Q5−1. |
浸透流FEMにおける、定常解析と非定常解析とは何か? |
A5−1. |
地下水面がフラットで動水勾配が無い場合には静水圧状態にあり、土中水の挙動は時間変化の無い状態にあります。
また、地下水面において動水勾配がある場合においても、山側からの供給量と谷側での拡散とがバランスした平衡状態においては、土中水の挙動は経時変化を呈しません。
この状態が定常状態であり、これをシミュレートすることを定常解析といいます。
また、河川水位のように天候や上流ダムの運用により水位変化を伴い、土中水が平衡状態にない状態が非定常状態であり、これをシミュレートすることを非定常解析といいます。 |
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Q5−2. |
災害対策等で山岳部へ盛土を設け(盛土が堤防のように機能すると想定)、そこにゲリラ豪雨のような集中的な降雨があった場合に盛土背面にどの程度水が溜まるかを計算することは可能か? |
A5−2. |
解析対象により、VGFlowの他に雨水流出解析プログラム xpswmmが別途必要となる場合がございます。各製品にて解析対象とできる現象について、ご説明します。
- VGFlow
有効降雨に対する地下水流出現象のシミュレーションを対象としており、降雨に対する表面流出現象は取り扱いません。
支配方程式 : Richards式(二次元解析、三次元解析)
解析対象 : “土中水”の飽和/不飽和浸透現象
数値解法 : FEM(有限要素法)
- xpswmm
実降雨に対する表面流出現象のシミュレーションを対象としており、地下水流出については、Horton式やGreenAmpt式による一次元の初期損失としての計算及び浸透施設等を対象とした一次元の飽和/不飽和浸透での扱いになり、二次元あるいは三次元の浸透流解析は取り扱いません。
支配方程式 : SantVenant式(一次元解析、二次元解析、1D-2D連動解析)
解析対象 : “表面水”の表面流出現象,
数値解法 : FDM(差分法)
- ご検討のシミュレートされたい現象
降雨に対する盛土背面にどれくらい湛水するかのシミュレーションが目的である場合には、現象が“表面水”となりますため、xpswmmが必要となります。
一方、VGFlowでは、与条件としてxpswmmによる“表面水”の解析結果となる外水位を与えた場合における盛土内及び基礎の“土中水”の地下水流出現象をシミュレートすることが可能です。そのため、ゲリラ豪雨に対する盛土及び基礎の浸透破壊やパイピング破壊等の地下水流況の解析が目的である場合には、VGFlowが必要となります。
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Q5−3. |
建造物の施工により、変化した地下水位を確認することは可能か? |
A5−3. |
本プログラムは、Richards式からなる飽和-不飽和浸透流支配方程式を有限要素法により、数値解法するものであり、適切な浸透特性や境界条件を与えることにより、土中水の挙動をシミュレートできますので、その用途としては、お問合せのような、建造物の施工に伴う地下水影響解析を行えます。
ステージ解析機能はございませんが、施工前後における解析モデルを作成し、施工前の現況における地下水位の実測をベースに、適切な浸透特性等を設定し、施工後のモデルに適用することにより、その施工に伴う地下水影響解析が行えます。施工後のモデルに対しては、例えば、施工中の土留め壁などは、[Assing]-[Seepage
Property]にてCutoffにより、浸透が不連続となるような二重節点としてモデル化できます。 |
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Q5−4. |
自由水面(河川、海岸などの水部)は処理することが可能か? |
A5−4. |
プログラム解析対象としては浸透流の支配方程式(Richards式)に従う土中水のみであり、お問合せにありますような地盤面より上の表面水(土中水でなく、河川や海岸や貯水等)での乱流現象の支配方程式(例えばNavier-Stokes式等)には対応しておりません。
そのため、モデルとして設定する有限要素としては、地盤部分のみであり、お問合せにありますような地盤面より上の表面水につきましては、自由水面に応じた圧力を堤防などの境界に与えて計算するということになります。
なお、非定常解析時の初期条件の設定に際しては、お問合せにあります表面水〜土中の自由水面までを一連の水面形として与える形式としております。 |
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Q5−5. |
「中小河川における堤防点検・対策の手引き(案)」(http://www.jice.or.jp/teibou/index.html)に準拠した照査は可能か? |
A5−5. |
本製品「VGFlow」は非定常飽和・不飽和浸透流解析を行うプログラムであり、同手引きに挙げられられているコード(GW-USAF、PC-UNISSF、2D-FLOW、SAUSE、SOIL2F等)と同様、基本的には同手引きに準じた解析は可能です。
本製品「VGFlow」における同手引きへの対応の可否につきまして、その概要を以下に記します。これらの対応状況を勘案の上、ご検討下さい。
- メッシュ分割 → △
本プログラムプレ部ではオートメッシュ分割を原則としておりますため、同手引きにある「要素分割の事例」にあるような格子状のメッシュ分割には基本的には対応しておりません。(ここで、基本的に非対応とは、操作上は困難ではありますが、製品ヘルプのQ&A1-3にある操作手順により、格子状のメッシュ分割を行うことも可能です。)
個人的な見解とはなりますが、同手引きににある「要素分割の事例」にあるような格子状のメッシュ分割に関しては、解析種別によっては有意味ではありますが、浸透流解析に関しては手動でメッシュ分割を行っていた当時からの慣習的なものであり、FEMの計算精度上からの根拠によるものではないと思われますが、設計事例を踏襲するというのも一つの設計思想でありますため、設計者ご自身にてご判断下さい。
- 不飽和浸透特性 → ○
不飽和浸透特性(ψ-θ曲線、Kr-θ曲線)につきましては、同手引きにあります『実務的に割り切った』図4.3.6及び図4.3.7に示すデータを添付しておりますので、そちらを入力の手間なくご使用頂けます。
また、不飽和浸透特性については、van Genuchten式に対して同定したパラメータの入力により、van Genuchten式での解析も可能です。
- 降雨波形作成のための流出解析 → △
本プログラムは非定常飽和・不飽和浸透流解析プログラムであり、流量ハイドログラフの計算には対応しておりません。降雨波形の直接入力となります。
- 河川水位(外水位)波形の設定 → △
本プログラムは非定常飽和・不飽和浸透流解析プログラムであり、同手引きにあります河川水位(外水位)波形の設定を自動で行う機能はございません。設計者ご自身にて波形を作成し、作成した河川水位(外水位)波形の直接入力となります。
- すべり破壊(浸透破壊)の検討 → △
本製品「VGFlow」は浸透流のみを対象としておりますため、浸透流解析を反映させたすべり破壊については別製品「斜面の安定計算」が必要となります。
- パイピング破壊(浸透破壊)の検討 → △
同手引きに規定される局所動水勾配の算定機能はございません。
局所動水勾配の算定につきましては、全水頭及び圧力水頭の節点出力値等を用いて、設計者様ご自身での手計算となります。
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