プログラムの機能と特長
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■ 港湾基準の改定概要
これまで適用には課題が多いとされてきた、地盤・土構造物に対しても、性能規定化や照査方法に関して精力的な研究が行われ、土構造物に対する性能規定化に対する港湾基準も改定されました。
2007年4月:「港湾の施設の技術上の基準を定める省令」改定
2007年4月:「港湾の施設の技術上の基準の細目を定める告示」改定
2007年9月末:「港湾の施設の技術上の基準(上・下)」刊行
性能目標として、設計条件とそのときの信頼性を明示して設計する性能設計が、国際的な流れとなってきています。改訂の基本的主旨は、近年の経済、社会活動のグローバル化、ボーダレス化が進む中で、国際規格への対応であり、「港湾の施設の技術上の基準」を全面的に見直し、仕様規定型から性能規定型へ移行するとにあります。これにより、自由な発想に基づく設計法の導入等、多様な創意工夫が可能となり、コスト縮減の取組みの進展等を期待されます。
下図は、地盤工学会の「既存の包括的設計コード(いわゆる地盤コード21)」に記載された性能設計の階層性を示した概念図に対して、港湾基準の位置づけを追加記入したものです。
▲性能設計の階層性を示した概念図
■ 「二建の提案式」による見かけの震度の算出
右式で計算される見かけの震度の算出式を適用できます。 |
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■ 鋼矢板の低減係数の自動決定
荷重種類は「集中荷重」と「分布荷重」の2種類に対応し、また、1ケースに限らず、複数の任意水平荷重を追加することができます。この任意水平荷重は、作用力として主働側圧強度に考慮されます。その他の作用力同様、荷重図の確認、一覧表での出力で計算過程の確認が可能です。 |
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▲任意荷重画面 |
■ 新港湾基準(平成30年)の考え方
平成30年の港湾基準では、「荷重抵抗係数アプローチによる部分係数法」を採用することになりました。照査式は下式の通りです。
ここに、
Sd:応答値の設計用値 Rd:限界値の設計用値
γi:構造物係数
m:調整係数(従来の安全率法や許容応力度における許容安全率に対応する数値。平成19年版では構造解析係数で処理されていたものに相当する)
γsj:作用効果jの特性値Sjkに乗じる部分係数
γRj:抵抗(耐力)jの特性値Rjkに乗じる部分係数
1例として、矢板壁の応力度を照査する際には表-1に示す部分係数を使用します。
照査対象 |
抵抗項に乗じる
部分係数γR |
荷重項に乗じる
部分係数γS |
調整係数
m |
永続状態 |
0.84 |
1.18 |
1.00 |
レベル1変動状態 |
1.00 |
1.00 |
1.20 |
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▲表1 荷重抵抗係数アプローチによる矢板壁の応力度照査用部分係数 |
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▲荷重抵抗係数アプローチによる部分係数 |
■ 道示IVにおける横方向地盤反力係数の算出
これまでの平均N値に加え、換算載荷幅BHを入力していただくだけで、自動で算出が可能です。
■ 検討ケース毎の水位設定
永続状態(常時)、変動状態(地震時)、変動状態(引き波時)におきまして、それぞれの計算時に異なる水位を設定できます。変動状態(牽引時)は、永続状態(常時)の条件で牽引した場合の計算となりますので、永続状態(常時)と共通の入力となります。 |
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普通矢板式係船岸
● 検討ケースと設計部材
検討ケースは、永続状態(常時)、変動状態(レベル1地震動)、変動状態(牽引時)の3ケースで、牽引時につきましては、「タイ材」と「腹起し材」の設計計算のみの扱いになります。この扱いは、港湾基準の性能照査に準じています。
部材 |
永続状態(常時) |
変動状態(地震時) |
変動状態(牽引時) |
前面矢板 |
○ |
○ |
× |
タイ材 |
○ |
○ |
○ |
腹起し |
○ |
○ |
○ |
控え工 |
○ |
○ |
× |
※ 動水圧:変動状態(レベル1地震動)において、動水圧を考慮することができます。
▲動水圧分布図
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● 前面矢板壁の主な照査項目と対応状況
フリーアースサポート法(仮想ばり法)、たわみ曲線法、ロウの方法により、前面矢板壁の検討が出来ます。断面照査につきましては、基本的に、港湾基準は限界状態設計法、漁港基準は許容応力度法の扱いになります。任意水平荷重の載荷が可能です。
照査項目 |
計算方法 |
港湾 |
漁港 |
根入れ長照査 |
