベル

全体を通じて、韓国におけるUC-win/Roadを含む交通分野と自動運転分野の大学・企業における取組み、並びに、フォーラムエイト社のVRやCG関連製品・サービス、並びに、新たな取り組みであるメタバース、デジタルツイン、NFT(ブロックチェーン上で構築できる代替不可能なトークン)の発表は、迫力を感じた次第である。

懇親会

セミナー会場近くのレストランで懇親会。済州島の名物である黒豚の焼肉をいただいた。会場は、オープンエアのテラス席。前日からこの日の午後までは曇り空であったが、テラス席に着く夕方には青空が広がった。暑くも寒くもなく、湿度も高くなく、丁度よい気候である。

FORUM8 KOREA社長・Dohoon Kim氏は最近、博士号の学位を授与された。懇親会には、指導教員も参加していたことから、途中からは、お祝い会モードとなった(図14)。

14 懇親会

親睦行事

翌日は飛行機の時間まで親睦行事として、ゴルフコンペと観光ツアーが開催された。

筆者はゴルフに参加。直前の参加記録を辿ってみると、なんと、9年前であった。さすがに「まずい!」と思い、出国前までに2度ほど練習に行き、ゴルフシューズを新調し、ロストボールを買い込んだ。

準備の過程では、まずゴルフシューズの進化に驚き(筆者が話題に乗り遅れているだけであるが)。
靴底にはゴルフ場で滑らないように、以前は金属製のスパイクが主流であったが、現在はプラスチック製のスパイクタイプと、スパイクレスのタイプが主流となっていた。

また、以前からの靴ひもタイプは健在であるが、靴ひもの代わりにワイヤーをダイヤルで回転させるタイプが増えていた。靴のデザインも普通のスポーツシューズと変わらないカジュアルなものが増えた。

ゴルフ場でカートには乗せてもらえるだろうけど、そもそも長い距離を歩くスポーツである。そして、素人は、様々な斜面を上り下りしたり、迷惑をかけないように走り回ることになることは予想できたので、頼り甲斐のありそうな靴を用意した。

韓国でのゴルフは、あらゆる点で優しさを感じた。それでもグロスは「除夜の鐘」であった(ゴーン)。日本で購入してきたロストボールの多くは、済州島でロストボールとなった。しかしながら、18ホールを上がれて何よりであり、国際チームでの懇親を深めることができた(図15)。

15 ゴルフコンペ

(Up&Coming '24 盛夏号掲載)




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