フリーアースサポート法 |
○ |
○ |
フィックストアースサポート法(たわみ曲線法) |
○ |
○ |
ロウの方法(弾性ばり解析法) |
○ |
× |
断面力計算法 |
仮想ばり法 |
○ |
○ |
フィックストアースサポート法(たわみ曲線法) |
○ |
○ |
ロウの方法(弾性ばり解析法) |
○ |
× |
矢板断面照査 |
降伏応力度照査/許容応力度照査 |
○ |
○ |
タイ材照査 |
引張降伏応力度照査/許容応力度照査 |
○ |
○ |
腹起し照査 |
曲げ降伏応力度/許容応力度照査 |
○ |
○ |
※仮想ばり法
単純(張出し)ばりの上側支点は、タイ材取付け位置とします。下側支点は、港湾基準は、常に海底面ですが、漁港基準では、砂質土の場合は海底面(構造水深)、粘性土の場合は、主働土圧強度(残留水圧含む)と受働土圧強度が釣り合う点とします。なお、本プログラムでは、検討ケース毎に任意の支点位置を設定できるように配慮しています。
砂質土の場合
▲仮想ばり法(砂質土)
粘性土地盤の場合
▲仮想ばり法(粘性土)
※たわみ曲線法
たわみ曲線法とは、矢板上部のタイロッド設置点(ここでは、上部構造との結合点)および矢板の先端で単純支持され、受働側圧および主働側圧を受けるはりの先端でのたわみ角が0となる点で矢板が安定していると考える設計法です。
本プログラムでは下図に示すような処理の流れで解析を行います。構造骨組面内解析は当社Frame解析部を使用しております。図-Aが解析モデル図、図-Bが変位結果図で、これより、矢板壁先端の回転変位がゼロに近い状態であることがわかります。
▲たわみ曲線法解析フローチャート |
▲解析モデル図(図-A) |
▲解析モデル図(図-B) |
※ロウの方法
弾性ばり解析法は矢板壁の根入れ地盤に弾性的な地盤反力係数を設定し、矢板壁に弾性床上の梁の理論式を適用する方法です。ロウの方法は弾性ばり解析法であり、下図に示すように矢板根入れ部分の受働土圧を古典土圧論によらず、矢板の横方法の変位(y)および海底面からの深さ(x)に比例する地盤反力とします。
高橋、菊池らは、ロウの方法に基づいて、さらに矢板壁根入れ部背後の主働土圧と前面の静止土圧を考慮して、実際の矢板壁の挙動特性とよく対応するように修正しています。ロウの方法により、根入れ長、断面力、変位、反力が得られます。
● 控え工の主な照査項目と対応状況
控え直杭、並びに、控え矢板は、港湾基準では港研方式、漁港基準ではチャンの方法で検討します。
組杭は軸方向支持力のみで抵抗するという考え方で支持力検討、断面照査を行います。
照査項目 |
計算方法 |
港湾 |
漁港 |
直杭/矢板 |
港研方式(港湾基準) |
○ |
× |
Changの式(漁港基準) |
× |
○ |
設置距離の計算 |
○ |
○ |
突出杭の扱い |
○ |
○ |
曲げ降伏応力度/許容応力度照査 |
○ |
○ |
矢板 |
長杭とみなし得る場合 |
○ |
○ |
長杭とみなし得ない場合 |
○ |
○ |
組杭 |
各杭の軸方向支持力のみで抵抗すると考える方法 |
○ |
○ |
杭の曲げ抵抗、杭の軸直角方向支持力も考える方法 |
× |
× |
支持力の検討(打撃工法による打ち込み杭) |
○ |
○ |
軸方向降伏応力度照査/軸方向許容応力度照査 |
○ |
○ |
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自立矢板式係船岸
● 検討ケースと設計部材
検討ケースは、永続状態(常時)、変動状態(レベル1地震動)、変動状態(牽引時)の3ケースです。
部材 |
永続状態(常時) |
変動状態(地震時) |
変動状態(牽引時) |
前面矢板 |
○ |
○ |
○ |
自立矢板壁は、港湾基準では港研方式、漁港基準ではチャンの方法で検討します。
災害復旧工事の設計要領は漁港基準と同様にチャンの式を用います。
照査項目 |
計算方法 |
港湾 |
漁港 |
災害 |
根入れ長/断面力 |
港研方式(港湾基準) |
○ |
× |
× |
Changの式(漁港基準) |
× |
○ |
○ |
矢板断面照査 |
降伏応力度照査/許容応力度照査 |
○ |
○ |
○ |
鋼管矢板の2次応力 |
○ |
× |
× |
● 自立矢板式係船岸の考え方 自立矢板式係船岸は、下図に示すように、主働土圧+残留水圧強度が受働土圧強度と一致する点を仮想海底面として、仮想海底面より上の水平合力(H)を用いて、港湾基準では「港研方式」、漁港基準では「チャンの式」で、矢板壁の根入れ長、断面力、変位を計算するという設計方法になります。
自立矢板式係船岸の部分係数の扱いについては、港湾基準では明記されておりません。本製品では、普通矢板式係船岸の前面矢板壁と同様な扱いができるように、必要と考えられる部分係数を基準値テーブルに用意し、初期値として1.00を与え、場合によっては、設計者のご判断で普通矢板式係船岸に準じることもできるように切替ボタンを用意しています。
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